2013 Fiscal Year Annual Research Report
恐怖の生得性に関する生理・進化的基盤に関する実験的研究
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25285199
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川合 伸幸 名古屋大学, 情報科学研究科, 准教授 (30335062)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
香田 啓貴 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (70418763)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 恐怖 / 霊長類 / 生得性 / 脳波 / ヘビ・クモ |
Research Abstract |
本研究では、ヒトの行動および脳波の実験とサルの行動実験により、クモの認識が早いかどうかを調べることで、クモ恐怖の生得性に一定の回答を得ようとするものである。 H25年度は3頭のニホンザルに対して視覚探索課題を訓練した。H26年度にはヘビのウロコが有る写真と無い写真で視覚探索の速度を比べ、ヘビの何に怖れているかを検討する。 また、H25年度に、ヒトを対象として脳波の研究を行った。視覚刺激に対して後頭葉の事象関連電位として測定される Early Posterior Negativity(EPN)は初期視覚の注意を反映すると言われている。Van Stren et al.(2012)は、トリ、ヘビ、クモに対するEPNを比べたところに、トリよりクモが、クモよりヘビへの振幅が大きいことを明らかにしている。本研究では、ヘビとクモを直接比較するのではなく、クモが他の動物に比べて強く注意を惹くかを検討することを目的とした。そのために、クモとよく似ている昆虫と比較した。一般にヘビ・クモは危険であるから怖れるといわれるので、クモと同様にヒトに致命傷を与えることもあるスズメバチと、安全でまるまった形態のマルハナバチ、安全で人気のあるカナブンの4種類の写真を提示し、それぞれのEPNを調べた。なお、実験および計測が適切に行われているかを検討する目的で、ヘビとトリも比較した。その結果、O1, Oz, O2の測定部位や、EPNの区間(150-300 ms, 200-300 ms, 225-300 ms)に関わらず、ヘビはトリよりも強いEPNを誘発した。しかし、クモはほかの昆虫と差がなかった。脅威を与えるもの(クモ・スズメバチ)とそれ以外の比較でも差は得られなかった。このことは、ヒトにはクモをすばやく検出するシステムが備わっていないことを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サルの訓練が完了し、H26年度からテストをはじめられる状態になった。 ヒトの実験では事象関連電位を測定し、クモは初期知覚において強く注意を惹くわけではないことを示すことができた。論文も投稿の準備段階にあり、順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度は、サルではヘビのウロコがある条件と無い条件の刺激を用いて視覚探索を行い、ヘビの何が脅威の対象となっているかを明らかにする。ヒトでも同様に、ヘビのウロコのある刺激とない刺激を用いて、EPNを調べる。また、サルではクモと花(あるいは危険でない動物)の写真を用いて、すばやい視覚探索を行うかを検討する。 さらにヒトでは、ヘビやクモを極端に意匠化した図形を用いて視覚探索実験を行う。もし脳内にヘビ(トグロを巻く)やクモ(多くの足が身体の横にある)の典型的な表象が脳内にあるならば、このような形態は素早く検出されると予想される。しかし、ヘビのウロコが鍵であるなら、これらの刺激に対する検出は促進されないと考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定通り実験室改修等が進まなかったため、サル用実験装置を購入せず、次年度使用額が生じた。 実験室の改修に伴い、サル用のケージと防音箱の購入に充てる。
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Research Products
(4 results)