2013 Fiscal Year Annual Research Report
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25282045
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Shonan Institute of Technology |
Principal Investigator |
水町 龍一 湘南工科大学, 工学部, 准教授 (50157517)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川添 充 大阪府立大学, 総合教育研究機構, 教授 (10295735)
小松川 浩 千歳科学技術大学, 光科学部, 教授 (10305956)
椋本 洋 立命館大学, 理工学部, 講師 (80351328)
五島 譲司 新潟大学, 教育・学生支援機構, 准教授 (90360205)
西 誠 金沢工業大学, 基礎教育部, 教授 (00189250)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 数学的リテラシー / 大学教育 / 評価基準 / 高大移行 / 教育接続 / 数学教育 |
Research Abstract |
主要な研究成果は2014年1月10日・11日に国際研究集会「高水準の数学的リテラシー教育と高大の接続・移行」を開催したことである。この会では水町が大学入学者の現状についての報告と問題提起を行い,海外の著名な数学教育学者2名,国内の代表的な数学教育学者2名と統計学研究者1名がそれぞれの立場から意見を述べた。また,分担研究者4名を含む13名の国内研究者が,教育実例の報告や提案を行った。他に3件のポスター発表で教材の提案を行った。予稿集を基に報告集の出版を準備している。 内容的には,数学的リテラシーとは高い水準の内容も含むことをOECDの定義や報告に基づいて明らかにした上,世界共通に抱える大学新入生の教育移行への対応を念頭に「実データに基づく統計教育」や各種実例教育報告による教育の進め方の交流,教養・専門基礎教育など教育改革に関する諸提案,「数学活用力の評価」に関する議論など,多方面から数学的リテラシー教育について議論を行った。結果として,数学リテラシー教育の概念枠組みの明確化が大きな意義を持つ研究課題であること,研究には多様な教育実践をさらに進め方法に関する様々な問題を解明しつつ行う必要があることが明らかになった。なお,当初の目指した数学的モデリングを数学教育に関する多面的なニーズに応えて発展整理したものが大学水準の数学的リテラシー教育である。 なお,2013年に3件の学会発表を行ない研究集会の準備とし,2014年3月に京都大学の大学教育研究フォーラムでワークショップを行って教育実践の方向性を探求した。 他の研究成果として,企業が求める数学教育についてアンケート調査を行った。2000社以上を対象としたが回答は87社にとどまった。しかし,営業や経営の深い文脈における数量化の能力が求められているなど,分析のための貴重な資料となっている。この件では1件の学会発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究成果」で述べたように,数理科学専門分野以外での大学数学教育に関して教育の改革を図るには「大学水準での数学リテラシー教育」がキーワードとなること,従ってその概念・内容・方法・評価の基準が明らかにされねばならないことを確認した。「高大の移行時の数学的思考力等の諸概念」に関する研究は文字通り「世界的関心」に応える方向で研究を推進しつつあるといえ,進展は予想以上である。研究集会で多数の発表を行ったように教材案作成も順調である。反面,多数の文献を精査しての概念的な整理構築が重要な研究課題になったため,アセスメントの準備と実施は延期せざるを得なくなった。また企業他のステークホルダー調査に着手したが回答数が必ずしも十分でなく,再度の調査が必要になる。重要課題である評価規準の作成は,仮のものを作成し研究組織内部で研究や教材開発の参考にしているが,教育的概念枠組みの変更(モデリングからリテラシーへ)による転換が必要となる。評価基準の作成には実践に基づく経緯等を予定しており,予定通りの進行と考えられる。 以上を第1年次で予期した進展と比較して数値化すれば,I評価基準の作成(企業などの調査含む):70%,IIアセスメント準備:20%,III教材作成と教育実施の準備:100%,IV研究集会の開催(国際水準での概念的研究含む):100%以上,と見積もることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年度は,重要課題に浮上した「大学水準の数学的リテラシー教育」に関する概念的研究を最重要課題とし,ある程度これにより,学生に期待される能力についても一定の結論を下し,評価規準を一応完成させる。まとまった成果を得ることを目指す。平行して教育開発(教材開発,授業実施)を続ける。開発は工学系を主とする理工系と広く文系に負けて行う。工学系では,数理工統合教育および国際的エンジニア資格1次試験であるFE試験受験準備コースを設定する。文系では,個人・職業・市民それぞれの立場で求められる数学的リテラシーの内容を探ることから始める。これらにより,学生に期待される諸能力について一定の結論を下し,評価規準を改訂しアセスメント作成の基準となる程度に完成させる。また,教育の普及とアセスメント準備を兼ねて,教材のICT化にも本年後後半以降に取り組む。評価基準の改定とアセスメントツール(テスト問題,質問紙)は教育開発と並行して進め,第2年度末にまとめる。2015年1月に研究集会を開き,研究会外部の識者と意見交換を図りつつ,研究の中間まとめをおこない来年度実施予定のアセスメントに備える。 第3年度は,初年次生用と高年次用の2種類のアセスメント実施に力を注ぐ。企業等ステークホルダーの意見調査も行う。教材開発・授業実施の教育開発も続行しなるべく多くの教材が成果として提示できるように努める。2016年1月を目途,総括的な報告を行う研究集会を開催し,大学水準の数学的リテラシーに関する概念的研究の成果,企業などの数学教育への期待のまとめ,開発された教材の提示と解説,教育経験の報告,アセスメントの結果分析の概略などを行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画では,アセスメント準備の打ち合わせと物品購入を行う予定であったが,アセスメント実施を1年延期したため準備打ち合わせも1年延期した。また,昨年度実施した研究集会に海外から招待講演者2名を招いたのでアセスメント用の物品購入を断念し,旅費に充てたが,差額が生じた。なお,アセスメントは手持ちのスキャナーと自主開発のソフトウェアを使用して行う計画を立てている。 全額を打ち合わせ旅費に使用する。
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Research Products
(3 results)