2013 Fiscal Year Annual Research Report
リスク認知とソーシャルメディア情報拡散過程の進化論的解明:基礎研究から社会実装へ
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25245064
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐倉 統 東京大学, 大学院情報学環, 教授 (00251752)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平石 界 安田女子大学, 心理学部, 講師 (50343108)
三浦 麻子 関西学院大学, 文学部, 教授 (30273569)
池田 功毅 中京大学, 心理学研究科, 研究員 (20709240)
中西 大輔 広島修道大学, 人文学部, 教授 (30368766)
横田 晋大 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 特別研究員 (80553031)
小森 政嗣 大阪電気通信大学, 情報通信工学部, 教授 (60352019)
松村 真宏 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (10379159)
林 香里 東京大学, 大学院情報学環, 教授 (40292784)
武田 徹 恵泉女学園大学, 人間社会学部, 教授 (90376682)
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Project Period (FY) |
2013-10-21 – 2016-03-31
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Keywords | 情報流通 / 社会心理 / 進化心理 / 言説分析 / 嫌悪刺激 / アンケート調査 / ツイッター分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
行動免疫班は放射能関連リスク(原発、放射性物質、汚染作物、汚染地域)ならびに、それ以外のリスク要因(自動車事故、飛行機事故、インターネット、火事、泥棒、インフルエンザ、AIDS、地震)に対する認知、感情、ならびに情報源への信頼について、2月(非放射能関連リスク)と3月(放射能関連リスク)の2回に分け同一回答者1600名に対するWeb調査を実施した。放射能関連リスクについては認知と感情の関連が強く、またいかなる情報源も信頼されていないことが示された。 ツイッター情報研究班は、リスク事象として東日本大震災を取り上げ、震災時にソーシャルメディア(ツイッター)上で流布した2種類のデマ(コスモ石油製油所爆発事故、原発事故による放射能被害)を見た利用者のうち、どういう人が情報を転送(リツイート)した(しなかった)か、その特徴を、利用者のネットワーク特性(フォロー/被フォロー数、相互フォロー数、次数中心性、など)によって記述した。流言ツイートを拡散したユーザは、リンク、すなわちフォロー・フォロワーが少ない傾向にあることが明らかになり、感染症的な流言拡散モデルとは逆の知見が得られた。 社会実装班は、リスク言説の生成伝播の過程を辿る際に参照となる過去の事例としてハンセン病恐怖言説の生成伝播過程を調査した。新聞データベースおよびハンセン病資料館所蔵資料を通じてハンセン病関係言説の報道状況を網羅的に調査した。『ハンセン病文学全集』編集担当者、ハンセン病資料館元司書にもヒアリング調査を行った。ハンセン病以外では原子力立地地元の言説状況を予備調査するために福井新聞原子力担当記者へのヒアリングを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
行動免疫仮説に基づく心理学実験と、ツイッター情報の拡散過程の分析は、当初の予想とは異なる結果が出ているところもあるものの、おおむね順調に進捗している。当初の予想と異なるといっても、新たな展開や展望が得られる可能性があるという点では、むしろ研究の方向性としては望ましい発展をしているともいえる。とくに、行動免疫班が明らかにした、「放射能」リスクは他のさまざまなリスク要因のすべてに共通するような心理的性質をもっていることや、ツイッター班が明らかにした、放射能に関する流言を拡散した人はむしろ社会的ノードが少ない傾向にある点などは、今後の放射能関連情報の社会的拡散を考える上で重要な示唆となると考えている。社会実装班は、過去の感染症事例を参照例としてその特徴を分析したが、他2班の成果と合わせて放射能関連情報の社会的拡散についてどのように対応するべきかについて、実際的なプログラムを形成するには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
行動免疫班、ツイッター情報班とも、今年度までの成果を踏まえて、さらに「放射能」がリスク要因としてどのような特徴をもっているかを明確にする実験と調査を継続する。とくに感染症リスクの諸特徴との比較は、社会実装班の研究プログラムとの関係からも重要である。社会実装班は、放射能リスクの心理的特性を踏まえて、さまざまな放射能言説を分析検討する。
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Research Products
(4 results)