2014 Fiscal Year Annual Research Report
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25284158
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
上野 祥史 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (90332121)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 達也 鹿児島大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (20274269)
古谷 毅 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, その他部局等, その他 (40238697)
齋藤 努 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (50205663)
阪口 英毅 京都大学, 文学研究科, 助教 (50314167)
坂本 稔 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (60270401)
川畑 純 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, その他部局等, 研究員 (60620911)
諫早 直人 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, その他部局等, 研究員 (80599423)
杉井 健 熊本大学, 文学部, 准教授 (90263178)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 考古学 / 古墳時代 / 東アジア史 / 武器 / 武具 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、6度にわたる調査検討会を通して、円照寺墓山1号墳出土資料の基礎情報を整理した。遺存状態の良好な大型資料については、高精度の実測図の作成を70~80%前後完了させた。また、1930年代以後殆ど手が及んでいない破片資料を悉皆的に調査し、資料の全貌をほぼ明らかにした。 特に、本年度は小札甲及び襟付短甲を対象として取り上げ、メンバー総員で分類及び検討をおこない、員数推定や構造復元などを議論し、円照寺墓山1号墳で保有する武装具の実情がより精確に把握するよう努めた。 調査検討会では、調査と併行して研究報告をおこない、計8本の研究発表と討議をおこなった。円照寺墓山1号墳出土資料の整理から得た知見を共有し、またそれを起点とした武装具の様式論、製作論、保有論、表象論、そして奈良盆地東部勢力の歴史的評価について検討を進め、議論を蓄積した。 加えて、5月には韓国出土の倭系甲冑を調査し、韓国の考古学研究者と意見を交わし、東アジア視点から武装具の流通形態、あるいは倭の対外交渉、帯金式甲冑の象徴性、価値について議論を重ねた。 理化学的分析に関しても、AMS炭素14年代測定に基づく古墳時代の暦年代観の整備を目指して、測定資料の検討・選定や準備作業を積極的に進めた。古墳時代中期の出土資料を中心に10サンプルほどの測定に着手した。X線情報に基づいた情報解析も本年度は本格化しており、先の高精度の実測図作成とあわせて、製作技術論の展開に大きく寄与した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、奈良県円照寺墓山1号墳出土資料等の基礎情報を提示し、それに基づき武装具の集積現象を検討して、古墳時代中期社会の特質を描出することを目的とする。4年間の研究期間のうち、前半を中心に高精度の実測図の作成を中心に基礎情報の整理及び資料分析を進め、後半を中心に様式論、保有形態論、生産流通論、表象論など各視点から武装具の集積現象と古墳時代中期社会を討議する。 本年度は第2年度にあたる。高精度の実測図の作成は、概ね順調に進展しており、円照寺墓山1号墳を対象とした研究作業は、全体の70~80%程度の進捗状況を示している。昨年度は基盤機関の設備の事情で実施が困難であったX線図像解析も70%程度進み、AMS炭素14年代測定の資料検討も進捗している。基礎情報の整理は、概ね順調に進んでいるが、研究分担者・協力者の個別の事情により、進捗の程度は異なっている。悉皆調査により判明した新出資料などもあり、今後も継続して基礎情報の整理作業を鋭意進める必要があることを確認した。 また、韓国での資料調査及び研究会の開催により、武装具の集積現象の検討が実質的に進行している。特に、2度の研究会では報告を集中させて議論を蓄積させた。基礎情報の蓄積とその分析を踏まえて、各議論が進行しており、武装具の様式態論や保有論、あるいは表象論について議論を重なりつつある。武装具の集積現象から古墳時代中期社会の評価する動きが本格化しつつあり、当初よりも早いペースで議論の構築が進行しているといえよう。 これらを総じれば、全体として当初計画した目標達成しつつ、やや先行している部分もあると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、基礎情報の集約とそれに基づく議論の整理、そしてこれら研究成果の公開を目的として研究を推進する。 円照寺墓山1号墳出土資料を対象とした実測図の作成や、古墳時代中期関連資料の理化学分析の完遂を最重要課題としてとらえ、同資料に対する基礎情報を集約し、製作年代や系譜あるいは様式という視点で、円照寺墓山1号墳における武装具の集積現象の実態を共通の認識として確立させることに力点を置く。 成果の公開は、報告書の刊行とフォーラムもしくはシンポジウムの開催を以て、情報発信するものとする。円照寺墓山1号墳の基礎情報を公開する「報告編」と武装具の集積現象あるいは暦年代体系や技術系譜などを対象とした議論を集約した「論考編」によって構成する報告書を準備する予定である。そして、「武装具の集積現象と古墳時代中期社会」をテーマとするフォーラムもしくはシンポジウムを開催し、本研究の成果を学界や一般社会に向けてより広く情報発信することを目指したい。
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Causes of Carryover |
本研究は、研究分担者・連携研究者・研究協力者を含めて15名で研究を推進している。東京国立博物館での円照寺墓山1号墳関係資料の調査が、研究計画推進の根幹となる。今年度もより多くのメンバーが参集できる機会を設定したが、数名の研究者は本務の都合により参加回数が限られた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
東京国立博物館での円照寺墓山1号墳関係資料の調査に関して、各自の分担課題の進捗にあわせて、本年度に推進できなかった調査・検討を次年度に実施することにする。
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Research Products
(2 results)