2013 Fiscal Year Annual Research Report
レーザー超音波を用いた多層構造燃料電池セルの密着強度・靱性評価法の開発
Project/Area Number |
25249004
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
荒井 政大 信州大学, 工学部, 教授 (30260532)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 正臣 信州大学, 工学部, 助教 (40554580)
伊藤 寛明 青山学院大学, 理工学部, 助教 (70534981)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 非破壊検査 / 超音波 / 逆問題解析 / 界面強度 / 境界要素法 / 薄膜 |
Research Abstract |
今年度は高速フレーム溶射を用いてアルミニウム合金基板上にアモルファスチタン膜を製膜し,エメリーペーパーで30μm厚さまで研磨した上で,レーザースポレーション装置を用いて界面密着強度の評価試験を実施した。基材側表面に半パルス幅5nsのレーザーを照射し,基材-薄膜内に弾性波動を伝播させ,その反射波によって基材-薄膜界面において剥離を生じさせた.薄膜側の過渡的な変位応答をレーザー干渉計により測定し,そのデータを用いて逆解析を行うことにより薄膜-基材間における密着強度を計算した.数値計算には本年新たに開発した軸対称型動弾性境界要素法プログラムを用い,Hosonoの方法による数値Laplace逆変換を適用して,界面における応力の時間変動解を高精度で計算した上で界面密着強度を見積もった.得られた密着強度は静的なピン引き抜き試験の結果と比較することによって考察した.ピン引き抜き試験では,従来はピン周辺の応力集中を無視した評価が行われていたことにより精度の低下が問題となっていた.そこで本研究では接着部の応力分布を境界要素法による3次元解析によって高精度に求めた上で密着強度を算出した。その結果,ピン引き抜き試験による密着強度の評価結果の解析精度を大幅に高めることに成功した。両試験方法により得られた結果をJhonsonの方法に基づくワイブルプロットにより評価した.なお,Jhonsonの方法では,破壊が生じた場合のデータのみでなく,破壊が生じない場合のデータも同時に用いることによって,少ない試験回数のデータからも統計的に信頼性の高い評価結果を得ることができる.レーザースポレーション法により得られた密着強度は59.2MPa, 他方,静的なピン引張試験により得られた密着強度は94.3MPaとなり,動的なレーザースポレーション試験により得られた結果は静的試験に比べやや小さい値となることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1年目の課題として,10μm前後の(より薄い)薄膜をターゲットとしていたが,おもにコーティング膜作成上の問題として薄い膜が作りにくく,さらには時間的な制約もあり,今年度は30μmの薄膜しか評価できなかった。次年度はスパッタ法やドクターブレード法なども活用しながら,より薄いコーティング膜の評価に取り組みたいと考えている。それらの理由により,現在の進捗状況は予定の70~80%であると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
2年目以降は,厚さが10μmを切る程度のより薄い膜が研究ターゲットとなる。さらには,実際の燃料電池セル用のコーティング膜およびその中間層を評価対象とした試験も視野にいれながら,それらを評価可能な実験手法の開発および数値計算手法の両面から取り組んでゆく予定である。なお,異方性膜をターゲットとする場合,現状の境界要素法のプログラムの改良が必要である。異方性材に対する弾性解析プログラムは既に開発済みであるので,それを動弾性解析プログラムに拡張することにより,シリコン膜などのように異方性を有する膜の評価を可能としたいと考えている.現時点で,Laplace変換法による境界要素プログラムにより得られる解の精度はほぼ飽和状態にあるため,時間領域の離散化については,近年注目を集めつつある演算子積分法なども取り入れながら制度改善を図りたいと考えている.
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