2015 Fiscal Year Annual Research Report
結婚・離婚・再婚の動向と日本社会の変容に関する包括的研究
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25245061
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Research Institution | National Institute of Population and Social Security Research |
Principal Investigator |
岩澤 美帆 国立社会保障・人口問題研究所, 人口動向研究部, 第1室長 (50415832)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 隆一 国立社会保障・人口問題研究所, 副所長 (30415814)
石井 太 国立社会保障・人口問題研究所, 人口動向研究部, 部長 (50415816)
釜野 さおり 国立社会保障・人口問題研究所, 人口動向研究部, 第2室長 (20270415)
別府 志海 国立社会保障・人口問題研究所, 情報調査分析部, 第2室長 (10649510)
福田 節也 国立社会保障・人口問題研究所, 企画部, 主任研究官 (90409433)
是川 夕 国立社会保障・人口問題研究所, 人口動向研究部, 主任研究官 (40603626)
余田 翔平 国立社会保障・人口問題研究所, 人口動向研究部, 研究員 (70749150)
玉置 えみ 学習院大学, 国際社会科学部, 准教授 (10706568)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 結婚 / 離婚 / 再婚 / 人口統計 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、結婚や離婚行動の変容について「記述」、「説明」、「帰結」に関する研究を進めた。記述的な研究においては、人口動態統計の累積値を用いて、国籍別の結婚期間別離婚の発生動向について整理した。日本人夫婦に比べて、国際結婚の夫婦では離婚率が著しく高いことが確認された。また、住宅・土地統計調査や労働力調査といった静態統計の再集計により、成人複数が暮らすシェアハウスや親と同居の壮年未婚者(35歳~44歳)といった結婚に代わる居住形態にいる人々の実態を分析した。シェアハウスには低所得世帯やシングルマザーが多く居住しており、親同居の壮年未婚者では失業率が高い。シングル化に伴う新たな居住形態の動向や実態の把握に努めていく必要が示された。 次に、出生動向基本調査の個票データを用いた説明的な研究に取り組んだ。まず、女性の学歴と初婚率との関係について、コーホート比較ならびに年次変化の分析を行い、2005年以降、大卒女性の婚姻率が上昇に転じていることを明らかにした。また、増加傾向にある大卒の女性では、自分より学歴が低い男性との結婚が起きやすくなっていることが確認された。さらに、女性の学歴と離婚についての分析では、両者に負の関連がみられ、その関連は1990年代以降に結婚した女性において強化されていた。女性の経済力が、近年では結婚の生起や安定性に寄与する要因となっていることが示された。 最後に、結婚行動の変容の帰結のひとつとして、出生への影響に着目した。女性の学歴と無子割合の年次比較(1992年~2010年)では、31-33歳での無子割合が高卒女性で増加が著しく、高卒女性が仕事も家庭も持ちにくくなっている現状が示唆された。また、大卒女性ほど第1子出生が意図せざる妊娠の帰結である確率が高いことが示され、固定的な夫婦の役割分業が稼得能力の高い大卒女性の出産の機会費用を高めているとの知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においては、初年度より、結婚や離婚行動の変容に関する(1)実態の把握と変化・差異の記述、(2)説明モデルの構築と検証、(3)変化の帰結に関する分析を軸とした研究を行ってきた。各研究フェーズにおいて、公的統計や結婚に対する意識や行動に関する信頼性の高い全国標本調査の個票を用いた研究が行われており、精度の高い研究成果が出揃いつつある。具体的には、結婚に代わる居住形態についての実態把握が精力的に進められている。また、結婚や離婚行動の変化を適切に記述するモデルや指標の開発も着実に前進している。結婚や離婚の社会経済要因に関する説明モデルの構築については、主に学歴との関連において、研究成果が上がりつつある。結婚・離再婚とその変化が出生や社会的格差に与える影響については、当初予定していた健康への影響のみならず、出生への影響など多様な側面が分析されるようになっている。そのため、概ね予定どおりの成果が得られていると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの成果に引き続き、国勢調査などの静態統計と届出データの動態統計を組み合わせる手法や届出データの累積値を使ってリスク人口を構築する方法などを深化させていきたい。本年度は、国勢調査の個票データを用いて夫婦の学歴組み合わせの趨勢に関する分析や国勢調査と人口動態統計を用いた職業別結婚・再婚・離婚率の算出に取り組む。これにより、社会経済的属性別の結婚動向の変化についての理解が進むことが期待される。さらに、これまで分析・集計を進めてきた非親族世帯(同性・異性カップル、成人複数が暮らすシェアハウス)や1人親世帯の実態、外国人の家族形成および離別者からの待ち時間別再婚の発生動向等についても、随時結果の公表に向けて準備を進める。 また、記述的分析によって明らかになった変化について、出生動向基本調査を用いた説明モデルを検討し実証する。例えば、女性の社会経済的属性と初婚率との関係については、夫妻の学歴組み合わせに着目し、その結婚持続期間別の推移や初婚・再婚における学歴組み合わせパターンの相違についての仮説検証型の実証分析に取りかかる。 そして、非婚化による社会的な影響を明らかにするため、結婚が人々の生活に与える影響にも着目する。昨年度に引き続き結婚生活と成人の健康の関係に着目した分析を行う。また、結婚や離婚、死亡により生じる配偶関係間の状態異動を分析するため、「結婚の多相生命表」を最新年次を含めて作成し、直近年での結婚・離婚の動向や、配偶関係別の死亡状態に関する分析を行う。 また、本研究も最終年度に近づいてきたことから、各自の研究成果を論文投稿などの形で完結させるよう意図していきたい。今年度中に上がる成果をみつつ、全体を統合するような理論やメカニズムについても議論・考察を深めていく。
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Research Products
(15 results)