2014 Fiscal Year Annual Research Report
表面X線回折直接法によるトポロジカル絶縁体超薄膜の電子密度分布精密解析
Project/Area Number |
25246026
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 敏男 東京大学, 物性研究所, 教授 (20107395)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋本 晃一 日本女子大学, 理学部, 教授 (40262852)
白澤 徹郎 東京大学, 物性研究所, 助教 (80451889)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 表面構造 / X線回折 / トポロジカル絶縁体 / 位相問題 / ホログラフィ / 反復位相回復 / 電子密度分布 / 原子分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、試料を超高真空中に保持したままX線回折実験を行う必要がある。昨年度設計製作した超高真空装置をさらに整備した。超高真空中で薄膜試料を作製した後に、切り離し可能な小型超高真空チャンバーにその試料を移送して大気にさらすことなくX線回折実験を行えるよう更に整備を進めた。 トポロジカル絶縁体Bi2Se3にCuをドープした結晶は4K以下の低温で超伝導転移することが知られており、トポロジカル超伝導体の候補物質として注目されている。CuがBi2Se3 QL(Quintuple layer)層間にインターカレートされて電子ドープすることで超伝導体になることが広く受け入れられてきたが,高温合成したバルク結晶は不均一性が大きく様々な副相を含むことが知られている。これに対して、本研究では、超高真空中で原子層制御したトポロジカル絶縁体超薄膜Bi2Se3をエピタキシャル成長させた後にCuをドープする方法で作製した試料を用いてX線回折実験を行った。得られたデータにホログラフ法や反復位相回復法を適用して原子層分解して電子密度として解析を行った。その結果、CuはBi2Se3のQL間のvan der Waalsギャップにインターカレートされていること、および、Cuのドープ量に応じてそのギャプ間隔が変わることを定量的に示すことができた。さらに、低温で電子輸送測定を行ったが超伝導さないことから、高温合成したバルク結晶で観測された超伝導は混在した他の結晶相に由来する可能性が高いことを指摘した。 さらに、ホログラフィの手法を有効に応用することにより、40年以上に渡りその構造が解明されていなかった表面における金属1次元鎖状構造の代表例であるSi(111)-5x2-Au構造を実験的に決定することにも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
トポロジカル絶縁体Bi2Se3にCuドープした超薄膜試料で電子密度分布を原子層分解で解析することに成功した。その解析結果は、最近注目されているトポロジカル超伝導転移に一石を投じる結果となった。 さらに、本研究課題の解析方法を応用して、表面における金属1次元鎖状構造の代表例であるSi(111)-5x2-Au構造を実験的に解明した。この構造は、その存在が発見されて以来40年以上その構造について論争が続いていたが、ホログラフィの手法を適用することにより解決できた。 他方、CTR散乱を迅速に測定する方法の改良開発も行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
トポロジカル絶縁体Bi2Se3は膜厚がある臨界膜厚より薄くなるとトポロジカル絶縁体ではなくなることが知られている。よく制御されたエピタキシャル成長超薄膜試料を用いて膜厚と構造の関係を精度よく解析し電子物性との対応を考察する。 また、ホログラフィの手法および反復位相回復法をさらに進展させる。
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