2015 Fiscal Year Annual Research Report
生物資源のエコ・アイコン化と生態資源の観光資源化をめぐるポリティクス
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25283008
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
赤嶺 淳 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (90336701)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長津 一史 東洋大学, 社会学部, 准教授 (20324676)
安田 章人 九州大学, 基幹教育院, 助教 (40570370)
落合 雪野 龍谷大学, 農学部, 教授 (50347077)
浜本 篤史 名古屋市立大学, 人間文化研究科, 准教授 (80457928)
岩井 雪乃 早稲田大学, 平山郁夫記念ボランティアセンター, 准教授 (80507096)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 害獣被害 / 食環境 / 観光開発 / 認証制度 / 地域おこし |
Outline of Annual Research Achievements |
メンバー個人によるフィールドワークに加え、2016年1月に福岡市において猪の害獣駆除についての共同調査を実施し、野生生物の管理と地域社会の関係性のあり方について、害獣駆除にかかわる関係者らと意見交換をおこなった。これは、本研究が目指す、利害関係者間対話の一事例でもある。研究代表者の赤嶺淳は、気仙沼市においてサメ産業関係者らの個人史を採集し、同産業の拡大の要因を同市の基幹産業であるマグロ類の水揚げ減少傾向とあわせて理解した。また、世界有数のヨシキリザメの水揚げをほこるスペインのビゴ(Vigo)において、現地のサメ漁業関係者とサメ漁業の実態ならびに反フカヒレ・キャンペーンに関する実態調査を実施した。そしてフカヒレの主要な消費地である香港においてフカヒレ産業関係者がいだくフカヒレ産業の展望についてのヒアリングを実施し、サメ資源の持続可能性を証明する「認証」制度の必要性を確認した。長津一史は、インドネシアのスラウェシ島周辺における観光開発とサンゴ礁利用の変遷過程をバジャウ人らの漁業形態の変化を通じて明らかにした。落合雪野は、ラオスのルアンプラバン地域における染織産業における認証制度の動向を、町おこしとの関係性において捉えなおした。岩井雪乃は、タンザニアにおいて「害獣としてのアフリカゾウ」が、どのように地域の人びとに捉えられているかを、密猟についての住民意識とあわせてヒアリングを実施した。安田章人は、南アフリカ共和国における白人資本のスポーツハンティングのフィールドワークをおこない、西アフリカのカメルーンにおけるスポーツハンティングと比較し、「地域社会のコミットメント」の濃淡の差異を指摘した。浜本篤史は、タイのチェンマイにおける外国人観光客の行動についてのフィールドワークを実施し、中国人観光客の差異に注目しながら、中国人観光客がもとめる「自然」観光やエコ・ツアーについて明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各自のフィールドワークが、当初の予定どおり、日本、スペイン、インドネシア、タイ、南アフリカ共和国、タンザニアを中心に問題なく実施されている。そのことは予算の執行状況からもうかがうことができる。そのほとんどが旅費に使用され、図書購入(物品費)がそれに次いでいるように、フィールドワークを重視した計画通りに推進されている。平成27年度は、4年計画の3年目ということで、平成27年5月に東京都(早稲田大学)で過去2年間の調査研究の成果を議論するとともに、最終年度となる平成28年度にスムーズに移行できるよう、平成28年1月に福岡市(九州大学)で研究会を開催し、最終報告の出版計画について議論し、平成28年度内の原稿とりまとめについて申し合わせをおこなった。そして福岡市で猪を中心とした害獣駆除に取り組む人びとと交流をはかり、野生生物と地域社会の関係性の変遷について参与観察と意見交換をおこなうことができたことは、各地域で調査研究をおこなってきた者による共同研究ならではの会合となり、参加者の満足度も高いものとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
4年計画の最終年度である平成28年度は、過去3年間に各自がおこなってきた調査結果のとりまとめをおこなうための研究会を平成28年7月末に一橋大学で開催する。本科研のひとつの柱に、野生生物/環境保全と観光振興についてのことなる複数の利害関係者(stakeholders)間の多元的対話(ISD: Inter-Stakeholders Dialogue)を促進することがある。これまでも各自が調査現場で実践してきたが、最終年度の実践として、研究分担者の落合雪野がかかわってきたルアンプラバーン(ラオス)において、伝統的織物技術の継承、繊維植物や染料植物の保全と栽培、エスニック・ツーリズム振興に関するさまざまなコンフリクトを乗り越えるためのISDを平成28年11月初旬に現地工芸組合・博物館の協力のもと開催する。研究代表者・研究分担者が他地域で実践してきた経験をもとにルアンプラバーンにおいて共同調査を実施し、また各地域の調査事例をルアンプラバーンの事例と比較検討し、ルアンプラバーンでのISDの実践とする。本研究の最終成果の出版にむけた研究会を平成29年1月末に九州大学で開催し、各自の原稿の読み合わせと批判的検討を実施する。最終成果執筆のための補充調査を、赤嶺はフィリピンにおける板鰓類の利用、長津一史はインドネシアにおけるハタ類利用、岩井雪乃はタンザニアにおけるアフリカゾウ保全、安田章人は南アフリカにおけるスポーツハンティング、浜本篤史は東南アジアにおける中国人観光客の自然観について実施する。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた書籍(洋書)が、国内在庫がなく、海外からの取り寄せに時間がかかり、平成27年度内の納品に間に合わなかったため、3937円の残金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度から繰り越した3937円については、その分の書籍はすでに発注しており、問題ない。それ以外の平成28年度に予定している予算の執行は、フィールドワークを中心に計画どおりに進め、適宜、適切に執行する。
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Research Products
(20 results)