2014 Fiscal Year Annual Research Report
対立する国家間の経済的相互依存:緊密なシステムのヘテロ化による諸影響
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25245027
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田所 昌幸 慶應義塾大学, 法学部, 教授 (10197395)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 乾 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 教授 (00281775)
小川 裕子 東海大学, 政治経済学部, 准教授 (00546111)
岑 智偉 京都産業大学, 経済学部, 教授 (30340433)
瀬島 誠 大阪国際大学, グローバルビジネス学部, 教授 (60258093)
遊喜 一洋 京都大学, 経済学研究科, 准教授 (70362572)
橋本 敬 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 教授 (90313709)
鈴木 一敏 広島大学, 社会科学研究科, 准教授 (90550963)
藤本 茂 一般財団法人平和・安全保障研究所, 研究部, 研究員 (80319425)
山本 和也 一般財団法人平和・安全保障研究所, 研究部, 研究員 (20334237)
八槇 博史 東京電機大学, 情報環境学部, 准教授 (10322166)
多湖 淳 神戸大学, 法学研究科, 准教授 (80457035)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 相互依存 / グローバリゼーション / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、新たに4名の分担者を加えて、課題内の各領域についての本格的な検討を開始した。年度前半は各自が担当する領域の検討を深め、その後全3回(9月、12月、1月)のプロジェクト会議を実施し、協力関係にある研究者も交えて幅広い検討を実施した。本年度は、中国によるアジアインフラ投資銀行(AIIB)提唱と欧州先進国のそれへの参加に象徴される国際政治経済秩序の変化の胎動がみられたが、この新たなヘテロ化現象も踏まえて、以下の活動を行った。 事例分析:12月会合に、中国と世界秩序との関係分析を専門とする英国の研究者と日本銀行元理事を招聘し、ヘテロ化に関する視点を再構築した。これにより、新たなヘテロ化現象を研究対象に取り込む準備もできた。これらの成果も踏まえて、代表者および事例分析担当の分担者が専門とする米国、中国、EU、発展途上国に関して、論文刊行・研究報告を行った。 数量分析:9月会合において、本プロジェクトにおける計量データの意義についてのコンセンサスを形成した。それを踏まえて、数量分析担当の分担者が、前年度までのデータおよび新たに収集したサーベイ実験データをもとに、論文刊行・研究報告を行った。 シミュレーション分析:異なる政治体制を持つ国家間の経済相互依存をモデル化し、そのパイロットランを実施した。その成果は、1月の会合において検討され、その後、別記した研究報告で公表された。また、情報ネットワークの影響をモデル化したシミュレーション分析、さらにシミュレーション分析一般の意義を論じた成果も公刊した。 理論研究:事例・数量・シミュレーション分析の結果を踏まえる必要があるため、上記3分析よりもやや遅れる傾向にあるが、別記のように、国際政治経済学における理論研究の意味の変化など、メタ理論的成果を提出した。また、ゲーム理論モデルも完成に近づきつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示した通り、当初計画した研究成果はおおむね達成できている。個別には以下のようにまとめられる。 本研究は、異なる方法を用いる研究者間の学際研究であるが、定期的に全体ミーティングを重ねることによって、研究の方向性についてのコンセンサスを維持し、各研究者の役割は明確となっており、順次研究成果が提出されている。 具体的には、事例分析においては、EUに関しては遠藤、中国に関しては田所・岑、発展途上国に関しては遊喜・小川、アメリカに関しては田所を中心とする検討を行い、成果発表を行った。数量分析においては、多湖・岑を中心に成果を掲出した。シミュレーション分析については、瀬島・藤本・山本を中心に論文・成果報告を行った。さらに理論研究については、山本が論文を公刊するとともに、まだ公表には至っていないが、モデル自体の作成も順調に進んでいる。 また、2014年度の国際政治経済秩序は、中国によるアジアインフラ投資銀行(AIIB)提唱などによって、歴史的変化の様相を呈したが、直ちに全体会合を開催し、ヘテロ化に関する視点を再構築するなど、急速な変化にも機敏に対応を行うことができた。これを踏まえ、今後は申請時には予想されていなかったAIIBも検討対象に加える予定である。(532/800字)
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Strategy for Future Research Activity |
多様で異質な主体が混在する相互依存システムは、その安定を脅かす従来とは異なる固有のリスクを内包することが明らかになってきた。この点をふまえて、最終年度となる平成27年度は、事例分析、数量分析、シミュレーション分析をまとめ上げるとともに、主体の異質性と新たなリスクの構造解明に向けた理論の拡張に重点的に取り組む。 ・事例分析:中国主導のアジアインフラ投資銀行をめぐるダイナミクスなど新たな動きにも注目しつつ、数量分析やシミュレーション分析の知見を生かして、最終的なまとめを行う。その上で、これらの動きによって日本が直面する新しい種類のリスクおよび日本が取るべきリスクヘッジの施策などについて、検討を行う。 ・数量分析:分析結果が現実世界でどのような意味を持つのか、事例分析と対比させてそのインプリケーションが検討される。 ・シミュレーション分析:分析結果を現実の文脈で吟味して、結果の現実的妥当性を検討する。 ・理論研究:以上を踏まえ、異質性の概念化と操作化に取り組み、新しい固有のリスクを内包する国際状況に拡張適用した相互依存の理論を打ち出す。 ・成果の社会還元:最終年度として、その成果をとりまとめるとともに、さらなる研究進展の方向性を示す。これらを論文の投稿やレポジトリでの公開、学術研究集会の開催などを通じて、社会への還元に尽くす。
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