2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25284120
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
柳原 敏昭 東北大学, 文学研究科, 教授 (30230270)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
誉田 慶信 岩手県立大学盛岡短期大学部, その他部局等, 教授 (00310144)
七海 雅人 東北学院大学, 文学部, 教授 (00405888)
狭川 真一 公益財団法人元興寺文化財研究所, その他部局等, 研究員 (30321946)
入間田 宣夫 東北大学, 東北アジア研究センター, 名誉教授 (40004048)
菅野 文夫 岩手大学, 教育学部, 教授 (40186177)
堀 裕 東北大学, 文学研究科, 准教授 (50310769)
佐藤 健治 東北芸術工科大学, 芸術学部, 准教授 (50343025)
齊藤 利男 弘前大学, 教育学部, 教授 (90162213)
山口 博之 公益財団法人元興寺文化財研究所, その他部局等, 研究員 (90470278)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 中尊寺文書 / 宇隆1遺跡 / 常滑焼 / 平泉型宝塔 |
Outline of Annual Research Achievements |
文献班・考古班・石造物班の3研究班を設けているので、各々について述べる。 【文献班】9月12~15日および10月25・26日に、中尊寺において、同寺所蔵文書の調査を実施した。全約90点について写真撮影を行うとともに、旧来の翻刻の補訂、法量測定、異筆・追筆の確認等々、考えられる限りの情報を収集し、調書を作成した。なお、12月14日に、中尊寺にて報告会を開き、成果の一部を還元した。 【考古班】10月2~5日に、北海道勇払郡厚真町宇隆1遺跡で、本プロジェクトを主体として発掘調査を実施した。本遺跡では、1959年に常滑壷が発見されており、平泉と北海道との交易の実態を解明するため、再調査を行い、遺構が遺存しているかどうかを確認する必要があった。結果、3度の公民館建設によって、遺構は削平され、遺存していないことがわかった。 【石造物班】11月8日・9日に岩手県南部から宮城県北部に分布する板碑や石塔の調査を実施した。宮城県金成町有壁五輪沢経塚では礫積の塚上に平泉型宝塔が立ち、造立当初に近い姿を留めている可能性が考えられた(平泉型宝塔の南限)。また、一関市最明寺にも平泉型宝塔を確認した(岩手県最南)。また、金成町炭焼藤太夫婦墓所在の石塔は、凝灰岩製の三重塔に復原できるもので、12世紀末から13世紀前半頃の資料と判断された。いずれも来年度以降、詳細な調査を行う価値があるものである。このほか平泉観自在王院出土の石造露盤の実測調査を行った。 以上に加え、本プロジェクトが関わって、次のような研究会を開催し、成果を報告した。①12月9日 経塚研究会「アジア社会における日本経塚信仰の成立と展開をめぐって」(共催):研究分担者が司会、研究協力者3名が報告者・コメンテーターを務めた。②2月21日「鎌倉かわらけ検討会」(共催):研究協力者2名が報告者、1名が討論司会を務めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前項目同様、研究班ごとに記す。 【文献班】本プロジェクトの眼目であった中尊寺文書(重要文化財指定)の全点撮影と調査を終了させることができたのは一つの達成である。寺外に対しては約50年ぶりの公開であり、多くの新知見を得ることができた。中尊寺とは良好な関係を築けており、来年度以降も協力を得ながら調査を進めることが可能になっている。 【考古班】北海道厚真町における発掘調査は、期待していた12世紀の遺構・遺物を検出することはできなかった。しかし、いずれかの時点において必要だった発掘調査であり、実施したこと自体に大きな意味がある。厚真町および同町教育委員会とは良好な関係を築けており、来年度以降も協力を得ながら調査を進めることが可能になっている。 【石造物班】平泉に関連する石造物調査は、緒に就いたばかりであり、本プロジェクトは開拓的役割を担っていると言える。したがって当面は、分布等概要をつかむことが目的となっている。この面では十分な成果があがっていると評価できる。 このほか、主催・共催した成果報告会・研究会で、本プロジェクトのメンバーが研究報告を行っている。調査と成果発信をバランス良く行えているといえる。ただ、活動の割に予算が乏少で、研究分担者・研究協力者全員が一堂に会する機会を設けることができなかった(メール会議等で補っている)。また、ホームページの開設も同じ理由であきらめざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進捗しているので、大きな計画変更はない。以下、各研究班ごとに述べる。 【文献班】来年度は、平泉藤原氏時代に中国からもたらされた貴重な経典である中尊寺所蔵の宋版一切経の調査を行う。すでに中尊寺には申請を行い、内諾を得ている。刊記、角筆の有無等を調査する。時期は9月下旬を予定している。これに先立ち、5月に予備調査も実施する。プロジェクトメンバーだけでは、経典という特殊資料を扱うことに十分でないことから、美術史等の研究者の協力も得ることとなっている。このほか「平泉関係文献史料集成」の準備も進める。 【考古班】「平泉関係考古資料集成」の作成に向け、資料収集および調査を行う。具体的には、北海道にてこれまで発掘されている考古遺物を再検証し、平泉藤原氏あるいはその前後の時代の本州島との交流を示す資料を見いだしたい。 【石造物班】これまでの調査で重要であると判断された石造物について、計測、拓本作成など詳細調査を行う。具体的には宮城県金成町有壁五輪沢経塚、同町炭焼藤太夫婦墓所在の石塔、岩手県一関市最明寺平泉型宝塔などである。また、継続して平泉周辺に分布する石塔の実態把握を行う。 以上に加え、来年度は、研究成果を一般に還元するために10月9~11日の日程で、北海道勇払郡厚真町で開催される厚真シンポジウム「遺跡が語るアイヌ文化の成立―11~14世紀の北海道と本州島―」を本プロジェクトとして共催し、研究代表者、研究分担者、研究協力者多数が、平泉と北海道・アイヌ文化との関係について報告を行う。
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Research Products
(24 results)