2014 Fiscal Year Annual Research Report
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25000012
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北村 隆行 京都大学, 工学研究科, 教授 (20169882)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澄川 貴志 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80403989)
平方 寛之 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (40362454)
高橋 可昌 関西大学, 工学部, 准教授 (20611122)
嶋田 隆広 京都大学, 工学研究科, 助教 (20534259)
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Project Period (FY) |
2013-04-26 – 2018-03-31
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Keywords | single digitナノ / ひずみ集中場 / 破壊力学 / 負荷実験 / その場観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
H26年度の研究実績は、以下のように纏めることができる。1. 表面損傷層のないナノひずみ集中場をトップダウン型手法によって作製する手法を開発した。対象材料であるシリコン(Si)単結晶ナノ構造体に集束イオンビーム(Focused Ion Beam : FIB)加工で予めナノサイズの切り欠きを形成し、ある特定の条件下での高真空・高温環境中熱処理を実施することで、FIB加工によって導入されたガリウムイオンが消失し、アモルファスとなっていた表面損傷層が単結晶に復元することを明らかにした。実際に力学負荷用試験片を作製して熱処理を施し、表面損傷層のないsingle digitナノスケールのひずみ集中場を実現できることを電子線回折像を用いて確認した。2. 専用の微小負荷装置を用いて、トップダウン型手法によって作製したナノ構造体に対して負荷実験を実施した。single digitナノひずみ場に適用した場合に必要と考えられる実験諸条件(負荷様式や観察方法)を抽出し、次年度以降実施予定の実験に必要な負荷装置の精密な調整を行った。3. 次年度作製予定の分子線エピタキシー(Molecular Beam Epitaxy : MBE)を利用したボトムアップ型ナノ構造体作製装置に関する基本仕様の決定を行い、設計を実施した。4. 原子系解析について検討を行い、ナノ構造体の変形集中場解析のための諸条件を抽出した。さらに、ナノ構造体の変形集中場における理論的予測を実施した。これらの研究内容は国外からも高い評価を受け、北村(研究代表者)が破壊に関して世界的に権威のある国際学会“20th European Conference on Fracture”から基調講演(Plenary Talk)を依頼された。また、澄川(研究分担者)が国際誌「Engineering Fracture Mechanics」における特集号「Nanoscale Fracture_ECF20」のゲストエディターに選出され、嶋田(研究分担者)が若手科学者賞(科学技術分野の文部科学大臣表彰)を受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H26年度の計画は、1. “ナノスケール加工装置の作製・開発”、2. “実試験のための微小負荷装置の調整”、3. “ボトムアップ型ナノ構造体作製装置の基本仕様検討および設計”および4. “原子レベルシミュレーションのための準備”である。申請時の予定に沿って、ナノレベルの先端曲率を有するプローブを走査型電子顕微鏡中に具備したナノスケール加工装置を開発した。当該装置を用いてナノ構造体へのひずみ集中部の形成を試みたが、加工は可能なものの、表面には依然損傷層が残存することが明らかとなった。そこで、加工した構造体に対して高真空・高温熱処理を施すことで、表面損傷層を消失させることに成功した。また、微小負荷装置について、二軸傾斜機構を設けたことにより負荷中の原子レベル観察に若干の影響を及ぼすことが明らかとなったため、適正な重心となるよう負荷装置の改造(使用部材の変更)・調整を行うことで対応した。次年度作製予定のボトムアップ型ナノ構造体作製装置について基本仕様を決定し、設計を行った。さらに、single digitナノスケール場を有する分子動力学解析モデルを作製し、適正な境界条件およびひずみ場に対する理論予測を行った。 研究過程において幾つかの問題が発生したが、対策を実施し、研究計画を達成した。研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に沿って研究を実施する予定である。H27年度の計画は、“制御されたsingle digitナノひずみ場を有するナノ試験体の創製”、“その場観察微小負荷試験”、および、“原子レベル解析”を実行する。研究を遂行する上で問題点が生じた場合には、適宜対策および代替案を模索し、当初の研究目的の達成を目指す。具体的には以下の内容を実施する。 1. MBE法に基づくナノ構造体作製装置を作製し、無加工層ナノ要素作製条件を抽出する。また、平成26年度に開発した手法を用い、制御したsingle digitひずみ集中場を有する無損傷層ナノ構造体の作製を行う。2. 無損傷ナノ構造体試験片を抽出し、微小負荷装置を用いてTEM内で負荷試験を実施する。申請者の研究グループがこれまでに開発したナノスケールの引張り試験手法をさらに深化させて、ナノ構造体試験片への負荷を実現する。3. 平成25年度(初年度)に開発したナノひずみ場観察技術を駆使し、上記ナノ構造体中のsingle digitナノひずみ集中部の原子位置の変位および破壊に至るまでのプロセスを詳細に観察する。得られた実験結果に基づいてナノひずみ場に起因した破壊に特有の支配力学因子の解明を行う。4. 原子レベル解析に基づいて破壊基準に関する検討を実施する。5. ナノひずみ場における一般化された力学的支配法則を導き出し、single digitナノスケールの破壊・強度の学理の構築について検討し、中間評価を行う。6. ナノ構造体作製装置を用いて、次年度(平成28年度)の研究対象である異材界面を有するナノ構造体を作製する。
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