2013 Fiscal Year Annual Research Report
津波の浸水被害が想定される沿岸域の安心・安全な利用のための総合的研究
Project/Area Number |
25249067
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
水谷 法美 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10209760)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富田 孝史 独立行政法人港湾空港技術研究所, アジア太平洋沿岸防災研究センター, 副センター長 (20242836)
中村 友昭 名古屋大学, 高等研究院, 講師 (90569328)
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Project Period (FY) |
2013-05-31 – 2016-03-31
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Keywords | 津波 / ケーソン / 耐津波安定性 / リアルタイムシミュレーション / GPS波浪計 / 津波避難ビル |
Research Abstract |
津波浸水が予測される地域での防災・減災のために,本年度は,津波の早期検知と情報発信,津波防護のための構造物の耐津波安定性,浸水時の避難施設として津波避難ビルへの津波作用の実態を中心に研究を実施した. まず,津波防護のための構造物の耐津波安定性については,研究分担者の中村と代表者の水谷が開発したFSSMモデルによる数値解析手法に基づいて検討した.その結果,防波堤を津波が越流した際,背後に形成される渦によって生じる圧力低下がケーソン転倒に大きく寄与することを定量的に示した.また,他の研究者によって指摘されている防波堤港内外圧力の特性を数値解析でも示すとともに,防波堤内外の水位差から整理できることを示した.また,背後の圧力低下を軽減させる手法として,マウンド部の透過性を大きくすることの有効性や,ケーソン上部の港内側を斜面状に切り欠くことで,防波堤背後の渦流れの様相を大きく変えることが可能となり,結果としてケーソンの耐津波性を向上させることが可能であることも示した. また,代表者の水谷は,水理模型実験と数値解析手法により,津波避難ビルを想定したRG構造の建物に作用する津波の実態を,建物形状,特に開口部やピロティーの効果などに着目して考究した.その結果,開口部をもうけることで津波作用力は大幅に軽減可能であること,また,その軽減効果はほぼ開口率に依存することを明らかにした.また,津波の打ち上げ高さについても考究し,従来使用されている入射波高の3倍の妥当性について示した. 分担者の富田は,GPSブイを使った津波リアルタイムシミュレーション手法の開発に取り組んだ.GPS波浪計が第一波を感知したあと,数分で湾奥部の浸水状況を予測するための計算手法の構築を行った.計算は通常のパソコンを想定し,GPUのユニットを搭載することで特別なハードを必要とすることなく計算可能なシステムとして開発を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で既述したように,津波の早期検出,来週する津波の海域での防護,さらに陸上へ遡上した津波から避難するための施設としての津波避難ビルの効果について,研究代表者,分担者の研究は予定以上のペースで順調に進んでいる.また,研究を推進する上で研究協力者の小竹からも水理模型実験の結果の提供を受けるなど協力体制も機能している.ただし,早期検知に関して,研究協力者の赤井からのレーダーによる情報交換が多少遅れていることが否定できず,このため,総合的にはおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,防波堤に加え,海岸堤防の耐津波性,複数のビル群に作用する津波力と配置の効果,建物形状と来襲方向の効果などについて,数値解析と平面波浪水槽による水理実験の両面から研究を行う.実験は名古屋大学の三次元高潮津波シミュレーションシステムを活用する.併せて,消波ブロックの耐津波性,橋梁の流出機構の解明と対策など,より広範な施設・構造物の耐津波性を評価し,来襲津波の軽減策について多面的に考究する. また,代表者の水谷は研究協力者の赤井と情報交換を行い,レーダーによる早期検知の有効性について明らかにし,本研究のGPS波浪計による早期検知との相乗効果についても検討する. なお,GPS波浪計を使ったリアルタイムシミュレーションについては,富田と協力して研究を実施している高川氏(港湾空港技術研究所)にも分担者として新たに加わっていただき,より強固な体制で実用化に向けて研究を進展させる. 水谷はそれらを統括することも併せて行う.
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Research Products
(18 results)