2015 Fiscal Year Annual Research Report
ダイナミック構造変化を利用した高強度・高延性ナノ結晶合金の創製
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25249103
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
山崎 徹 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30137252)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
足立 大樹 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00335192)
藤田 和孝 宇部工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (10156862)
網谷 健児 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (30463798)
三浦 永理 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70315258)
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Project Period (FY) |
2013-10-21 – 2017-03-31
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Keywords | 電解析出 / Ni-W合金 / ナノ結晶 / アモルファス / 加工硬化 / 金属ガラス |
Outline of Annual Research Achievements |
電解析出法を用いて,ナノ結晶/アモルファス複合組織を有し,W含有量が14.5~19.9at.%のNi-W合金を作製した.これら試料を用いて,ε=5.0×10-6~1.3×10-1[s-1]の範囲でひずみ速度条件を変化させ,試験温度T=RT~190[℃]の範囲で温度条件を変化させて引張試験を行った.これらの引張試験結果から,ひずみ速度感受性指数(m値),変形の見かけの活性化エネルギーを算出した.作製直後の試料と作製から一定期間室温中で保管した試料についても引張試験,XRD測定,DSC測定を行った. ひずみ速度条件,温度条件を変化させて引張試験を行った結果,ひずみ速度感受性指数m値=0.03,活性化エネルギーGa=42.4~87.6kJ/molという値が得られた.さらに,電析Ni-W合金の引張強度に及ぼす時経変化影響を調べた.作製直後の試料の引張試験では,最大強度2202MPa,塑性伸び9.41%で大きな延性を示したが,室温で100日以上経過した試料では2446MPa,0.51%と強度は上昇し,塑性変形伸びは低下し,その原因としてアモルファス相の結晶化による結晶粒成長ではない可能性が示唆され,特に,経時変化はNi-W合金中のアモルファス相の自由体積の減少であると考えられた.これらの結果から,ナノ結晶/アモルファス複合組織における塑性変形メカニズムのモデルを提案した.バルク状のZr-Cu-Ni-Al系金属ガラスに少量の貴金属を添加し,上記と同様にナノ準結晶/アモルファス複合組織を有する合金を作製し,その機械的特性を調べた.その結果、これら合金系の場合には組織が熱的にも安定で,応力誘起による構造変化が生じがたかった.今後は、構造の不安定化を図り,ダイナミック構造変化が生じやすい合金組成を開発する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで、ナノ結晶/アモルファス複合組織を有し,降伏強度が最大3GPaを超える高強度合金において、約9%を超える大きな塑性変形を発現させることに成功した.その原因として塑性変形中のダイナミックな構造変化が加工硬化を生じさせていることを放射光実験により動的に計測し解析した.さらに,その変形機構をひずみ速度条件,温度条件を変化させて引張試験を行うことにより,塑性変形中のダイナミックに生ずる加工硬化現象や経時変化による硬質化は,アモルファス相の結晶化による結晶粒成長ではない可能性が示唆され,特に,経時変化の原因はNi-W合金中のアモルファス相の自由体積の減少であると考えられた.これらの結果から,ナノ結晶/アモルファス複合組織における塑性変形メカニズムのモデルを提案することができた.電解析出法以外の方法でナノ結晶/アモルファス複合組織を作製することを試み、Zr-Cu-Ni-Al系金属ガラスに貴金属を添加して高密度にナノ準結晶相を析出させたナノ準結晶/アモルファス複合組織を有する合金作製技術を開発することができ、塑性伸びの改善に成功している. これらの研究開発結果から,ダイナミックな構造変化が生じ、高強度・高延性を発現できるNi-W合金においては,マイクロコネクター用のバネ構造材料として大きく期待されるとともに,本塑性変形メカニズムの提案により,幅広い材料において同様の特性の発現が期待されている. 当初予想されていなかった成果として、上記の高強度・高延性特性を有するNi-W合金の開発により、従来は殆ど不可能とされていた金属-金属のナノインプリント技術の開発が可能となってきた。これらの応用用途開発にも着手したい.
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Strategy for Future Research Activity |
電解析出法により作製したNi-W合金は、ナノ結晶/アモルファスの複合組織を有し、塑性変形中にダイナミックな構造変化が生じ、高強度・高延性が発現すること、さらにその変形メカニズムに関して提案することが出来た。今後は、このメカニズムにあった新たな合金開発を進めると共に、これら極端な高強度・高延性を有する合金を利用した応用研究にも着手する。 1)電解析出法により作製したNi-W合金の塑性変形中の組織のダイナミック変化および経時変化量を制御するため、微量は半金属元素B, P, N等の添加効果を検討する.これら元素の添加には,電解浴中に、ホウ水素化ボロン、次亜リン酸ナトリウム、クエン酸3ナトリウム等を添加することにより可能となり,これら侵入型元素の効果を検討する.ダイナミック構造変化の測定には,これまでと同様に,SPring-8による放射光実験を実施する予定である. 2)Zr-Cu-Ni-Al系金属ガラスに微量の貴金属Au, Pd, Pt, Ag等を添加することにより,ナノ準結晶/アモルファス複合組織を形成させると共に、Zr含有量を調節して、構造の安定性を制御し,Ni-W合金の場合と同様に,塑性変形中のダイナミック構造変化による加工硬化現象を発現できる合金の開発を試みる. 3)上記の高強度・高延性特性を有するNi-W合金の開発により、従来は殆ど不可能とされていた金属-金属のナノインプリント技術の開発が可能となってきた。このため、フォトリソグラフィー技術を用いて,高強度・高延性Ni-W合金を用いた超微細金型を作製し、種々の加工硬化係数を有する金属基板にナノインプリント成形を試みる.例えば,Al(加工硬化係数n=0.24), SUS316(n=0.45), Zr-Cu-Ni-Al系金属ガラス(n=0.0)等の代表的な基板金属を対象に、Ni-W合金金型を用いたナノインプリント成形性を検討する.
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[Journal Article] Development of nanostructured SUS316L-2%TiC with superior tensile properties2015
Author(s)
T. Sakamoto, H. Kurishita, S. Matsuo, H. Arakawa, S. Takahashi, M. Tsuchida, S. Kobayashi, K. Nakai, M. Terasawa, T.Yamasaki, M. Kawai
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Journal Title
Journal of Nuclear Materials
Volume: 466
Pages: 468-476
Peer Reviewed / Open Access
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