2015 Fiscal Year Annual Research Report
脳内に核酸医薬を送達する高分子ミセルの創製と脳神経系難病の標的治療への展開
Project/Area Number |
25000006
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
片岡 一則 東京大学, 大学院工学系研究科, 教授 (00130245)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横田 隆徳 東京医科歯科大学, 医歯学総合研究科, 教授 (90231688)
位高 啓史 東京大学, 大学院医学系研究科, 特任准教授 (60292926)
津本 浩平 東京大学, 大学院工学系研究科, 教授 (90271866)
|
Project Period (FY) |
2013 – 2017
|
Keywords | 高分子ミセル / 薬物送達システム / 遺伝子治療 / 脳一血液関門 / アルツハイマー病 / siRNA / メッセンジャーRNA / グルコーストランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、強固な生体バリア(血液脳関門 : BBB)を克服して脳神経系に核酸医薬を送達する高分子ミセルを構築し、アルツハイマー病などの脳神経系難治疾患の分子治療における有効性を実証することである。本年度は、これまでに確立したBBBを効率的に通過する直径30 nmのグルコース結合高分子ミセル(Gluc/m)をさらにブラッシュアップし、BBB通過用のグルコースリガンドに加え、2ndリガンドとして脳実質内での挙動を制御する新規リガンド分子を搭載したデュアルリガンド搭載高分子ミセルを構築し、脳への集積性を評価したところ、Gluc/mと同様に投与量の6%が脳へ集積することを確認した。pDNAを封入した高分子ミセルについては、PEG12,000からなるグルコース担持MAME-PMsからグリア境界膜を通過可能なPEG2,000からなるグルコース担持MAME-PMsに切替え、その開発を進めている。またsiRNAについては、脳実質のアルツハイマー病発症の原因物質として考えられるアミロイドβ(Aβ)産生に関わるβ-セクレターゼ1(BACE1)の発現を抑制するsiBACE1を封入したGluc/mを調製することで、全身投与を介して内因性マウスBACE1を約30%ノックダウンすることができた。一方、mRNAを用いたアルツハイマー病治療の実現に向けて、Aβの中でも特に神経毒性が高いことが知られているAβオリゴマーに対して選択的に結合するscFvを単離し治療に用いた。アルツハイマー病モデルマウスに対して、scFv mRNA内包高分子ミセルを脳室内へ投与したところ、脳内のAβ量を有意に低下させることに成功した。以上、各検討項目について当初の研究計画調書に沿って進捗しているとともに、実験動物における分子レベルでの効果に関しては一部計画を前倒しする形で成果が得られている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
高分子の分子設計からin vitroおよびin vivoでの機能評価、さらには疾患動物モデルにおける治療効果の確認へと展開される本研究計画においては、分子設計・機能評価・展開研究の各グループ間の密接な連携が必須である。そこで、緊密な連携体制に基づいて研究を進めた結果、下記の特筆すべき成果を得ることに成功した。 1) BBB通過用のグルコースリガンド(lstリガンド)に加えて、脳実質内での挙動を制御する2ndリガンドを搭載したデュアルリガンド搭載高分子ミセルに関しても、Gluc/mと同様に脳へ効率的に集積することが明らかとなった。 2) 機能性トリブロック共重合体を用いてsiRNA封入Gluc/mを設計したところ、全身投与を介してsiRNAが脳のニューロンへと効率よく集積し、有意な遺伝子発現抑制効果を示すことが明らかになった。 3) Aβオリゴマーに対して選択的に結合するscFvを単離し、アルツハイマー病モデルマウスに対してscFv mRNA内包高分子ミセルを脳室内へ投与したところ、脳内のAβ量を有意に低下させることに成功した。 以上のように、3年目の段階で核酸医薬(siRNA)を全身投与で脳へ効率的に送達し、分子レベルで機能するシステムを創出することに成功している。
|
Strategy for Future Research Activity |
