2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25284133
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮宅 潔 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (80333219)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐川 英治 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (00343286)
丸橋 充拓 島根大学, 法文学部, 教授 (10325029)
佐藤 達郎 関西学院大学, 文学部, 教授 (30340623)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 中国古代 / 軍事史 / 民族 / 辺境支配 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画全体の中間年度にあたる本年度には、前二ヶ年の研究成果を総括し、国内外の研究者から広く意見を徴した上で、計画後半へ向けての展望を形成すべく、9月にソウル大学で国際シンポジウムを開催した。このシンポジウムには、ほとんどすべての研究分担者・連携研究者・海外共同研究者(計8名)が発表者ないしはコメンテーターとして参加し、さらに中国・韓国からも2名のゲストスピーカーを迎え、9月9~10日の両日にわたって行われた。発表題目は以下の通り。 9月9日:陳偉(武漢大学)「秦代遷陵県の“庫”について」、宮宅 潔(京都大学)「秦の占領支配と軍事組織」、金 秉駿(ソウル大学)「後漢時代、内境と外境の変動、そしてその周辺民族」 9月10日:GIELE, Enno(ハイデルベルク大学)「漢帝国の辺境軍隊の社会構造」、孫 聞博(中国人民大学)「秦漢“内史―諸郡”武官演変考――軍事体制から日常行政体制へと向かう変化を背景として」、藤井 律之(京都大学)「前秦政権における「民族」と軍事」、佐川 英治(東京大学)「北魏末の北辺社会と六鎭の乱」、李 基天(ソウル大学)「唐代高句麗、百濟系蕃将の待遇と生存戦略」 二日間で約40名の日・韓の研究者が参加し、有意義な意見交換の場となった。 このほか、8月には宮宅がドイツ・ハイデルベルク大学で行われた共同研究に参加し、研究発表を行った。また11月には武漢大学の徐少華教授を京都大学に招へいし、中国古代南方の民族移動に関する講演会を開催した。 こうした研究集会の開催と平行して、本年度も継続して里耶秦簡の会読を行い、秦代における新占領地の軍事統治の諸相について、分析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述したとおり、ソウル大学と京都大学の共催で、韓国において国際研究集会を開催し、一定の成果を得た。このシンポジウムでは、日本国内で討議を重ねてきたメンバーに加え、韓国の中国古代史研究者の参加も募り、広く意見を交換することができた。中国漢王朝の時代、朝鮮半島北部は漢の領域に取り込まれ、その郡県支配の下に置かれていた。従って中国王朝による軍事的侵略と統治の実像は、古代朝鮮史の研究者が強い関心を寄せる問題でもある。中国の古代王朝が行った、その辺境地帯での異民族支配の具体相を明らかにすることにより、韓国人研究者を中心にして行われている古朝鮮史研究に対して、一石を投じることができたと自負している。そのうえで、多民族社会への統治のあり方やその背後にあるイデオロギーについて、今後も議論を深めたい。 また里耶秦簡の会読も順調に進んでおり、その成果を学術誌に投稿中である。研究計画も後半に入ったが、本プロジェクトの成果について学界全体の評価を得る準備が整いつつあると考える。これらをふまえ、「おおむね順調に進展している」ものと自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度末には、二つの重要な史料が公開された。一つは『肩水金関漢簡〔肆〕』、もう一つは『岳麓書院蔵秦簡〔肆〕』である。前者は漢代西北辺境に置かれた関所、肩水金関から出土した簡牘で、そこを通過して辺境へ向かった兵士たちの出身地や地位を知るうえで、貴重な手がかりとなる。一方、後者は湖南大学岳麓書院が購入した簡牘群の報告書第4冊だが、この報告書には律令条文の図版と釈文が収められている。391本の簡牘から構成される条文集には、兵士の徴発に関わる規定も少なからず含まれており、統一秦において兵士が如何にして調達されたのか知るうえで、非常に重要な史料である。里耶秦簡を手がかりにして検討を進めてきた、秦による辺境支配の実態を、法律規定と付き合わせることによって、占領統治の理念と現実を比較検討できることが期待される。 研究計画も残すところ2年となり、すでに成果を広く学界に発表する段階に入った。それに当たっては、できる限り研究成果を中国語でも発信し、日本のみならず、中国をはじめとした国外の研究者からも評価を得ることを目指したい。
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Causes of Carryover |
重要な史料であり、購入して共同研究者に配布予定だった『岳麓書院蔵秦簡〔肆〕』と『肩水金関漢簡〔肆〕』の出版が遅れ、会計処理の期限に間に合わず、本年度の購入を見送ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
いずれもすでに出版され、近々日本でも購入できるものと思われる。購入して、予定通り共同研究者に配布する。
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Research Products
(13 results)