2015 Fiscal Year Annual Research Report
フラックスコーティング法によるマテリアルイノベーション
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25249089
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
手嶋 勝弥 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (00402131)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
是津 信行 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (10432519)
我田 元 信州大学, 学術研究院工学系, 助教 (40633722)
石崎 貴裕 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (50397486)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フラックス / コーティング / ビルドアップ / 結晶成長 / 第一原理計算 / In-situ分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の研究では,前年度特に成果をあげた①蓄電池系と②光半導体系の酸化物結晶をモデル材料とし,フラックスコーティング法による単結晶超薄膜の作製と評価を継続した。はじめに,①前年度のLiMn2O4成膜結果をもとに,STO(100)基板上で,700℃の温度でLiNi0.5Mn1.5O4(LNM)結晶をフラックスコーティング形成した。その結果,結晶成長方位<100>および晶癖発達面{110}の単結晶エピタキシャル薄膜の成長に成功した。なお,表面はスピネル構造を反映した規則的凹凸形状となった。単結晶薄膜の成長状態を精査したところ,界面に転移の導入が見られるものの,STOとLNM相の整合性はきわめて高いことがわかった。つまり,エピタキシャル成長する可能性を見い出せた。制限領域電子線回折パターンは基板から薄膜最表面までとてもシャープなスポットを示し,すべての領域で高品質な単結晶であることとともに,STO(100)とLNM(110)平面上の330周期平面で一致することを示した。このようにエピタキシャル成長制御を実現できたため,成長方位と晶癖発達面を支配する因子の調査を開始した。具体的には,各表面の欠陥生成エネルギーから表面エネルギーを算出し,晶癖発達面を予測したところ,表面に酸素欠損を導入することでウルフの平衡系を再現できることがわかった。なお,このように作製したLNM結晶層が正極活物質層として働くことを,リチウムイオン二次電池性能評価にて確認できた。つぎに,②前年度作製した単結晶NaTaO3薄膜をアンモニア気流化で窒化処理した。その結果,結晶構造変化に起因した無数の微細孔をもつ薄膜となることがわかった。そこで,上述のLNM薄膜育成手法である蒸発を駆動力にしたフラックスコーティング法にて,Ta3N5結晶薄膜の直接成長を実施したところ,柱状のTa3N5単結晶からなる薄膜を作製できた。この薄膜と基板と良好な界面を形成し,優れた光電変換特性を発現できる可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
単結晶基板表面で,高電位正極活物質として期待されるLiNi0.5Mn1.5O4結晶層を単結晶薄膜としてエピタキシャル成長できることを見出した。特に,結晶成長を詳細に解析することで,成長方位や晶癖発達面を制御できる可能性を得た。また,第一原理計算を活用することで,LiNi0.5Mn1.5O4相への酸素欠陥の重要性がわかった。この欠陥の存在は実験結果と一致しており,計算結果の妥当性も得ている。さらに,可視光に応答する光電極材料として期待されるTa3N5結晶層を金属集電体表面に蒸発を駆動力にしたフラックスコーティング法にて形成できることを見出した。いずれの材料系においても成長制御に関するきわめて重要な知見を多数得ることができた。当初予定の研究実施計画を満足するとともに,次年度予定の研究にも着手できており,研究達成度として高い評価に値する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は,上述の2つの材料系(①LiNi0.5Mn1.5O4と②Ta3N5)を中心に,他の材料系にも応用するとともに,引き続き,フラックス学理の体系化のための情報収集に努める。さらに,今年度より着手し始めたデザイン結晶層を活用して実デバイス応用を見据えた成膜技術の熟成に注力する。 また,引き続き,さまざまなIn-situ分析手法を駆使し,成長初期の核形成・制御から成長中期の結晶接合,さらには成長後期の厚膜化(三次元成長)までを一気通貫で可視化することに挑戦する。また,基板との界面を詳細に解析することで,きわめて重要な情報が多数得られるため,その領域の成長観察も引き続き注力する。
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Research Products
(15 results)