2014 Fiscal Year Annual Research Report
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25282045
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Research Institution | Shonan Institute of Technology |
Principal Investigator |
水町 龍一 湘南工科大学, 工学部, 准教授 (50157517)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西 誠 金沢工業大学, 基礎教育部, 教授 (00189250)
川添 充 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 教授 (10295735)
小松川 浩 千歳科学技術大学, 光科学部, 教授 (10305956)
五島 譲司 新潟大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (90360205)
羽田野 袈裟義 山口大学, 理工学研究科, 教授 (70112307)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 数学的リテラシー / エピステモロジー / プラクセオロジー / 価値 / 文脈 / 態度 / 能動的学習 / コンピテンシー |
Outline of Annual Research Achievements |
25年度に行った国際研究集会の総括から既存の方針を変更し,まず数学的リテラシー教育の概念枠組みを入念に作り,これに準拠した教材開発,教育実践,学習成果の評価を行なうことにした。これに伴い大規模アセスメントは中止した。 概念枠組は,PISAの定義等も参照し,以下の通りとした。①文脈,知識,能力,態度,価値を教育の要素として定め,これらの間に緊密な関係が成り立つよう教材を作成する。②学生の既有知識で理解できる問いを中心に授業を設計し,反転学習やアクティブ・ラーニングも適宜組み入れて,知識の獲得と定着,能力の育成,態度の向上,価値の実感と内面化に結びつくようにする。③能力・態度・価値からなる抽象性の高いルーブリックを作成し,これを参照して実際の授業用に5要素全てを持つルーブリックを個別に作成し学習成果の評価を行う。以上により,認知的要素と非認知的要素を文脈に応じて動員し問題を解決する能力,いわゆるコンピテンシーの形成を目指すことが大学水準の数学的リテラシーの教育ということになる。 ①,②について初歩的な教材作成と授業実践を行った。科目は微分積分学と数理工統合科目,線形代数,社会・人間に関わる数学活動を題材とする科目等である。これにより,向かう方向の適切さを確認している。③については抽象的ルーブリックを作成し27年度の教育実践で使用できるようにした。 ①,②の細目に触れる。知識についてはArtigue のいうエピステモロジーを生かして構成する。価値については,既存研究を反映した6項目の価値を同定した。学習態度,特に自発的・自律的な態度の形成を促すものとして,同じく人間学理論特にプラクセオロジーの考え方を採用し,学生にとって理解が容易で主体的な参加を可能にし,しかも数学的概念への洞察が得られるタスクを用意する。作成中の教材ではこれらを反映させている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
方針を変更し大規模アセスメントを中止したので,全体としてはやや遅れている面がある。しかし,実際には,昨年行った方針転換により,質的に高い教育研究に取り組んでいる。 第1に,25年度に国際研究集会を開催して,国際的な視野で問題を眺めることが出来た。第2に,数学的リテラシーという国際的に標準の枠組みで実践的な教育研究を行い,著名な数学教育研究者の助言と支持を得ている。さらに,「大学水準でのリテラシー」という新概念について,枠組みの構成とそれに依拠した教材の作成・実施・評価を進めることができるようになった。新しい理論的枠組みによる大学教育研究に着手している。とりわけ,エピステモロジーやプラクセオロジーに注目した教育実践を,線形代数や微分積分学のコースで,しかも新しいテーマ(知識内容)で取り組んでおり,成果が期待できる。第3に,反転学習,アクティブ・ラーニング,グループ学習といった要素を取り入れており,大学における数学教育の広範な領域で,中教審答申にもある「質的転換」に同期する研究開発となっている。第4に,抽象的ルーブリックと実践ルーブリックの2重作成による評価システムは,AAC&U の VALUE RUBLIC の方式に通じるものがあり,国内に於いて高い普遍性を持つ評価システムの先駆けとなる可能性がある。第5に,初めに取り組んだ,現実的な文脈をもつ大学数学教育の教材つくりについては,九州大学マス・フォア・インダストリ研究所の協力を得て,粘菌モデルの数理,実データによる統計教育の2テーマについて既に成果を挙げている。このほか,ステークホルダー調査については25年度に一部実施,27年度にも実施を予定しており,やや遅れた面はあるが,研究全体の進展を反映させた問いかけを予定しており,質的には予定より高いものになると想定される。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の方策で研究最終年度に臨む。 第1に,数学的リテラシー教育の概念枠組みをさらに洗練させるとともに,教材開発や授業実践から改善・発展の方向性を探る。この点では,今後国際的な舞台で真価を問う必要があり,国際学会での発表や寄稿を検討している。ただし発表自体は研究期間中には行い得ない見込みである。また,2014年度の中教審「一体改革」答申で示された方向性との関係性など,大学教育改革全般との関係についても検討を深め発表などを行う。 第2に,理工系,文系(社会現象や人間活動に関わる数学)対象の教材開発と教育実践を着実に進める。未実践のものを含めれば教材は,理系4ないし5コース,社会及び人間活動に関わるものが4~5個以上となることを期している。これらは,公開される。 第3に,ルーブリックによる評価方法を構築し,評価の実践を試みる。 第4に,総括的な研究集会を年度末に行い,海外との交流を深め,研究全体のまとめ・報告を行う。
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Causes of Carryover |
研究計画の変更に伴い,大規模アセスメントを中止し,ステークホルダー調査も延期したので費用が浮いた。 また,最終年度の研究打ち合わせ・最終研究報告会に使用の為,諸費用を節約した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ステークホルダー調査は2015年秋に実施する予定で,300,000円程の支出を見込む。 また,最終研究報告会は,海外からの招待者に要する費用を含め,100万円程の支出を見込む。
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Research Products
(16 results)