2016 Fiscal Year Annual Research Report
越境と変容―グローバル化時代におけるスラヴ・ユーラシア研究の超域的枠組みを求めて
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25243002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
沼野 充義 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (40180690)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三谷 惠子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (10229726)
松里 公孝 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (20240640)
柳原 孝敦 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (20287840)
青島 陽子 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (20451388)
小松 久男 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (30138622)
乗松 亨平 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (40588711)
井上 まどか 清泉女子大学, 文学部, 准教授 (70468619)
亀田 真澄 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (70726679)
下斗米 伸夫 法政大学, 法学部, 教授 (80112986)
坂庭 淳史 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (80329044)
池田 嘉郎 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (80449420)
湯浅 剛 広島市立大学, 広島平和研究所, 教授 (80758748)
安達 祐子 上智大学, 外国語学部, 准教授 (90449083)
加藤 有子 名古屋外国語大学, 外国語学部, 准教授 (90583170)
楯岡 求美 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (60324894)
阿部 賢一 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (90376814)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スラヴ研究 / ユーラシア研究 / 中欧・東欧研究 / スラヴ文学 / ウクライナ危機 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、主要な課題を「対立と和解の超域的展開」として活動を進めた。スラヴ・ユーラシア世界では冷戦後、ソ連という強固な体制が動揺・解体したことにより潜在的な民族間対立が表面化したが、ソ連解体から20年以上を経過した今、ウクライナ問題、シリア内戦、東アジアの不安定、移民・難民問題などの以前にもまして困難な問題にこの地域は直面するようになっている。こういった事態を踏まえて、日本の視点を生かして、歴史・文化・宗教などの側面を重視した形でこの地域の総合的研究の新たな形を探った。そのために、まず中央アジア・コーカサスを含む旧ソ連圏の演劇の専門家、中東欧の文学・芸術の専門家を新たに研究分担者に加え、スラヴ・ユーラシア世界の特に芸術・表象文化の観点からの研究体制を強化した。。 そして、分担者間の専門を超えた対話・連携をより緊密にし、国際的に著名な海外からの研究者との討論・意見交換を通じて、スラヴ・ユーラシア地域研究の現代的なパラダイムについての包括的なビジョンの創出を試みた。本研究プロジェクトの趣旨に沿った講演、セミナー、研究会などに参加した海外からのゲストには、ツヴィカ・セルペル(イスラエル)、エヴゲニー・ヴォドラスキン(ロシア)、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ(ベラルーシ)、ミリアム・トリン(イスラエル)、アレクサンドル・メシチェリャコフ(ロシア)、デリア・ウングレアヌ(ルーマニア)がいる。 また2017年2月27日~3月1日には東京大学人文社会系研究科の主催により「新・日本学」連続講義のためにデイヴィッド・ダムロッシュ教授をハーバード大学から招聘し、世界文学に関する特別セミナーが行われたが、その企画運営面で全面的に協力した。これは日本を含めてスラヴ・ユーラシア地域を広い視野から見ていこうとする本研究プロジェクトを補完するものと位置付けられるためである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各分担研究者の個別の研究を活性化するとともに、海外からの様々なゲスト研究者・作家などを招いての研究会やセミナーを行い、充実した国際交流の機会を作り、そういった機会を通じて、分担研究者どうしの有機的な連携を強めることができたという点では、今年度は十分な成果があったと自己評価できる。ノーベル文学賞受賞者であるベラルーシのアレクシエーヴィチを初めとして、ロシア、イスラエル、ルーマニア、アメリカなどの研究者・文化人と交流・意見交換し、現代世界における文化的な対立の現状と和解の可能性についての調査は進捗した。 また本研究プロジェクトが全面的に協力して開催されたICCEES第9回世界大会(2015年8月、幕張)の成果の総括とその上に立った研究の新たな展開については、大会の規模があまりに大きかったため、その成果を十分に消化できていないが、そのための基礎は固められた。 全体として見れば、総合テーマとして掲げた「対立と和解の超域的展開」についての、個別のケーススタディは蓄積されたが、全体像を打ち出すには至っていないという憾みがある。これは次年度の最後の課題になるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
2017度は、5年間にわたるこの研究プロジェクトの最後の年に当たるため、この研究計画のキーワードであった「超域性」について、「地域を超える」という意味と、「ディシプリンを超える」という意味の両方の観点から総合的に考察を加えながら、総括と研究成果の発信を行いたいと考えている。特に2016年度に不十分であった、個別分担研究者の間の有機的な連携に基づいた全体的ビジョンの構築に、以下のような具体的な活動を通じて努力する。 第1に、5年間の研究の総まとめとして、海外からのゲストも招いて国際シンポジウムを行い、成果を社会に還元する。シンポジウムの論集もできるだけ早く、欧文および日本語訳の形で出版できるよう努力する。この国際シンポジウム準備・開催のためには、日本のロシア・東欧関係学会を糾合する協議会JCREES(日本ロシア東欧研究連絡協議会)と連携する。 第2に、2017年度にはICCEES幕張世界大会の成果をもとにした学術論集(全5巻程度の予定)の編集作業がJCREESを中心に本格化する見通しなので、われわれの科研プロジェクトとしてもそれに全面的に協力し、研究成果の社会発信をこの論集を通じて行うことを目指す。
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Research Products
(43 results)