2014 Fiscal Year Annual Research Report
歴史写真に基づく1860~1930年代の日独関係史の再構築
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25240053
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
馬場 章 東京大学, 大学院情報学環, 教授 (10208704)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
研谷 紀夫 関西大学, 総合情報学部, 准教授 (00466830)
北田 暁大 東京大学, 大学院情報学環, 准教授 (10313066)
添野 勉 国立民族学博物館, 文化資源研究センター, 研究員 (20436512)
吉見 俊哉 東京大学, 大学院情報学環, 教授 (40201040)
五百籏頭 薫 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (40282537)
佐藤 健二 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (50162425)
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Project Period (FY) |
2013-10-21 – 2016-03-31
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Keywords | 歴史写真 / 歴史情報 / 国際関係 / 画像史料 / デジタルアーカイブ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、とくに大日本帝国憲法制定期に焦点を当てて、前年度に引き続き、1)写真資料収集、2)収集資料の整理・分類・分析、を進めるとともに、新たに、3)収集資料の編集とデジタルアーカイブ化、4)研究会の開催を行った。 1)写真資料の収集に関しては、前年度同様、ボン大学(ドイツ)の研究協力者とともに、同大学が所蔵するフリードリヒ・トラウツの画像史料の調査を行い、可能な資料は現地で撮影し、現地での撮影が不可能な資料は借用して、日本国内で撮影を行った。また、研究代表者と研究分担者が分担して、ベルリン、ハンブルク、バンベルク、コブレンツなどドイツ国内の公文書館における調査も推進した。その結果、ドイツ国内に所在する資料約3,900点の写真を取集した。また、国内(京都・東京・大阪・仙台・高野山など)においても調査を進め、約2,300点の写真を収集した。 2)収集資料は、写真の撮影日時・場所・被写体・撮影者などを同定して、写真資料にタイトルをつけて整理した。また、写真資料ではないが、1836年に沖縄の子ども達がドイツの子ども達に当てて書いた友好の絵葉書(642枚)をトラウツ・コレクションの中から新たに発見したので、これらの整理とデジタル化を行った。 以上の継続作業に加えて、3)写真資料の編集とデジタルアーカイブ化を行った。写真資料の編集は、ヘルムート・グラウ氏の写真集の編集(原稿校正)を完了した。また、デジタル化し、メタデータが付与されたデータを、順次サーバに格納した。そのバックアップとしてDVDにも同様のデータを格納している。ただし、データベースは研究期間終了後に公開することとし、研究の進捗状況を、随時ホームページで報告することにしている。 4)上記1)~3)までの作業に膨大な時間を要したために、当初の隔月開催の計画通りに研究会を開催することはできかったが、全5回の研究会を開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度には幕末維新期、平成26年度には大日本帝国憲法制定期に焦点を当てて、写真資料の調査、収集、分析を行うという当初の計画は、ほぼ計画通り進行している。しかしながら、事前調査の時点で確認した資料の点数に比較して、実際に調査を開始すると、予想以上に資料の点数が多く、その後の整理作業がどうしても遅れがちである。また、写真資料に関連する文献資料の範囲をめぐって、研究代表者や研究分担者の間で意見が相違することも少なくない。写真資料の調査方法は、本課題の重要な研究テーマのひとつであるので、研究の準備期間に、十分な事前調査と研究者間の意見の調整を行っておけば、以上のような混乱は無かったと考えられる。この混乱は、次年度の当初に十分に検討して解消したい。 しかしながら、国内外で収集した写真資料は、すべて未公開の新発見資料であり、日独交流史、なかんずく、文化外交や庶民交流の新たな側面を解明するために、極めて重要かつ貴重な資料である。また、研究会を開催することで、新発見資料に基づく新たな知見を研究者間で共有しており、次年度の本課題のまとめに向けての準備は、順調に進んでいる。また、国内外の資料所蔵機関や資料所蔵者、ならびに研究協力機関や研究協力者との関係が良好に築かれてきており、研究の上で問題は生じていない。むしろ、関係者にも協力していただくことによって、より深い研究の可能性が期待される。新発見資料の裏付けに関しては、次年度の計画に組み込むことが可能であり、本課題の新規性や先進性が担保されることと思われる。 また、懸案であった画像データベースやホームページの開設も平成26年度中に完了しており、初年度の研究の遅れを回復することができた。 以上の理由により、解決すべき課題が全く存在しないわけではないが、その解決の見通しは立っており、本課題は、全体として、おおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、ほぼ当初の計画通りに、1930年代の日独交流史に関する写真資料の調査、撮影、整理、分析を行い、さらに、日本写真史に関する上野彦馬が経営した上野撮影局の海外支店、すなわち、上海・香港・ウラジオストックの調査を行う。そして、本課題のまとめを行う。 本課題の調査で明確になったことは、公文書館など、すでに写真資料が整理されている機関の調査は比較的容易であるが、個人所蔵の写真資料の場合、年代や撮影場所がさまざまで、資料の整理に多大な時間を要することである。この問題は、年度当初に研究者間で検討し、合理的な方法を考案して、効率的に進めたい。当初の見込みよりも写真資料の点数が増えている問題については、資料整理のための要員を増員して、研究期間内に終了させるように対応する。研究分担者の分担内容が順調に進めば、研究期間内に本課題を完了させられると見込まれるので、研究者間の連絡を密接化する工夫をする。とくに、最終年度は、研究のとりまとめのために、分担研究者だけでなく、国内外の研究協力者との連絡も密に行う必要がある。 当初の期待されていなかった新資料の発見に対しては、その明確な裏付けを取る必要があり、計画のうちに組み込んで調査を行い、本課題の新規性や斬新性を担保する。 それらとともに、本課題に対しては社会的な関心も高いことから、研究成果の社会への還元にも注力し、公開の研究会(シンポジウム)を開催するほか、写真のデータベース公開の準備を行う。それとともに、当初の計画には無かった写真集出版準備を進め、さらに、国立民俗学博物館(千葉県佐倉市)の特別展に協力して、収集した資料やデジタルアーカイブ化した資料を一般に広く公開する。 本課題の推進と共に、新たに浮かび上がって来た学術的課題は少なくないので、それらをまとめて公開し、当該分野における次の段階の研究の展開と発展に寄与することにも配慮する。
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Remarks |
上記URLは第1頁であり、第2頁のhttp://chi.iii.u-tokyo.ac.jp/?page_id=4389へリンクしている。
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Research Products
(4 results)