2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25284120
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
柳原 敏昭 東北大学, 文学研究科, 教授 (30230270)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
七海 雅人 東北学院大学, 文学部, 教授 (00405888)
狭川 真一 公益財団法人元興寺文化財研究所, その他部局等, 研究員 (30321946)
入間田 宣夫 東北大学, 東北アジア研究センター, 名誉教授 (40004048)
菅野 文夫 岩手大学, 教育学部, 教授 (40186177)
堀 裕 東北大学, 文学研究科, 准教授 (50310769)
山口 博之 公益財団法人元興寺文化財研究所, その他部局等, 研究員 (90470278)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 平泉 / 平泉藤原氏 / 中尊寺文書 / 経塚 / 石造物 |
Outline of Annual Research Achievements |
文献班・考古班・石造物班の3研究班を設けているので、各々について述べる。 【文献班】1月20日~22日にかけて中尊寺において調査・撮影を実施した。中心は、2枚の骨寺村絵図(いわゆる詳細絵図と簡略絵図)であった。両図とも、異筆部分が数多くあるため、それらを厳密に腑分けすることにつとめ、絵図の制作過程を考える上で不可欠な情報を多数収集することができた。あわせて骨寺絵図紙背写、中尊寺境内朱引絵図、伝教大師御真影も調査した。このほか、「平泉関係文献史料集成」の準備も鋭意進めた。 【考古班】10月7~10日に、平泉藤原氏が造営に関わっていたと想定される岩手県奥州市寺ノ上経塚2号経塚の発掘調査を行った。塚は、径8mと大きいが、盛り土は緻密ではなく、石室や利器もなかった。また壷の3割程度が地上に出るという埋納方法にも特異性が認められた。これらは、奥州藤原氏が中央の文化を咀嚼して実践していった証左と考えられる。本調査については、『寺ノ上経塚発掘調査報告書』を印刷・刊行した。 【石造物班】6月26・27日に、福島県会津地方と中通り地方で関連遺跡の調査を行った。会津では磐梯町慧日寺層塔の調査を行い、過去に報告されている写真測量図を元に詳細な記録と加筆作業を実施した。また、玉川村岩法寺の五輪塔は平安時代の銘がある塔で、これも過去の実測図の点検と加筆を実施した。また、3月17日には一関市涌津八幡で鉄五輪塔の予備調査を行い、翌18日には石造物班の会議を実施し、大乗院石造露盤の実測調査も実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前項同様、研究班ごとに記す。 【文献班】2016年度に調査を行った骨寺村絵図は、中世荘園絵図として大変著名なものである、それを実見の上、詳細に調査したことには大きな意味がある。この調査を含め、この4年間で中尊寺讃衡蔵に保管されている中尊寺文書の調査を一通り終え、基本的なデータを収集しており、調査は順調に進捗している。「平泉関係文献史料集成」に関しては、当初の史料集作成から、史料目録作成へと方針を変えることにした。 【考古班】今年度予定していた発掘調査を遂行し、調査報告書も印刷・刊行した。北海道の厚真町から出土した常滑壷の検討、鎌倉のかわらけの検討により、中央から地方への文化の伝播の様相が見えてきており、それらに地方の武士たちが大きく関わっていたことがかなり明確になってきた。そしてその役割の中心にいた可能性が大きいのは平泉藤原氏であり、このたびの経塚の調査によってもそれが追認されている。 【石造物班】平泉町内に分布する平安時代から鎌倉時代頃の石造物については、現状で把握できるもののほぼすべてを確認し、調査を実施することができた。また、周辺部についても随時調査を進め、資料化を進めている。この4年間で新資料の発見(炭焼藤太夫婦の墓層塔、照井神社五輪塔など)もあり、その成果は大きいものとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、研究班ごとに述べる。文献班は、中尊寺における調査を9月中旬に実施する。これまでの実施してきた讃衡蔵保管の中尊寺文書については、補充調査を実施する。また、子院所蔵文書も調査できるよう交渉する。文書以外に、棟札、経蔵の落書についても調査を行う。考古班は、2013年度に確認した本州最北端の青森県平内町の白狐塚経塚の発掘調査を、10月に実施する。この経塚の造営には、出土した渥美壷や水沼壷破片から、平泉藤原氏が関わっていたと考えられる。また、この経塚の構造が、2016年度に調査した寺ノ上経塚と同様であることを確認できれば、平泉藤原氏の経塚形態をある程度特定できる上、中央から地方への文化の伝播の実態の一端を解明できる可能性がある。発掘成果は、調査報告書としてまとめる。石造物班は、平泉を中心に南は一関市全域、北は奥州市前沢付近までを範囲として、基礎資料集成を刊行する計画である。まずは詳細なリストを作成、提示し、主要な石造物については、実測、写真、拓本などの基礎データを提示する。このことで平泉における石造物研究の基礎を構築し、提示することができ、今後の研究の発展につなげることが可能になると考える。 次に本研究全体について述べる。今年度が最終年度となるので、研究班ごとに総括を行うとともに、全体としても成果を総合する必要がある。具体的には次のように考えている。 1)研究班ごとに以下の報告書を作成する。文献班:「平泉関係文献史料集成」、考古班:「平泉関係考古資料集成」、石造物班:「平泉関連石造物集成」 2)12月9・10日に平泉町にて全体シンポジウムを開催する。この報告討論を通じて、研究班ごとの成果を総合し、本研究の到達点と課題を明らかにする。あわせて成果を社会に還元する。なお、文献班が調査してきた中尊寺文書については、本研究終了後に然るべき出版社から本格的な史料集(図書)として刊行する計画である。
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Causes of Carryover |
考古班で、『寺ノ上経塚発掘調査報告書』を刊行した。この刊行費が、当初予定していたよりもはるかに安価ですんだ。しかも年度末ギリギリになっての刊行であったため、他の経費に振り向ける時間的余裕がなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
考古班で刊行予定の白狐塚経塚発掘調査報告書の刊行費にあてる。
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Research Products
(13 results)