2015 Fiscal Year Annual Research Report
二〇世紀東アジアをめぐる人の移動と社会統合に関する総合的研究
Project/Area Number |
25245060
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
蘭 信三 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (30159503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 貴子 近畿大学, 文芸学部, 准教授 (00411653)
松浦 雄介 熊本大学, 文学部, 教授 (10363516)
飯島 真里子 上智大学, 外国語学部, 准教授 (10453614)
李 洪章 神戸学院大学, 現代社会学部, 講師 (20733760)
柏崎 千佳子 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (30338222)
小川 玲子 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 准教授 (30432884)
外村 大 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (40277801)
田中 里奈 フェリス女学院大学, 文学部, 准教授 (40532031)
西脇 靖洋 山口県立大学, 国際文化学部, 准教授 (40644977)
高畑 幸 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (50382007)
原山 浩介 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (50413894)
福本 拓 宮崎産業経営大学, 法学部, 准教授 (50456810)
田村 将人 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, その他部局等, その他 (60414140)
坂部 晶子 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (60433372)
西澤 泰彦 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (80242915)
川喜田 敦子 中央大学, 文学部, 教授 (80396837)
Urano Edson 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 准教授 (80514512)
野入 直美 琉球大学, 法文学部, 准教授 (90264465)
八尾 祥平 早稲田大学, 政治経済学術院, その他 (90630731)
松田 ヒロ子 神戸学院大学, 現代社会学部, 准教授 (90708489)
水谷 智 同志社大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90411074)
中山 大将 京都大学, 地域研究統合情報センター, 助教 (00582834)
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Project Period (FY) |
2013-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 人の国際移動 / 帝国化と人の移動 / 引揚げ・追放 / 近代満洲の成立 / 七〇年代の市民運動 / ポストコロニアリズム / グローバリズム / 国際比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は研究課題を遂行するために6つの下位研究チームがそれぞれの具体的な研究課題を設定して研究活動を行っているが、本年は以下のような研究の進展が見られた。 (a)飯田調査班は、長野県飯田市における多文化共生の実態を「グローカルシティ飯田の挑戦」という中間報告書の作成途上である。2016年夏までには刊行予定である。その序論論文を福本・蘭(2015)が執筆した。また、蘭(2016)は飯田市における中国帰国者の生活実態と中国との越境するネットワークを過去40年の変化から明らかにした。 (b)環太平洋班は、スイスのチューリッヒ大学のダズンベリー教授主催のアジアの帝国主義比較研究国際ワークショップに5名が参加し蘭他が報告した。「大日本帝国」をめぐる植民地主義を西欧帝国との比較する視点を整理し、今後の研究枠組みを整理した。 (c)引揚げの国際比較班は集中的なワークショップによって、朝鮮戦争、ベトナム戦争、アンゴラ戦争を視野に入れることによって、第二次世界大戦直後の日独仏の引揚げ・追放・送還の比較研究というこれまでの本研究班の研究を豊かにする視点が共有された。 (d)満洲班は、これまでの満洲研究を乗り越えるために、『満洲の成立』を出発点とし、そこでの生態学的な視点、テクノロジーの視点を導入し、人の移動のみでなくテクノロジーや知の移動・循環が社会変動にもたらされるものを研究するという視点を共通枠組みとすることを数度のワークショップでの討論で獲得した。 (e)長い七〇年代班と沖縄班は、数度の研究会・ワークショップから、60年代70年代のベ平連に代表される社会運動が帝国崩壊前後の人の移動と定着に伴って生じた諸問題が社会問題として取り上げられ、市民による社会運動として展開されていく潮流を、その担い手からの聞き取りや市民活動の展開を追うことで共通認識を得、次の展開を見通せた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究プロジェクトは、総体としては順調に進んでいるが、予想以上に展開している部分と、予定よりも作業がやや遅れがちの部分がある。具体的には以下のようである。たとえば、(b)環太平洋班は、スイスで国際ワークショップや米国でのワークショップに招待され、国際的ネットワーク構築は予想をはるかに超えて展開している。そこでの研究もアジアと北米、アジアと西欧との比較研究、しかも人の移動だけでなく、モノ・知識・システムの移動に関する研究が企画されており、その展開はグローバルなものとなっている。また、(c)引揚げの国際比較班は、当初の予定をはるかに超えたものとなっており、多様な帝国の崩壊と引揚げに関する国際比較研究を可能としている。 (d)満洲班の研究は、近代満洲の成立と人、もの、知識、システムの移動の関連性を追っており、人の移動という単一の尺度からより多元的な尺度による研究へと展開し、今後の中国との共同研究を視野に入れて、現地フィールドワークを具体化しつつある。それに、(e)長い七〇年代班も帝国崩壊と人の移動後の定住化がどのように進められたかという視点のみならず、戦後の市民運動(なかでもベ平連)を契機として、地域社会における身近な社会問題を運動の対象としていったことが、本研究会の企画や関連研究会から明らかとなった。たとえば、在日朝鮮人と地域社会の協同や革新自治体における取組がこれらと密接な関連をもっていたことが明らかとなった。 (a)他方で、飯田調査は中間報告書の完成が予定よりずれ込んでおり、確実に研究成果は提出しているものの予定されたスケジュール通りには進んでいない。 以上のように、総体として見るとおおむね順調に進んでいると言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
本年は本研究課題の4年目を迎え、研究の熟成を目指して集中していきたい。すなわち、本研究を構成する6つの下位研究チームを5つに編成しなおし、以下のように具体的なテーマを決めて研究を推進していく。 (a)飯田調査班は、『グローカルシティ飯田の挑戦』という中間報告書を今夏に刊行する。その中間報告書をもとに多文化共生に関する研究論文を書き加えた一般図書を準備し、翌2017年に刊行予定である。 (b)環太平洋班は、この夏に国際ワークショップを開催し、研究の大枠と参加メンバーを確定して最終年度の国際シンポジウムに向けて準備していく。また、同様に(c)引揚げの国際比較班はこの6月に開催する国際ワークショップによって比較研究のための枠組みをしっかりと構築し、それを踏まえて来年度の国際ワークショップに向けて準備していく。2017年度のこの二つの課題を包括した国際シンポジウム開催に向けて企画準備する。 (d)満洲班は、これまでの満洲研究を乗り越えるために、『満洲の成立』を出発点とし、そこでの生態学的な視点、テクノロジーの視点を導入し、人の移動のみでなくテクノロジーや知の移動・循環が社会変動にもたらされるものを研究するという視点を共通枠組みとすることを数度のワークショップでの討論で獲得した。 (e)長い七〇年代班と沖縄班は研究が密接に関連することから合併し、60年代70年代のベ平連に代表される社会運動の展開が本土と沖縄とアジアや世界とどのようにネットワークが形成されていき、帝国崩壊前後の人の移動、戦後の東アジアにおける米軍基地を媒介とする人の移動や社会運動の波及がどのように展開され、日本社会における市民運動が欧米の社会運動とどのように関連し、アジアの社会運動とどのように関連していたかを究明していくために、当時の社会運動の担い手への連続的な聞き取りや定期的な研究会・ワークショップを開催予定である。
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