2014 Fiscal Year Annual Research Report
日本の出生力転換開始の社会経済要因に関する研究―東西2地域の比較分析
Project/Area Number |
25285151
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
廣嶋 清志 島根大学, その他部局等, 名誉教授 (20284010)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平井 晶子 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (30464259)
高橋 眞一 新潟産業大学, 経済学部, 教授 (80030683)
小林 准士 島根大学, 法文学部, 教授 (80294354)
小池 司朗 国立社会保障・人口問題研究所, 人口構造研究部, 室長 (80415827)
橋本 貴彦 立命館大学, 経済学部, 准教授 (80510726)
宮本 恭子 島根大学, 法文学部, 准教授 (50709128)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 人口史 / 家族・親族・人口 |
Outline of Annual Research Achievements |
江戸後期-明治前期(1808-1898年)について国別に1800年代初期の幕府人口から初期人口を推定し,1883年生残率を直線的な変化(飢饉時は別)を仮定して,計算した結果,地域別人口変化は山陰で最も小さく,西東北で最も大きくなり,出生率もこれと同様と推計された。 山陰の低い出生率を生んだ背景は,たたら,海運,漁業など比較的有利な社会経済的条件であり,この条件によって明治以後は逆に経済発展に遅れを取る要因となり,人口流出を生むこととなったとの仮説を得た。 江戸時代石見地域の出生率の地域差の検討を通して,出生抑制の方法として結婚時期の統制に加えて間引き・堕胎が存在したことを推定し,その明治以後においては堕胎・間引きが抑圧されることによって人口が増加したことが推定された。 東北農村について,初婚年齢は女性で上昇,男性は低下,初再婚年齢の分布は時代が下がるにつれ,集中化。30歳以後の結婚の減少が進んだ。離婚率の高さは3割程度で時代の変化がないが,結婚5年以内へ集中化した。したがって,特定の人口学的条件がなくても,東北農村では19世紀前半に「家」が確立し,結婚パターンの均質化が進んだことを明らかにした。 島根県の明治後期以後の人口統計について,戸籍による現住人口と国勢調査結果を照合し,寄留人口など統計上の問題を調整して得た年齢別人口,および補正した出生数,死亡数により,1905-1935年において全県の出生力が上昇傾向となるなかで,松江市の出生力は1920年以降低下に転じ,他郡との出生力との乖離は鮮明となったこと,死亡力の低下は1930→1935年至るまで認められないが,松江市においては死亡力の相対的な低下傾向が著しいこと,松江市を除けば,出生力と死亡力の地域間格差は概ね維持されており,出生力と死亡力の間には正の相関がみられることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各研究者がそれぞれいくつかの統計補正方法,分析方法,推計方法を用いて出生力転換について,島根県および福島県の分担を中心として都府県別の全国的な比較研究に従事しつつ,研究結果を2014年7月,10月および2015年2月に開催した研究会にもちより発表し,それについて全員で議論し,またその後のメールのやりとりによって相互に議論した結果,地域ごと,時代毎の出生力および人口状況の変化を確認することができ,また分析方法の改善策などを得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記2 地域について,上記の出生率に関する指標と社会経済要因との相関分析,多変量解析を実施し,出生率低下の要因分析を行い,その2 地域間比較を行い,どのような社会経済要因が結婚率低下および結婚出生率低下によって出生率低下がもたらされたものか,また,この出生率の統制がどのように可能になったかを考察する。 これらの考察の結果を2 地域間で比較・総合し,また,歴史人口学,思想史,家族史,家計史,歴史地理学の各専門研究の立場から日本の近代的出生力の上昇と低下の開始の社会経済要因について総括的な像をまとめ,論文化する。 その際,研究成果を人口関連およびそれぞれの専門分野の学会において発表し,国内外の専門家との討議を経ながら,まとめる。
|
Causes of Carryover |
予定していた古文書の解読可能な人が年度途中から定職を得て労働可能時間が減少したため,仕事の依頼可能時間が限定され,仕事の進行が遅れた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は早期に準備して仕事の依頼を早期に行う。
|
Research Products
(23 results)