2013 Fiscal Year Annual Research Report
中近世キリスト教世界の多元性とグローバル・ヒストリーへの視角
Project/Area Number |
25244035
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
甚野 尚志 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (90162825)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大稔 哲也 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (10261687)
平山 篤子 帝塚山大学, 経済学部, 教授 (20199102)
踊 共二 武蔵大学, 人文学部, 教授 (20201999)
三浦 清美 電気通信大学, 情報理工学部, 准教授 (20272750)
印出 忠夫 聖心女子大学, 文学部, 教授 (30232721)
青柳 かおり 大分大学, 教育福祉科学部, 講師 (30634696)
太田 敬子 北海道大学, 文学研究科, 教授 (40221824)
根占 献一 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 教授 (50208287)
関 哲行 流通経済大学, 社会学部, 教授 (60206620)
網野 徹哉 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (60212578)
大月 康弘 一橋大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (70223873)
疇谷 憲洋 大分県立芸術文化短期大学, その他部局等, 准教授 (80310944)
皆川 卓 山梨大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (90456492)
堀越 宏一 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (20255194)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 中世ヨーロッパ / 近世ヨーロッパ / 宗派化 / ローマ・カトリック / ギリシア正教 / 中南米布教 / アジア布教 / 公会議 |
Research Abstract |
2013年度はメンバーを報告者とする研究会を4回開催したのに加え、11月30日にはイタリアのブルーノ・ケスラー財団イタリア・ドイツ歴史研究所に所属するフェルナンダ・アルフィエーリ氏を基調報告者として招聘し国際シンポジウムを開催した。シンポジウムの統一テーマは「トレント公会議と近世キリスト教世界」であり、同公会議前後において、教会が良心や罪、さらにはそれに関係する諸問題をどのような形で再定義し、必要に応じて統制を進めていったのかについてアルフィエーリ氏の専門とするイタリアとヨーロッパ諸地域の状況を比較し、さらにグローバルな世界史の次元における同議論の応用可能性について検討した。同シンポジウムでは科研の研究分担者2名が報告者として壇に立ったほか、4名が報告後にコメントを行い、さらにはシンポジウムの結果を研究会での個別報告という形にフィードバックしている。 シンポジウム、および諸研究会における議論を通じて2013年度について浮かび上がってきた問題点は、国内におけるヨーロッパ近世宗教史の従来の研究動向が、「宗派化」論に代表されるドイツ史、ドイツ国内における動向の影響下に枠組みを規定されており、グローバル的な視野はもとより、ヨーロッパ国内における比較可能性についても十分な注意がはらわれてこなかったという事実である。アルフィエーリ氏が専門とするイタリアは、カトリックに属しているのに加え、検閲や異端審問に代表される世俗権力と教会上の権威との関係も他地域とは異なっていた。これを受け、本国と植民地で両者の関係が異なるスペイン、ポルトガルなどを事例に、植民地における「ポスト・トレント」の宗教社会状況を、植民地個々の特殊性と同時に、世界各地に展開するイエズス会やフランシスコ会の審問制度をはじめとする上からのネットワークとの相互作用のせめぎあいの中で新たにとらえなおす必要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年度の最大の企画であった「トレント公会議と近世キリスト教世界」のシンポジウムも無事開催できた。そしてこのシンポジウムでは、中世から近世にかけてヨーロッパで進行したカトリック教会の体制構築と宗教改革後の「宗派化」が、中南米やアジア世界に大きな影響を与えたことについて、一定の見通しを得ることができた。またこのシンポジウムをきっかけにして、2014年10月には、トレントでイタリア人を中心とする研究者たちと国際シンポジウムを開催することになり、2013年度に討議した研究課題を深める機会をもつことが可能になったため。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度も3、4回の科研研究会を開催し、中近世キリスト教世界の多元性について各地域を比較しつつ解明する予定である。最初の研究会は5月に開催し、前回の科研共同研究の成果である論文集『中近世ヨーロッパの宗教と政治』(ミネルヴァ書房、2014年3月)の合評会を行い、中近世ヨーロッパにおける宗教と政治の関係の分析がどのような形で他地域のキリスト教と政治との関係の分析に応用できるか見通しを得る。その上で7月にはアジア地域へのキリスト教布教の問題を中心テーマとする研究会を行い、10月には我々のメンバーのうち5人が、トレントのドイツ・イタリア研究所で開催するイタリアと日本との国際シンポジウムで報告を行い、中近世キリスト教世界の多元性を分析する視角について意見交換を行う。今年度は、さらに2回の研究会を行って、中近世のヨーロッパ世界とその周辺世界との宗教を軸にした関係のあり方について考察したい。
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Research Products
(11 results)