2016 Fiscal Year Annual Research Report
トランスポゾン侵略から生殖細胞ゲノムをまもるpiRNA動作原理の統合的理解
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25221101
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塩見 美喜子 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (20322745)
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Project Period (FY) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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Keywords | PIWI / piRNA / トランスポゾン / RNAサイレンシング / ショウジョウバエ |
Outline of Annual Research Achievements |
Piwiと特異的に結合するタンパク質をMS解析によって同定したところリンカーヒストンH1が見出された。H1を欠失した条件下では、トランスポゾンは脱抑制される。H1モノクローナル抗体を作成し、生化学的及び生物情報学的解析を進めたところ、H1が無い条件下ではH3K9トリメチルは標的遺伝子上に存在するもののトランスポゾンは脱抑制されること、また、HP1aの有無によってH1の標的遺伝子上の密度に変化は見られないことから、H3K9トリメチルとHP1aの要求性とH1の要求性とはお互いに依存しないといえる。H1が無い条件下では、標的遺伝子のクロマチンが緩むことも実験的に証明した。卵巣由来体細胞OSCにおいてはpiRNA増幅は起こらない。昨年度、我々は、CRISPR/Cas9システムによって転写抑制因子l(3)mbtをOSCでノックアウトすることによりpiRNA増幅機構を獲得した細胞株を樹立した。l(3)mbtのショウジョウバエ変異体では、脳腫瘍が形成され生殖特異的な遺伝子が異所的に発現する。この生殖特異的な遺伝子にはpiRNA増幅に関わる因子が複数含まれていたため、OSCでl(3)mbtをノックアウしたところ、piRNA増幅機構が起こっていること、またpiRNA増幅の場として知られるNuage様の顆粒体形成が確認出来たため、本年度はこの新規細胞株を用いて、特にNuage様顆粒体の形成に関して解析を進め、VasaのRNA結合がその鍵因子であると判明した。カイコ卵巣由来生殖細胞BmN4からSiwi(カイコのPIWIタンパク質)を免疫沈降によって単離精製することに成功したため、この構造解析を進めた。世界で初めてPIWIタンパク質の構造をpiRISCとして決定することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで全長PIWIタンパク質のX線構造解析はなされていなかった。これは、全長PIWIタンパク質のリコンビナントは不安定で、単離精製することが非常に困難であるからである。我々は、カイコ卵巣由来生殖細胞BmN4においてSiwi(カイコのPIWIタンパク質)の発現量が高いことに着目した。Siwiに対するモノクローナル抗体は既に作成済みであったため、これを用いて免疫沈降を行なったところ、効率よくSiwiを単離精製することができた。続いてこの精製物をthermolysinを用いて限定分解したところ、SiwiのN末端のほんの一部は沈降物として担体に結合したままであるが、それ以外の大半の部分は浮遊画分に得られることがわかった。また、このSiwiペプチドにはpiRNAが結合した状態であることも明らかになった。この分画を用いて結晶の作成を進めたところ、それに成功したのみならず、X線によって構造を決定することに成功した。世界で初めてPIWIタンパク質の構造をpiRISCとして決定することができた。これによってAGOタンパク質との構造の比較も可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
piRNA生合成に関する研究としては、まず、Ybタンパク質に焦点を当てて解析を進める。Ybタンパク質が無いOSC細胞内ではpiRNAの生合成は著しく阻害される。Ybタンパク質は大きくN末と中腹のDEAD-box Helicaseドメイン、C末のTudorドメインに分かれる。それぞれの機能ドメインの変異体を作成し、その解析を進めることによってYbのpiRNA生合成機構への機能的寄与を理解する。Ybタンパク質が欠失した条件下ではpiRNA生合成の場であるYb bodyは形成されないため、Ybタンパク質はYb body形成の中核因子であるといえるが、その必須条件は未だ不明である。よってYb body形成に必要な必須条件を解析する。同時に、Yb bodyの構成因子の同定を進める。これまでは免疫沈降に頼った手法によって本実験を進めてきたが、今年度はOSCにおいてAPEX-Ybを発現させ、近傍に位置するタンパク質にビオチンを付加する手法を追加で用いる予定である。最近我々は、OSCの核に局在するpiRNAによるトランスポゾンの転写抑制に必須な因子の同定に成功した。この因子の生化学的解析を進めることによって、piRNA機構における機能分担を理解する。Eggless抗体を作成して細胞分画を用いてwestern解析を進めたところ、核には翻訳後修飾を受けたEgglessのみが局在することが判明した。Egglessの機能発現にこの修飾がどの様に関わるか解析する。その他は、研究計画に沿って研究を遂行する。
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Research Products
(20 results)
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[Journal Article] Inheritance of a Nuclear PIWI from Pluripotent Stem Cells by Somatic Descendants Ensures Differentiation by Silencing Transposons in Planarian2016
Author(s)
Shibata N, Kashima M, Ishiko T, Nishimura O, Rouhana L, Misaki K, Yonemura S, Saito K, Siomi H, Siomi MC, Agata K
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Journal Title
Dev. Cell
Volume: 9
Pages: 226-237
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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