2013 Fiscal Year Annual Research Report
社会的脆弱性/レジリエンスの比較ジェンダー分析-生活保障システム論の新展開―
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25243009
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大沢 真理 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (50143524)
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Project Period (FY) |
2013-10-21 – 2016-03-31
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Keywords | ジェンダー / 社会的脆弱性/レジリエンス / 生活保障システム / 社会的排除 / 災害リスク削減 |
Research Abstract |
2013年度は交付決定後ただちに、①福井県における社会的排除の大規模実態調査、②東日本大震災の被災地をフィールドとする社会的脆弱性の実地調査を企画・推進し、研究支援者を雇用した。研究支援業務は、①・②および③庶務全般について必要である。 ①においては、福井県庁と共同で県民アンケート調査を企画・実施するべく、研究協力者はじめとする調査研究メンバーを招集し(13年11月25日)、調査票を設計した(12月27日の部分会合で第一次案を確定)。調査対象者16000人のサンプリング・調査票の印刷・配布・回収を、業者に委託し、14年2月27日から調査票を配布して、3月下旬までに6300票近くを回収した。今回の対象者は、18歳以上65歳未満の人口から抽出し、通常は高齢者の回答率が高いことから、回収数が少なくなることが危ぶまれたが、調査票に工夫を凝らした結果、多数の回答を得ることができた。 ②においては、岩手県・宮城県・福島県にフィールドをもつ調査研究メンバーを招集し(13年12月20日)、研究支援者が複数回の予備踏査を行ったうえで、大船渡・陸前高田・盛岡におけるヒアリングと視察(14年2月15-17日)、その報告会(2月26日)を行った。 アジア工科大学院大学の「ジェンダーと開発」専攻より、ジェンダーと災害及び脆弱性に関する講演の依頼があり、14年1月10日に行った。また、国際交流基金カナダ事務所および在カナダ日本大使館、オタワ大学の協力を得て、オタワにて災害・復興とジェンダーおよび多様性に関する学術集会を共同主催し、日本から研究代表者のほか2名の有識者が参加して報告した(2月6日)。その成果を日本社会に還元するべく、国際交流基金および在日本カナダ大使館の協力を得て、公開講演会を共同主催し、被災地から2名の有識者に登壇を依頼した(3月14日)。これは上記②の調査研究の成果でもある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究代表者および研究協力者を含む調査研究依頼相手との会合を、2013年11月25日と12月27日に実施し、福井県における社会的排除の大規模実態調査に際して18歳以上65歳未満の16000人を無作為抽出することを決定し、調査票第一次案を計画よりも早く確定した。既往調査では高齢者からの回答が人口構成に照らして相当に多くなる傾向があり、高齢者を対象に含めない調査では回収率が低くなることが危惧された。福井県庁の了解を得て県との共同調査としたこと、進行を速め、質問設定の精査から調査票のレイアウトに至るまで工夫を凝らす時間を確保できた結果として、期待以上の回答を得ることができた。 また東日本大震災の被災地をフィールドとする社会的脆弱性の実地調査についても、ただちに調査グループを編成し、12月20日に初会合を実施した。研究支援者による複数回の実地踏査等に基づき、実地調査の計画を迅速に立て、14年2月15日に岩手県庁および復興庁男女共同参画班と共催で、大船渡でコロキアムとワークショップを実施した。16日には現地の協力者を得て陸前高田を視察し、子育て支援NPOにヒアリングを行った。17日には、大船渡市、復興庁岩手復興局、岩手県庁復興局でヒアリングを行い資料の提供を得た。これらの活動で得られた成果は、3月14日にカナダ大使館で共催した公開講演会に反映された。 グループ外のメンバーを含むコロキアムは、アジア工科大学院大学での招待講演、オタワでの学術集会、東京のカナダ大使館における公開講演会という形で実現し、計画以上の発信ができたと考える。国内外の研究協力者との会合、およびグループ外のメンバーを含むコロキアム開催について、協議を重ね、6月中旬にトリノおよびデュースブルグで開催する計画、7月に日本学術会議にて災害脆弱性の軽減に関するフォーラムを開催する計画を早期に固めた。
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Strategy for Future Research Activity |
福井県における社会的排除に関するアンケート調査について、回収されたデータの入力および集計(一次集計のすべてと一部のクロス集計)を、委託しておこなう(7月末の納品を想定)。 2013年度中に合意した計画に基づき、2014年6月にトリノとデュースブルグにて部分会合を行い、グループ外のメンバーも含むコロキアムを開催する。 東日本大震災の被災地をフィールドとする社会的脆弱性の実地調査においては、まず5月に福島にて研究会と実地調査を行う計画が固まっている。この調査グループから複数人を登壇者として、7月に日本学術会議にて災害脆弱性の軽減に関するフォーラムを開催し、グループ外のメンバーから情報およびコメントを得ることとしている。以後、隔月の研究会、被災地でのヒアリングと視察などを進めていく。 8月以降、福井県における社会的排除に関する調査の結果分析を進め、県民に対する報告会を県庁と共同で企画する。また埼玉県におけるアンケート調査を企画し、年度内に実施して調査票を回収することを目指す。 SASE、AAS、日本の社会政策学会などに分科会を申請するなど、研究成果の発信とフィードバックの確保について、計画を進める。定量分析とフィールドワークの支援を得るため、2ないし3名の研究支援者を各50日程度雇用する。
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Research Products
(7 results)