2015 Fiscal Year Annual Research Report
多角的視座からの「感情」現象の哲学的解明を通じた価値倫理学の新たな基礎づけの試み
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25284002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古荘 真敬 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (20346571)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野矢 茂樹 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (50198636)
信原 幸弘 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (10180770)
高橋 哲哉 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (60171500)
梶谷 真司 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (50365920)
石原 孝二 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (30291991)
原 和之 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (00293118)
山本 芳久 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (50375599)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 感情 / 価値 / 倫理 / 道徳 / 宗教 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、過去2年間の研究成果を踏まえつつ「新たな価値倫理学の基礎づけ」という本共同研究の目標を再確認しながら、道徳と宗教の生成における感情現象の意義あるいは位置価をめぐる考察が、各研究分担者において進められた。 研究分担者の信原幸弘が、いわゆる道徳的な情動がそもそもいかなる意味において道徳的であるのかを批判的に再検討することを試みる一方、同じく分担者の山本芳久は、キリスト教神学創成期のテクストを再検討しながら、エロース、アガペー、カリタスといった根源的な情動概念の意味を哲学的に明確化することを試みた。これらの展開に応答しながら研究代表者の古荘真敬は、感情現象の「当事者性」という特徴が世界理解の言語性と如何に連関しうるかを考察すべく、自身の専攻領域においてハイデガーとアンリの感情論を批判的に対照させることを試みたが、これはまた、感情現象と人間の「共同性」との連関について再検討する課題へと連繋していき、その視座から信原や山本の研究との提携が再編されつつある。 感情と言語の連関をめぐる古荘の考察はまた、分担者の原和之による独特の三島・ラカン論と交錯しつつ、感情的な生にとっての「救い」を考察することにもつながり、本研究課題が、次には「宗教性の根源」をめぐる共同研究へと展開すべきことを示唆している。この点に関しては、キリスト教における「犠牲」の論理を批判的に問い直す分担者の高橋哲哉の研究との突き合わせが、さらに新たな考察を着想させつつある。 また、共通感覚、感情、精神障害の関係を「身体化された心」の観点から論じていこうとする分担者の石原孝二の研究展開は、空間・身体・意味をめぐる数年来の思索を新著『心という難問』にまとめた分担者の野矢茂樹の探究とシンクロしながら、価値的認知としての感情現象の振れ幅を、精神医学の観点からもさらに深く共同検討すべき課題を提示することになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は「新たな価値倫理学の基礎づけ」という本共同研究の目標と、これまでの成果との距離をあらためて確認しながら、道徳と宗教の生成における感情現象の意義をめぐる考察が各研究分担者において強力に推進され、大変豊かな成果を収めることができた。そのかぎりにおいては順調であったが、互いの研究成果の突き合わせを通じた創造的な展開という点では、必ずしも満足することができなかった。この欠を補うため、代表者の古荘と分担者の信原、山本は、28年度秋期に、共同でワークショップ「情動の哲学」を企画準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
代表者の古荘は、分担者の信原、山本と共同して、来る10月29日に哲学会大会にて開催予定のワークショップ「情動の哲学」を準備中であり、ここにおいて本科研費共同研究の成果をさらに練り上げたかたちで発表すべく、5月後半以降、互いの研究成果の相互検討の作業に移る予定である。 このワークショップをもって本共同研究全体のさしあたりの総括としたいが、メンバー全員が同じ大学の同じキャンパスに勤務している利点を最大限に生かしながら、さらにその後も折にふれ研究交流を継続していく予定である。その際、本研究課題において最終的に示唆されることになった「宗教性」の問題系が、各自の研究関心の収斂点のひとつとなりうると思われるので、その分野でのさらなる共同研究展開の可能性を模索していきたい。
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Causes of Carryover |
研究代表者の古荘真敬と研究分担者の信原幸弘、山本芳久の3名が参加して本研究課題の総括を行う学会ワークショップの開催が平成28年10月に繰り延べになったことため。本共同研究全体を期間延長し、より時間をかけて精緻な仕方でこれまでの互いの研究成果を突き合わせ検討し直した方が、豊かな成果を期待できると判断された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究課題の展開に必要な研究図書の購入をさらに継続し、研究調査ないし打ち合わせのための国内出張も予定している。
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Research Products
(19 results)