2014 Fiscal Year Annual Research Report
多角的視座からの「感情」現象の哲学的解明を通じた価値倫理学の新たな基礎づけの試み
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25284002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古荘 真敬 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (20346571)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野矢 茂樹 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (50198636)
信原 幸弘 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (10180770)
高橋 哲哉 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (60171500)
梶谷 真司 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (50365920)
石原 孝二 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (30291991)
原 和之 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (00293118)
山本 芳久 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (50375599)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 感情 / 情動 / 価値 / 倫理 / 現象学 / 西洋思想史 / 心の哲学 / 精神分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目に当たる平成26年度は、25年度に着手された共同研究をさらに深化させながら、人間の規範的価値認識にとって「感情」の果たす役割について、各分野の見地から多角的に検討された。 まず現象学的感情論の分野においては、ハイデガーの情態性論の意義が、世界内存在の「当事者的コミットメント」という鍵概念のもと独自に解釈され、現存在の自己感情のうちに胚胎する原・規範的な「自己所有」ともいうべき事態についての検討が加えられた。また、ハイデガーの精神医学理解の妥当性が再検討されるとともに、独自の仕方で、「雰囲気」の異他性と民俗文化との関係についての現象学的な検討が加えられもした。 また、心の哲学の分野における近年の「情動」論の研究動向がサーベイされるとともに、精神分析学の分野では、フロイト=ラカンにおける「不安」論を構造論的に再解釈する道筋が提示され、現象学分野の研究分担者の考察にとっても有意義な示唆が与えられ、活発な議論がなされはじめている。 そして、さらに「感情」概念の思想史研究の分野においては、「神」という超越者にとっての「感情」の意味という観点からの非常に豊かな研究報告がなされ、本研究プロジェクトが、今後、自己の規範意識の根底に潜む「宗教性」の問題にアプローチしていこうとする際の重要なヒントが得られた。同時にまた、国家ならびに、そこからの離脱を志向する政治運動の根底にもある情動の構造について、興味深い研究が報告され、規範的価値認識の感情的な具体相についての理解が、一層深められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現象学、心の哲学、精神分析学、中世哲学史、それぞれの分野において、昨年度以上に豊かな研究成果が次々と生まれた。各研究分担者が、順調な研究活動を継続していることが明らかである。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は、各研究分担者によって豊かな研究成果の蓄積が見られたので、27年度においては、これらについての相互批評ならびに共同討議に一層力を入れ、これをきっかけにして、さらなる共同研究を強力に推進したいと考えている。
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Causes of Carryover |
計画していた海外出張が一件、国内出張が一件、公務とのスケジュール調整に問題が生じたためにキャンセルされた。また、購入予定であった書籍も一部、絶版であることが知らされたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
公務との調整を再度慎重に行いながら、研究調査出張の計画を立て直し、新年度において、所期の出張における調査目標を達成することにする。また、昨年度入手できなかった研究資料について、図書館司書の方とも相談して、新たな入手ルートを検討し、判明し次第、繰越金をその入手に充てる。
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Research Products
(23 results)