2014 Fiscal Year Annual Research Report
超伝導サブミリ波リム放射サウンダ衛星観測データの精緻化による中層大気科学の推進
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25281006
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
塩谷 雅人 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (50192604)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 睦 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, その他部局等, 研究員 (60142098)
秋吉 英治 独立行政法人国立環境研究所, その他部局等, 研究員 (80211697)
尾関 博之 東邦大学, 理学部, 教授 (70260031)
眞子 直弘 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 助教 (00644618)
今井 弘二 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, その他部局等, 研究員 (50711230)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 環境計測 / 衛星観測 / 中層大気 / 大気微量成分 / 物質循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
超伝導サブミリ波リム放射サウンダ(SMILES)は,2009年9月,国際宇宙ステーションの日本実験モジュール「きぼう」の暴露部に設置され,約半年間ではあったが成層圏~中間圏(中層大気)の超高感度大気観測をおこなった.この研究課題では,SMILESが測定した大気の放射データから大気微量成分分布を導出する際に大きな不確定性を持つ要素(たとえば分光学的なパラメータ)の吟味をおこなうことで,より信頼性の高い微量成分データを導出することを目指す. 平成26年度には,昨年度に引き続いてSMILESデータと既存の観測データや化学輸送モデル結果との比較・検討をおこなった.SMILESが異なる地方時の大気観測ができるという長所を生かし,特に高精度な測定ができるとされる太陽掩蔽法にもとづく日出・日入時における複数の衛星オゾン観測データと化学輸送モデル結果との比較をおこなった.その結果,成層圏領域においても日出・日入時のオゾン量に顕著な差が認められ,それが大気潮汐を起源とする日周変動成分として解釈できることがわかった(Sakazaki et al., 2014).このオゾンの日周変動成分はハワイにおける地上からの成層圏オゾン観測データにも見られることが確認された(Parrish et al., 2014). スペクトル線形状を求めるための新たな測定系を制作して亜酸化窒素を用いデータの再現性を確認したところ,1%以下で圧力幅係数が求められることがわかった.スペクトル形状解析に関しては,これまでのVoigt型に加えて分子の衝突緩和の非線形効果を取り込んだGalatry型,速度依存Voigt型の解析プログラムを新たに作成し3種類の形状関数の相互比較を系統的に進めることが可能になった. こういった研究成果にもとづき,SMILESの欠点を補いながらさらに進んだ大気観測をおこなうため新たな衛星計画を検討中であり,特に温度と風の場の観測を中心として理論モデル計算を実行し,十分な測定可能性があることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では平成26年度にSMILESデータと既存の観測データや化学輸送モデル結果との比較・検討作業を継続しながら,SMILESデータ処理システムの改訂作業をおこなうこと,モデル間の比較などもふまえながら不確定要素の抽出作業を取りまとめることを予定していた.9.研究実績の概要でも述べたようにSMILESデータの検証作業,化学輸送モデル結果との比較作業は順調におこなわれている.データ処理システムの改訂作業は,他の不確定要素(計算結果の再現性のないことがある)が明らかになったため,その問題解決を優先して実質的な作業がおこなえなかったが,問題点は明らかになっており最終年度には改善されたデータが得られる見込みである.また,化学輸送モデルについてもモデル出力の解析が進められており,最終年度にはその成果も取りまとめる目途が立っている.さらに,分光学的なパラメータ測定に関しても順調に測定系の準備が進んでいる.これらを実装する形で最終年度にはより高品位のSMILESデータが得られる見込みであり,全体として研究計画は順調に進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進んでおり,最終年度にはデータ処理あるいは化学輸送モデルの不確定要素を整理して取りまとめSMILESデータの改善につなげる.特に化学輸送モデルの新しい実験結果が利用可能になってきているので,既存のデータとの比較も含めた解析をさらに進める.その比較・解析作業の中から浮き彫りになった問題となる微量成分に関わる種々のパラメータ,たとえば分光パラメータや反応係数などの観点から不確定要素を明らかにする.さらにデータ処理システム全体に関わる問題点,たとえば放射計算に関わる不確定性について吟味する.これらの結果にもとづいて,SMILESデータ処理システムを再度実行してデータの改善につなげる.いっぽう化学輸送モデルの持つ不確定要素も同時に明らかにしながらモデルの改訂にむけた作業をおこなう.
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Causes of Carryover |
実験に用いていた絶対圧真空計が故障したために,予定していた温度可変セルの製作ができなくなったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越し分は次年度分と合算して当初予定していた温度可変セルの製作に充当する.
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Research Products
(29 results)
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[Journal Article] Diurnal variations of stratospheric ozone measured by ground-based microwave remote sensing at the Mauna Loa NDACC site: measurement validation and GEOSCCM model comparison2014
Author(s)
Parrish, A., I. S. Boyd, G. E. Nedoluha, P. K. Bhartia, S. M. Frith, N. A. Kramarova, B. J. Connor, G. E. Bodeker, L. Froidevaux, M. Shiotani, and T. Sakazaki
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Journal Title
Atmos. Chem. Phys.
Volume: 14
Pages: 7255-7272
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Evaluating the diurnal cycle of upper tropospheric ice clouds in climate models using SMILES observations2014
Author(s)
Jiang, J., H. Su, C. Zhai, J. Shen, T. Wu, J. Zhang, J. Cole, K. Salzen, L. Donner, C. Seman, A. Del Genio, L. Nazarenko, J. Dufresne, M. Watanabe, C. Morcrette, T. Koshiro, H. Kawai, A. Gettelman, L. Millan, W. Read, N. Livesey, Y. Kasai, and M. Shiotani
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Journal Title
J. Atmos. Sci.
Volume: 72
Pages: 1022-1044
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Estimation of VSLS Bry from JEM/SMILES BrO Observation2014
Author(s)
Suzuki., M., N. Manago, C. Mitsuda, K. Imai, T. Sakazaki, H. Ozeki, Y. Naito, E. Nishimoto, T. Akamizu, C. Takahashi, T. Sano, D. Kinnison, and M. Shiotani
Organizer
AOGS 2014 11th Annual Meeting
Place of Presentation
Royton Sapporo Hotel, Sapporo, Japan
Year and Date
2014-07-28 – 2014-08-01
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[Presentation] JEM/SMILESからのVSLS Bryの推定(その2)2014
Author(s)
鈴木睦, 今井弘二, 佐野琢己, 眞子直弘, 光田千紘, 井上陽子, 尾関博之, 秋吉英治, D. Kinnison, 内藤陽子, 西本絵梨子, 塩谷雅人
Organizer
日本気象学会2014年春季大会
Place of Presentation
開港記念会館・情報文化センター(神奈川県・横浜市)
Year and Date
2014-05-21 – 2014-05-24
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