2014 Fiscal Year Annual Research Report
リスク認知とソーシャルメディア情報拡散過程の進化論的解明:基礎研究から社会実装へ
Project/Area Number |
25245064
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐倉 統 東京大学, 大学院情報学環, 教授 (00251752)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平石 界 慶應義塾大学, 文学部, 准教授 (50343108)
池田 功毅 中京大学, 心理学研究科, 研究員 (20709240)
中西 大輔 広島修道大学, 人文学部, 教授 (30368766)
横田 晋大 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 特別研究員 (80553031)
三浦 麻子 関西学院大学, 文学部, 教授 (30273569)
小森 政嗣 大阪電気通信大学, 情報通信工学部, 教授 (60352019)
松村 真宏 大阪大学, 経済学研究科, 准教授 (10379159)
林 香里 東京大学, 大学院情報学環, 教授 (40292784)
武田 徹 恵泉女学園大学, 人間社会学部, 教授 (90376682)
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Project Period (FY) |
2013-10-21 – 2016-03-31
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Keywords | 進化心理 / ソーシャルメディア / 科学技術コミュニケーション / リスク認知 / リスク忌避 / 専門的知識と住民参加 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は当プロジェクトが本格的に始動した年度である。最初に全体研究会をおこない(2014年5月)、共通認識を醸成した(「放射能」に対する懸念や恐怖感は地域によらない可能性がある、欠如モデルによるリスクコミュニケーションは逆効果、など)。全体研究会は9月と11月にも行なった。11月は福島大学の研究者との合同研究会をおこない、放射線測定活動を続けている地域の方々と、食品の小売り店を訪問し、生活者から見たときの放射能汚染とそれをめぐる「風評被害」の影響について意見交換をおこなった。 行動免疫班は、放射能関連リスクならびに、それ以外のリスク要因に対する認知、感情、ならびに情報源への信頼について、2月(非放射能関連リスク)と3月(放射能関連リスク)の2回に分け1600名に対するWeb調査を実施した。放射能関連リスクについては認知と感情の関連が強く、またいかなる情報源も信頼されていないことが示された。 ソーシャルメディア班は震災時に流布したデマツイートを見たユーザのうちどういう人が「RTした(しなかった)」か、その特徴を、ユーザのネットワーク特性によって分析した。分析は今年度はまだ途上であるが、恐怖心を抱いているとRTの回数が多いことが示唆されている。 社会実装班は、過去の病気の比較やマスメディアの動向を調査すると同時に、原発震災後の政治的ガバナンスの問題点を論じるシンポジウムをおこなった。演者として事故直後に政権の内部から対処に当たった政治家やアメリカから当時派遣された専門家も含め、日本の危機管理体制の問題点を浮き彫りにする論点が出された。 年度繰越し分の研究費によって、これらの成果の一部を国際学会で発表し、また、被災者対象保養キャンプの参加者の放射能汚染の認識を調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
各班の研究活動がおおむね順調であるのに加え、全体活動での情報共有と意見交換により、異分野交流が促進され、新たな共通認識が醸成されたのは予想外の収穫であった。具体的には、心理学研究者らが想定している以上に研究成果のおよぼす社会的影響は大きく、学術的に厳密な用語の使用法がときに社会的誤解を招く可能性がメディア研究者から指摘され、科学情報と一般社会との関係についての共通認識が形成された。また、11月の福島訪問では地元の研究者との情報交換に加え、地域の食料小売店や住民による放射線測定活動につぶさに接し、住民自身による積極的な科学的活動から刺激を受け、各研究分担者自身の研究活動に有益なフィードバックがなされた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の作業仮説に沿って、各研究班がさらに研究を進める。行動免疫班は、食材や実験者への教示を変えて、「放射能」情報がどのような忌避反応や嫌悪感情を引き起こすか、実験を続ける。行動免疫モデルではなく危機管理モデルの方が認識枠組みとして採用されている可能性があるため、その点を明確にできるような実験を進める。 ソーシャルメディア班はデータ量が膨大であるため解析に時間がかかっているので、この作業時間を短縮できる方法の開発やモデル化も視野に入れて作業を進める。 社会実装班は、過去の災害や病気の事例との比較作業を進めると同時に、マスメディアや日本の政治状況をどのように考慮するべきか、理論的枠組みの構築をめざす。 研究成果は地元福島に還元できる形で発表することも考慮する。
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Research Products
(19 results)