2012 Fiscal Year Annual Research Report
石狩湾沿岸の砂堤列の地形と堆積物から過去1000年間の周期的な気候変動を読み取る
Project/Area Number |
24916004
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Research Institution | いしかり砂丘の風資料館 |
Principal Investigator |
志賀 健司 いしかり砂丘の風資料館, 学芸員
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 花畔砂堤列 / 珪藻遺骸群集 / 放射性炭素年代 |
Research Abstract |
目的:石狩湾沿岸の海岸線に平行な波状地形、花畔砂堤列は、過去6000年間に徐々に陸化していく過程で形成された(松下1979)。現在は海岸林内だけに20列ほどの連続した砂堤列が残されている。繰り返す砂堤の形成には周期的な気候変動が関係している可能性があるため、本研究では、海岸林内の砂堤列の数や間隔を計測すること、堆積物から古環境を推定すること、を目的とした。 方法:海岸林内を踏査し、春季に出現する融雪プール(雪解け水の水たまり)の分布を詳細に調べた。融雪プールは砂堤間低地に形成されるため、波状地形を反映している。また、砂堤間低地の2ヶ所で柱状堆積物を採取し、堆積物中の珪藻遺骸を観察し、植物片の放射性炭素年代を測定した。 また、同様の砂堤列地形が見られる北見市常呂町の海岸部において、比較観察を実施した。 成果:海岸林内で融雪プールもしくは明瞭な谷地形を精査したところ、海岸線と直交方向の長さ450m内に21の低地が見られた。平均すると砂堤・低地は21m間隔で繰り返していることが明らかになった。海岸線から約400m内陸の地点で採取した堆積物は、上部14cmは泥炭質砂、それより下部は中粒砂で構成されており、堆積環境は海浜~砂丘環境から湿地的環境へ移行したことがわかった。上部の泥炭質砂中では珪藻遺骸群集は淡水生種~陸生種で構成されており、今回の研究では、群集には明瞭な周期的変遷は確認できなかった。下部の砂層からは珪藻殻は検出されなかった。地表下6.5cmの木片の炭素年代は230年前(±30年)であった。平均堆積速度は28cm/1000年となり、この地点が砂丘・海浜的環境から林内の湿地的環境へと移行したのは約500年前であったことが判明した。
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