2013 Fiscal Year Annual Research Report
脳卒中患者の予後予測~拡散テンソル法FA値を用いた数式モデルの構築~
Project/Area Number |
25282168
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
小山 哲男 兵庫医科大学, 医学部, 特別招聘教授 (40538237)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
道免 和久 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (50207685)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 脳卒中 / 予後予測 / 画像診断 |
Research Abstract |
脳卒中は罹患患者が多く、また手足の麻痺等の後遺症を残すことが多い。平成22年度調査では要介護状態の原因疾患の1位を占める。これら患者の機能の改善のためにリハビリテーションが行われる。効率的で効果の高いリハビリテーションを行うために、個々の脳卒中患者について、どの程度の回復が見込めるのか見当をつけておくこと(予後予測)が必要である。従来の予後予測の方法は麻痺等の症状の程度や年齢により行うものがほとんどである。近年の脳神経画像、とりわけ核磁気共鳴画像(MRI)の発展は目覚ましい。本研究の目的は、(1)発症2-3週程度に撮像されたMRI拡散テンソル法(DTI)データと長期予後の関係を調べること、(2)DTIデータ以外で長期予後に影響を与える要因(患者の栄養状態、年齢、合併症など)を検討すること、(3)それらを組み合わせて従来より正確な脳卒中患者の予後予測方法を確立すること、の3点である。 本研究では、脳卒中患者を多く診療する市中病院にて急性期(発症約2-3週)にDTIを撮像する。同時期に体組成測定装置や酸素代謝計を用いて、栄養状態に関する評価を行う。さらに診療記録より年齢や合併症他の臨床データを採集する。その後、数ヶ月にわたって片麻痺や日常生活動作自立度等の臨床所見の症状を記録する。DTIデータ、患者の栄養状態、年齢、合併症を主要な説明変数、症状を目的変数とした統計的解析を行う。 解析においてDTIデータより神経変性(Waller変性)の指標とされるFractional anisotropy(FA)値を計算する。FA脳画像の解析の関心領域を皮質脊髄路とし、FA値と症状の関係を検討する。次に年齢、栄養状態、合併症等を変数として加えて、多変量解析を行う。さらに非線形モデル等の新しい手法を用い、最適なモデルを選択する。このように臨床的に有用な新しい予後予測モデルを作成する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【研究環境の構築】平成25年度、脳画像のデータ解析について、計算処理が速い最新のポータブル・コンピュータを導入した。そこに簡易なプログラミングを組み込み、半自動化された解析システムの構築を行った。この手法により1症例あたりFA脳画像の生成に要する時間は15分程度である。これにより多忙な臨床の現場にても機動性の高い、効率的な解析が可能となった。この手法を脳卒中以外で高齢者に多い中枢神経疾患のひとつである正常圧水頭症に応用し、その臨床的有用性を確認した(Koyama et al. Neurol Med Chir (Tokyo), 2013)。また栄養状態の評価について、体組成計測装置と酸素代謝計を導入し、多忙な臨床現場にても現場の医療スタッフの負担の少ない計測スケジュールを考案(例:発症翌日、第3病日、約1週間後の計測)、データ収集を開始している。このように平成25年度末までに、基本的な研究環境の構築が達成されている。 【データ収集】平成25年度中、約50例の脳卒中患者についてDTIと症状のデータの収集が行われている。DTIおよび栄養状態等についてのデータ採取はとくに大きな問題はなく、順調に行われている。 【研究成果の公表】研究計画全体のなかで、可能な部分について段階的に論文化することに取り組んでいる。脳梗塞例のうち、長期のリハビリテーション入院加療(回復期病棟等)を必要とした症例に関して、片麻痺症状および日常生活自立度とFA値の相関関係を英文論文にまとめ、平成25年度末までに投稿、査読中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、さらに脳卒中症例を集め、データ収集を続ける。研究代表者らのこれまでの研究の知見より、脳出血例と脳梗塞例では、FA値低下で示される神経変性の時間経過や程度が相違することが考察されている(Koyama et al. J Stroke Cerebrovasc Dis, 2013)。これより脳出血例と脳梗塞例について別個に解析を行うことを予定している。平成26年度には、脳出血例においてDTI-FA値と長期予後(症状)の関係を解析し、研究全体の中間的な成果として英語論文にまとめ、学術雑誌に投稿する予定である。一連の研究のデータ収集は平成27年度の夏頃までを予定している。この段階で栄養状態、年齢、合併症等のデータを説明変数に加えた多変量解析を行う。これによりそれぞれの説明変数の大凡の重み付けを考案する。さらに必要に応じて非線形モデル等の新しい統計手法を用いた解析を行う。従来の脳卒中患者の予後予測は、主に急性期の麻痺等の症状や年齢によるものがほとんどである。今回の研究はDTI-FA値、栄養状態、年齢、合併症を説明変数として、従来の予後予測方法よりも精度の高い予後予測法を開発するものである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度はデータ収集が順調であったため、人的資源をデータ解析や論文作成に集中した。そのため、年度当初に計画していた学会発表や学術情報収集を次年度以降に行うこととした。このような事由で次年度使用額が生じているが、研究計画の遂行に問題はない。 年度当初に計画していた学会発表や学術情報収集を次年度以降に行うこととした。次年度に学会旅費等に使用する計画である。
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Research Products
(2 results)