2015 Fiscal Year Annual Research Report
三次元計測を応用した青銅器製作技術からみた三角縁神獣鏡の総合的研究
Project/Area Number |
25284161
|
Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
水野 敏典 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部調査課, 総括研究員 (20301004)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅谷 文則 奈良県立橿原考古学研究所, その他部局等, 所長 (10275175)
奥山 誠義 奈良県立橿原考古学研究所, 企画部資料課, 主任研究員 (90421916)
北井 利幸 奈良県立橿原考古学研究所, 附属博物館, 主任学芸員 (70470284)
古谷 毅 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 列品管理課, 主任研究員 (40238697)
柳田 明進 奈良県立橿原考古学研究所, 企画部資料課, 主任技師 (30733795)
山田 隆文 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部調査課, 主任研究員 (30301005)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 三角縁神獣鏡 / 三次元計測 / 同笵鏡 / 同型鏡 / 銅鐸 |
Outline of Annual Research Achievements |
製作技法から三角縁神獣鏡を問い直すことを目的として研究を継続した。 平成27年度は、蓄積した計測データの分析に重点を置き、学会発表を主に2回行った。一つは、日本考古学協会総会研究発表である.「古墳時代前期の銅鏡以外の青銅器製作技術の研究-三角縁神獣鏡の製作地を考えるために-」において、三角縁神獣鏡と同時期の青銅製品の量産技法を検討した。京都府芝ヶ原古墳出土銅釧2点と、奈良県新沢千塚500号墳と鳥取県古郡家1号墳出土の八つ手葉形青銅製品を分析対象とした。銅釧の放射状の稜線に起点を置き、これまでの分析から踏み込んで厚みの変化に注目した。八つ手葉形青銅製品も,文様の突出量が同じであるのに対して、全体の厚みが増し、文様の改変とわずかな歪みから同型技法による量産を想定した。その上で、古墳時代における舶載三角縁神獣鏡とホウ製三角縁神獣鏡が同笵技法を主力とする特異性の評価を行った。日本文化財科学会では「三次元計測からみた上牧久渡3号墳出土の画文帯神獣鏡」の口頭発表を行った。上牧久渡3号墳出土の画文帯神獣鏡と大阪府和泉黄金塚古墳東槨出土鏡が、三次元計測データの照合と笵キズの分析から「同型鏡」であり、明確な鏡径収縮をしないことと、鈕孔方向、鈕孔形状の共通性から、同一工房で製作された兄弟鏡と考えた。その上で、前期古墳と中期古墳からの後漢鏡の出土に対して日本での長期伝世の可能性の検討を行った。 普及活動としては、橿原考古学研究所の公開講演会で「三次元計測を応用した三角縁神獣鏡の研究」において研究概要を講演した。 主な計測調査としては、島根県立古代出雲歴史博物館で加茂岩倉遺跡出土銅鐸10点の計測調査を行った。銅鏡については、大阪市立美術館で矢作神社所蔵三角縁神獣鏡の計測調査等を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の研究計画は、主に蓄積したデータの解析に置かれており、ほぼ計画通りのペースで分析結果を出すことができている。現時点で、調査機材の致命的なトラブルや研究分担者の計画遂行にあたっての障害は発生していない。 研究成果の公開については、全国規模の学会である日本考古学協会と日本文化財科学会を中心に、継続的に研究成果を発表することが出来ている。一般に向けた普及活動についても、機会を探して行っており、平成27年度には、読売新聞(12月2日文化面)、朝日新聞(3月31日文化欄)などにも個々に研究活動を取上げてもらい、普及活動も十分に進めることが出来ている。査読を行う学術誌への投稿が出来ていないことが唯一の計画の遅れであるが、これは研究代表者の健康上の問題が大きい。平成28年度の報告書作成に盛り込むことで、対応できると考えており、全体としては問題はないと考えている。 調査としては、計画の順序を変更しているが、三角縁神獣鏡の製作技法をさぐる研究の柱のひとつである島根県加茂岩倉遺跡銅鐸の調査は、量的にも技術的にも困難な課題であったが、研究最終年度で計測調査を終了できる予定である。必要な調査については、順次、所蔵機関との調整を進めている。 三次元計測器などの主要機材の運用、および調査補助などの人員についても障害は生じておらず、研究に計画に沿って実施している。
|
Strategy for Future Research Activity |
調査計画に大きな変更はない。日本考古学協会や日本文化財科学会などの全国規模の学会発表を継続的に行うことを念頭に、三角縁神獣鏡と、それを取り巻く青銅製品の量産技術について、順次、研究成果の発表を行う。そのために必要な資料についての計測調査を優先的に行うものとする。 現時点で、古墳時代において、分析を行った中国鏡や倭鏡、銅釧などの青銅製品の量産にあたり、同型技法が主力として用いられたと考えており、それに対して三角縁神獣鏡は、舶載鏡とホウ製鏡ともに同笵技法を主力とし、併せて挽型の使用方法や笵傷のつき方など特異性が確認できている。 今後は、現在の見通しを確認するために、分析例を増やすことに注力する。また、銅鐸については、時間的に離れているが、三角縁神獣鏡や倭鏡とどのように関わるのかを中心に分析を進める。 その結果を研究最終年度である次年度に報告書としてとりまとめ、計測データの整理とデータ保管について検討を行う。
|
Causes of Carryover |
購入品が、インターネット等の利用で計画より安く購入できた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
報告書作成に向けた平成28年度はじめの調査補助の増強のための費用として対応する。
|
Research Products
(5 results)