2015 Fiscal Year Annual Research Report
東海村臨界事故を踏まえた福島原発事故後の環境対策とまちづくりに関する総合的研究
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25281067
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
熊沢 紀之 茨城大学, 工学部, 准教授 (70137256)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蓮井 誠一郎 茨城大学, 人文学部, 教授 (00361288)
齊藤 充弘 福島工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (20353237)
田中 耕市 茨城大学, 人文学部, 准教授 (20372716)
原口 弥生 茨城大学, 人文学部, 教授 (20375356)
中田 潤 茨城大学, 人文学部, 教授 (40332548)
小原 規宏 茨城大学, 人文学部, 准教授 (40447214)
佐川 泰弘 茨城大学, 人文学部, 教授 (50311585)
井上 拓也 茨城大学, 人文学部, 教授 (70291284)
荒木田 岳 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (70313434)
渋谷 敦司 茨城大学, 人文学部, 教授 (90216028)
乾 康代 茨城大学, 教育学部, 教授 (90334002)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 除染技術開発 / ポリイオンコンプレックス / 福島原発事故 / 東海村 / 住民意識 / 広域避難 / 脱原発市民運動 / 科学技術政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
除染技術担当の熊沢は、放射性セシウムを吸着できるベントナイトと電荷をコントロールしたポリイオンコンプレックス(反対電荷を持った高分子が静電力によって自己集合したもの。)を用い、放射性セシウムの移行を抑制する技術を開発し、飯舘村にて実証試験とモデル実験の双方を行った。住民意識担当の渋谷は、「地域社会と原子力施設」のテーマで震災後5回目のアンケート調査を実施し、震災を挟んで5年間の原子力についての住民意識の変化を分析した。意識調査結果を福島原発事故前の2010 年度調査から5 年間の変化として総括すると、一方での日常的な不安意識の低減・後退と日常生活への回帰、他方での脱原発意識の定着化、とまとめることができある。原発事故の広域避難者の実態調査を担当する原口は、福島から茨城に避難してきている広域避難者への支援活動を継続しつつ、自主避難者、住民票不在の長期避難者の現状把握と政策的課題を明らかにする活動を、政策担当者らを招いた円卓会議の実施、長期避難者を負ったドキュメンタリー映画の上映会、フォーラム等として展開してきた。東海村における原発立地の歴史的経緯を都市計画論的に分析する研究分担者の齋藤と乾は、茨城県の原発立地地域の現状をドイツと比較するための海外調査を、ドイツ担当の中田と共に実施し、ルブミンにおける原発廃炉後のまちづくり、フライブルクにおけるまちづくり、フェルドハイム村の再生エネルギー事情について現地調査を行った。これら2015年度の調査研究の結果は、教養授業の「総合科目:原子力施設と地域社会」で学生に知らせ、学生とのディスカッションの討論材料とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
除染技術の開発は飯舘村での実証実験が予測通りの良好な結果を得ることができた。この技術は、効率の良い山林除染につながると考えられる。飯舘村もこの結果に注目しており、村役場に結果報告を行った。また、現地にて朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、共同通信、福島民報、NHKの取材を受けた。 東海村の住民をはじめとした東海第二原発立地・周辺自治体住民の意識変化について化、現状について把握してきている。地域政策の動向についても行政関係者との円卓会議は、計画通りアンケート調査を実施し、基本的なデータ得られている。また市民運動の展開については、茨城県内の各種市民運動グループと接触する中で問題意識、課題意識の変などを通じて行政サイドの問題意識、課題意識が把握できている。脱原発に舵を切ったドイツの状況についても、現地調査を実施する中で現状と課題が見えてきており、日本における脱原発のまちづくりの可能性について考察する上で参考になる海外事例が収集できつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
除染技術をさらに効率的に行えるように改良するとともに、今技術に基づいた除染活動を通して、地域経済を循環させるような政策を立案することが、今後の除染と地域の復興においては必要だと考えている。このような政策立案と住民意識調査とを関連させて推進したい。 住民意識の現状については今年度最後のアンケート調査を実施し、市民団体や地方議会議員への個別インタビューなども実施する予定である。東海村および周辺地域の住民(団体)、地方自治体の原子力関連政策、防災対策と比較することを意識して、福島県内の複数自治体の現状を追加調査する。また、これまでの研究を総まとめするため、「地域社会と原子力」というテーマに包括的にアプローチするための理論的枠組みを再度整理するための研究会を実施しつつ、一般市民、行政担当者と意見交換する機会も設けていく予定である。追加調査については、可能であれば米国の原発立地地域の補充調査も実施したい。
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