2014 Fiscal Year Annual Research Report
レーザー超音波を用いた多層構造燃料電池セルの密着強度・靱性評価法の開発
Project/Area Number |
25249004
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
荒井 政大 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30260532)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 正臣 信州大学, 工学部, 講師 (40554580)
伊藤 寛明 青山学院大学, 理工学部, 助教 (70534981)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 薄膜 / 密着強度 / 破壊靭性値 / レーザー超音波 / 非破壊検査 / 境界要素法 / 逆問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,既存のレーザースポレーション法に基づく密着強度・破壊靭性値の評価手法をさらに発展させることにより,燃料電池セルの強度・靭性評価を効果的に実施するとともに,より高い環境性能を有する燃料電池セルの開発を支援することを目的として研究を行った.具体的には3次元境界要素解析プログラムを軸対称問題に拡張するとともに,拡張されたプログラムを非定常動弾性問題に拡張するとともに,その最適化を行って,さらなる高速化と高精度化を図った.帯状の基本セルに対して数値積分を実行するとともに,変位および表面力の形状関数に,軸対称性を考慮した2次非適合型要素を適用することによって,計算効率の大幅な低減を図った.また,作成されたプログラムをき裂を有する破壊靭性値評価プログラムに拡張し,異材界面き裂パラメータの同定解析へと発展させた. 最終的に得られたチタンコーティング膜とアルミニウム基材間の密着強度および界面破壊靭性値をワイブル分布を用いて統計的に評価した.その結果,レーザースポレーション法により求められた界面強度は,ピン引張法により得られた界面強度とほぼ一致し,これらの結果より,本実験手法ならびに本数値シミュレーション手法の有効性を確認した. また,界面破壊靭性値については,混合モード比の点において,ほぼモードI,すなわち試験片の面外引張応力によるき裂進展が支配的であることを明らかにした.ただし,得られた界面破壊靭性値は,想定されたチタンコーティング膜の界面破壊靭性値の1/10程度と極めて低い値であり,これは高速フレーム溶射で成膜された際の残留応力が影響していると考えられる.以上のように,今年度はレーザースポレーション装置の試作,さらには境界要素法による数値解析プログラムの作成を行い,それらによって界面強度と界面破壊靭性値が十分な精度で測定・評価が可能となることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度,新たにYAGレーザーを導入することにより,実験装置も完成し,レーザースポレーション試験および強度評価実験を順調に実施することが可能となった.特に,作成された軸対称問題解析用境界要素法プログラムは計算効率と計算精度を既存のプログラムに対してはるかに向上することが可能となり,本研究の信頼性を大幅に向上させることが可能となった.現時点では,界面破壊靭性値の測定結果がきわめて小さい値となっているが,これは実験装置や計算手法の問題ではなく,おもにコーティング膜作成の過程での熱残留応力が原因と考えられるので,今後は熱残留応力の影響を考慮したうえでの評価が望まれる.以上の状況を考慮して,現在までの達成度は,おおむね順調に進展している,と評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では,測定できるコーティング膜の厚さに限界があり,20~30μm程度の厚さが下限と思われる.これより小さい膜では,コーティング膜と基材の間で剥離が生じず,薄膜と基材の界面で破壊を観察することができない.これはさまざまな原因が考えられるが,一つは入力のレーザーパルスが励起する超音波を適切にコントロールできず,適切な応力波を材料内に励起できていないことを意味している.このことを改善するために,次年度はレーザーアブレーション層の改善させ,固体資料との音響インピーダンスが少ないアブレーション層を設けることによって,より鋭く短い応力波パルスを発生さえるとともに,現状よりもさらに薄い10μm以下の厚さの薄膜も測定可能となるように実験装置の改良を行う予定である. また,材料特性の非線形性に起因して,いわゆる衝撃波が発生している可能性が示唆された.これは薄い基材を用いた場合に,界面剥離が発生するより先に基材と薄膜が応力波の伝播によって崩壊しながら破壊する現象が観察されたためである.そこで,これらの固体内衝撃波の現象を理解するために,材料特性の非線形を考慮した数値解析プログラムを作成し,実験データの評価に適用する.なお,材料特性の非線形性を考慮した場合,既存の3次元動弾性プログラムでの解析は極めて労力がかかるため,次年度はとりあえず,一次元の非線形波動方程式の解析を実施して,通常の弾性波の伝播と,衝撃波の伝播の様子と,それにかかわる破壊の進行について把握する予定である.
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