「11. 現在までの達成度」に記述した様に、本研究は当初の計画以上に進展していると自己評価される。したがって、今後の研究については、当初の計画に前倒しで推進して行く予定である。なお、研究を遂行する上で生じた問題点については、以下に示す様な対応を行う事によって解決の見通しを得ており、今後の研究計画は予定通りの進捗が見込まれる。 1) これまでに、BBB通過用のグルコースと脳実質内での挙動を制御する2ndリガンド分子を搭載したデュアルリガンド搭載高分子ミセルを構築することに成功した。今後は、脳実質内で2ndリガンドが機能するかどうかを脳の培養切片を用いて評価する。特に高い選択性を示したシステムに対しては、全身投与による特定細胞の認識に関してin vivo共焦点顕微鏡を用いて評価する。 2) pDNAについては、これまでに得られた知見を活かし、PEG鎖の分子量が2,000のグルコース結合高分子ミセルを調製し、グリア境界膜を越えているか、さらに脳内のどこまで到達しているのかを評価するとともに、遺伝子発現するかどうかをin vivo共焦点顕微鏡観察や免疫染色した組織切片観察を通じて検討する。 3) siRNAについては、前年度までに全身投与によって脳のニューロンまで送達させ、さらに標的とする遺伝子発現を抑制する効果が得られている。そこで今後は、アルツハイマー病モデルマウス(APP/PS1マウス)および水迷路等を用いて行動試験を行い、記憶や学習といった「能力」への寄与を検証する。 4) 広範囲な標的遺伝子に対応するために、2本鎖のsiRNAのみならず、1本鎖のアンチセンス核酸を搭載したグルコース結合型高分子ミセルも構築し、機能評価を行う。 5) mRNAについては、mRNA担持内核とPEG相との間に酵素の侵入を阻害する防御層を構築することで、防御層のないミセルと比較して血清中で優位な酵素耐性を得ることに成功した。今後は、この防御層に対して更なる改善を加え、血流中での安定性評価等を行い、全身投与で脳内へmRNAを送達可能なシステムを開発する。
|
Research Products
(78 results)
-
-
-
-
-
-
[Journal Article] Enhanced target recognition of nanoparticles by cocktail PEGylation with chains of varying lengths.2016
Author(s)
T. Ishii, K. Miyata, Y. Anraku, M. Naito, Y. Yi, T. Jinbo, S. Takae, Y. Fukusato, M. Hori, K. Osada, K. Kataoka
-
Journal Title
Chem. Commun.
Volume: 52
Pages: 1517-1519
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
[Journal Article] DNA/RNA heteroduplex oligonucleotide for highly efficient gene silencing.2015
Author(s)
K. Nishina, W. Piao, K. Y-Tanaka, Y. Sujino, T. Nishina, T. Yamamoto, K. Nitta, K. Yoshioka, H. Kuwahara, H. Yasuhara, T. Baba, F. Ono, K. Miyata, K. Miyake, P. P. Seth, A. Low, M. Yoshida, C. F. Bennett, K. Kataoka, H. Mizusawa, S. Obika, T. Yokota
-
Journal Title
Nat. Commun.
Volume: 6
Pages: 7969
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Development of enzyme-loaded polyion complex vesicles for in vivo nanoreactor2015
Author(s)
Y. Anraku, M. Kamiya, S. Tanaka, T. Nomoto, K. Toh, Y. Matsumoto, S. Fukushima, D. Sueyoshi, A. Kishimura, M. Kano, Y. Urano, N. Nishiyama, K. Kataoka
Organizer
THE INTERNATIONAL CHEMICAL CONGRESS OF PACIFIC BASIN SOCIETIES (PACIFICHEM2015)
Place of Presentation
Hawaii Convention Center (Hawaii, USA)
Year and Date
2015-12-15
Int'l Joint Research
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] 1分子siRNA封入ユニットポリイオンコンプレックスの精密構造設計2015
Author(s)
宮田完二郎, 林光太朗, 茶谷洋行, 渡邉秀美代, 藤加珠子, 福島重人, W. Lan, H. -J. Kim, 武元宏泰, 西山伸宏, 長田健介, 片岡一則
Organizer
第64回高分子討論会
Place of Presentation
東北大学川内キャンパス(宮城県仙台市)
Year and Date
2015-09-17
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-