2013 Fiscal Year Annual Research Report
大気中重水濃度のモニタリング法の確立とファイトレメディエーション研究へのその応用
Project/Area Number |
25281010
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
谷 晃 静岡県立大学, 付置研究所, 准教授 (50240958)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 俊吾 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (20381452)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 重水 / 陽子移動反応質量分析計 / 蒸散 / 根の吸水 |
Research Abstract |
本研究は,陽子移動反応質量分析計(PTR-MS)を用いて,植物体内の水移動特性やファイトレメディエーション機能の動態を明らかにする. 今年度はまず、PTR-MSを用いて,大気中の重水濃度をリアルタイムモニタリングする手法を確立し、次いで根から吸収された重水の葉からの蒸散を測定し,植物体内の包括的な水移動速度を求める手法を確立した。 DHOの陽子移動反応時の生成物であるm/z 20と38のイオン量は、サンプル空気中の水蒸気濃度とドリフトチューブ内の反応エネルギーの影響を受けるため、独立変数として、①ドリフトチューブに印加する電圧(反応エネルギーを設定するため)、②サンプルガス中のDHO濃度、③サンプルガス中の水蒸気濃度、を取りあげ、測定条件の最適化を図った。サンプル空気中の湿度を変えるため露点発生器を用い、重水濃度はパーミエータ内に設置する重水を入れたガラス管の内径を変えることで調整した(内径大→蒸発量大)。ドリフトチューブの電圧はPTR-MSのオペレーションソフトを用いて、一般的な500 Vを挟むように、400 Vから600 Vまで50 V刻みで変化させた。 DHO由来のイオンであるm/z20のイオンカウント量はm/z38のそれの約10倍と感度がより高かった。両イオンともいずれの電圧条件でも、水蒸気濃度の影響を強く受けたため、他のイオンを同時測定する際、推奨される反応エネルギーである120 TDになるよう、電圧、ドリフトチューブの圧力と温度を設定することとした。 次に、この設定を用いて課題2に取り組み、水耕栽培のヒマワリで重水の蒸散をモニタリングした。3度の実験とも翌朝に重水由来イオン(m/z 20 or 38)が急に上昇しだした。夜間に吸い上げられ葉に達した重水が、朝に気孔が開くとともに蒸発された結果である。このように、今年度の実験によって、重水測定のためのPTR-MSの特徴づけができ、根から吸収された重水の葉からの放出のリアルタイム測定の手法を確立できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題とした研究項目を順調に実施し、満足のいく結果を得たため。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究課題通り、 2 根から吸収された重水の葉からの蒸散を測定し,植物体内の包括的な水移動速度を求める. 3 同時に経根有機物質の葉からの蒸発をPTR-MSでモニタリングすることで,植物体内の物質移動性を水の移動性を基準に比較する. さらに同位体質量分析計を用いることで, 4 13Cでラベルした有機物質を用いることで,植物体内の分配,代謝を定量的に評価する. を計画にそって実施する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の実験が順調に進み、うまくいかなかった場合の再実験に確保した消耗品費が余ったため。 次年度の実験で根から吸収させる13Cをベンゼン骨格に含むトルエンの購入に充てる。 これは1mLで10万円と高額であり、1mLは数回の実験で消費するため、複数のサンプルを購入する必要がある。 当初予算では実験回数が制限されたが、次年度へ繰り越すことで、実験に余裕がでる。
|