2013 Fiscal Year Annual Research Report
謙遜と自己高揚の普遍性に関する13ヶ国比較研究:脳生理学的基盤の検討を含めて
Project/Area Number |
25285177
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 勧 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (80134427)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森尾 博昭 関西大学, 総合情報学部, 教授 (80361559)
村上 史朗 奈良大学, 社会学部, 准教授 (30397088)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 謙遜 / 文化間比較 |
Research Abstract |
本年度は、謙遜の意味について確認するために、自由記述の質問紙を日本、韓国、香港、インドネシア、オーストラリアの各国において配布し、その回答を調べた。その結果、どの国でもすくなくともある程度は謙遜をしていることが確認された。このことから、謙遜についての比較文化的な研究を行う共通基盤が確認されたといえる。とくに、個人主義的な文化と考えられるオーストラリアで謙遜の現象が確認されたことは重要である。謙遜をするのは集団主義的な国で対人関係に配慮する場合だけではないということを意味しているからである。次に、日本人を対象にして、謙遜について実験的な研究を行った。 謙遜の興味深いところは、実際の自己評価とは異なる低い自己評価を表明するということである。つまり、謙遜している者は自分の表明した自己評価を相手に信じてもらうことを必ずしも望んでいない、ということが想像される。一方では、どの文化でも人は嘘をつくのはよくないことである、と教えられるのが通常である。したがって、どの文化でも人は通常は嘘をついていない、つまり、おおむね正直に自分の意見を表明している、と考えられる。このように、自分の正直な意見とはことなる意見や評価を表明することは、印象管理として扱われてきたが、これまでの研究では自己高揚が相手に高い評価を与えるための印象管理手法として欧米で研究されてきた。一方、日本などのアジア文化圏では、自己高揚は相手に否定的な印象を与える恐れが強く、謙遜がより強く用いられてきたわけである。実験では、このような対立する傾向についての知見を得るために、日本人学生を被験者として、質問紙を配布し、どのようにして謙遜に動機づけられているかについて尋ねた。その結果、今後諸外国で行うための質問項目を確定することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アジア圏だけでなく、個人主義的な文化と考えられているオーストラリアでも謙遜が行われており、日本人と似たような感覚をもっていることが確認された。このときにより、今後の比較文化的研究を行うための文化間斉一性が確認されたことになるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は、すでに日本で実施した質問紙による実験を諸外国で行うだけでなく、現在ほぼ準備が完了したERPを測定しながらの実験研究およびIATを用いた比較文化的な研究を実施する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に始めることを目指していたERPを測定する実験を翌年度に開始することにしたため。 ERPを測定するための消耗品および被験者に対する謝礼として使用する予定である。
|