2014 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属酸化物の低温還元反応 - 酸化物配位化学の構築へ向けて -
Project/Area Number |
25248016
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
陰山 洋 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40302640)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 晃司 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50314240)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | トポケミカル反応 / 低温合成 / ペロブスカイト / 酸化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、代表者が構想する「酸化物配位化学」へと将来発展させるための基盤を構築することを目指し、低温トポケミカル還元反応や高圧合成法を用いて超還元型酸化物や混合アニオン化合物の合成を試み、またその特異な配位構造に由来する磁性・光物性などを開拓するものである。H26年度には、以下の四つの成果が得られた。(1)低温トポケミカル還元により新規酸水化物EuTi(O,H)3を得た。EuTiO3は反強磁性体であることが知られていたが、ヒドリド(H-)をドープすることによってRKKY相互作用に由来する強磁性を発現することが分かった。またこのヒドリドドープがランダムネスを抑えてキャリアドープを行うことに適していることが分かった。(Inorg. Chem. 2015年に出版)(2)粉末で合成の報告があったLaSrCoO3H0.7を薄膜単結晶を使って合成すると、粉末とは違うアニオンの秩序を示すことが分かった。アニオンの秩序パターンが異なれば、物質の特性が変化することがきたいされるため、今後この技術を使って同じ組成でも違う特性を持つ物質を合成できるようになると考えられる。(3)H25年度に合成されていた(R1-xSrx)CoO2(R= 希土類金属)について、その構造を明らかにした。これまでに酸素欠損型ペロブスカイトは様々な構造が報告されているが、この物質は新しいパターンの酸素欠損を持っている。一次元鎖のような構造になっており、比較的高い磁気転移温度を持っていることも興味深い。現在論文準備中である。(4)酸素イオン伝導体として知られるBi4V2O11がを還元し酸素欠損を導入していくとBi4V2O10.6以下ではBiも一緒に欠損しBi3.6V2O10まで還元されることが分かっていた。このBi3.6V2O10には珍しいBiの一価が存在する可能性が分かってきている。現在論文準備中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記載したように、(1)新しいユウロピウムチタン酸水素化物を得て、その特異な磁性と、ヒドリド置換の有用性を明らかにした、(2)粉末としては既存の物質であるが新しい酸水素化物薄膜を合成し、そのアニオンの秩序パターンを制御することに成功した、(3)ペロブスカイトコバルト酸化物の還元により新しい超還元型酸化物の合成し、その構造の特異性、磁性について明らかにした、(4)還元型V酸化物の系において、通常現れてこないBi一価の存在を示唆する結果を得た、である。このように新規物質の合成だけでなく、合成のメカニズムの解明や、配位構造の有用性など、多角的な観点から研究を進められており、代表者が構想する「酸化物配位化学」の構築に向けて順調に研究が進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画において混合アニオン化合物について大きくとり使っているが、酸水素化物にだけでなく酸窒化物、酸フッ化物など様々な混合アニオン化合物の合成を精力的に行っていく。
|
Research Products
(7 results)