2014 Fiscal Year Annual Research Report
10代前半の摂食障害者における社会的認知の検討:顔認知課題を中心に
Project/Area Number |
25285204
|
Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
金沢 創 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (80337691)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
作田 亮一 獨協医科大学, 医学部, 教授 (40254974)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 発達 / NIRS / 摂食障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、10 代前半の摂食障害者の知覚・認知的特徴を、実験的に解明することを試みた。一般的には、摂食障害とは16 歳から24 歳の女性を中心に、ダイエット文化などの社会的影響によって発症する心の病であると考えられている。しかし近年、むしろ認知の偏りやそれを生み出す脳科学的な要因の関与が報告されるようになってきており、10 代前半での発症も急増している現状がある。本研究では摂食障害を、認知的要因の偏りをスタートポイントとして社会的要因をきっかけに生じる「発達的な障害」と捉え、この認知の偏りとその脳科学的な根拠を、顔認知課題を中心とする実験心理学的な手法を駆使して明らかにした。具体的にはNIRSによる脳活動を指標に自己顔と他者顔認知の実験を、摂食障害者と定型発達者のコントロール群の2者で比較した。実験の結果、通常特別な活動が見られる自己顔に対して、定型コントロール群においては他者顔よりも強い活動が観察された。この結果は、摂食障害者の自己認識が定型発達者と異なっていることを示唆している。この結果は、国際誌PlosONEに掲載された。また、一般メディアにプレスリリースを行い新聞各紙に掲載された。これに加え、Jornal of Vision2本、i-Perception、PlosOne、などの専門誌、ならびにCurrent BiologyやPNASなどのインパクトファクターが高い一般科学誌での成果発表も行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度繰り越し分においては、摂食障害者の認知実験及びNIRSによる脳活動の計測を準備し調整を行った。本計画では、顔画像として自己顔と他者顔を用い、脳活動計測の方法としては、発達障害児/者でも負担なく計測が可能なNIRS(近赤外分光法)を用いた。摂食障害者は、自己の身体の認知について極端に現実とは異なるイメージを保持しており、自己イメージの歪みが指摘されてきた。本研究計画でもこの仮説にのっとり、自己顔の認知が、摂食障害者において、なんらかの観点で歪んだものとなっているのではないか、と考えた。具体的には自己顔を観察している際の脳活動を、摂食障害者とコントロール群との間で、比較検討した。顔認知については一般に右側頭が強く反応することが知られている。NIRSは、fMRIに比べれば、脳の表面しか測定できないという欠点をもつが、実験参加者への負担が少ないという有利な点をもつ。そのため、発達障害児/者という拘束を比較的嫌う人たちを対象としても、NIRSは有効である。本計画では、安静時と顔観察時の脳活動の差分を、自己顔と他者顔との間で比較した。その結果、摂食障害群では、自己顔、他者顔の双方で、顔認知で活動がみられる右側頭での有意な活動の増加がみられたが、コントロール群では自己顔に対してのみ、右側頭での反応がみられた。この結果は、摂食障害者にとって、自己の顔も、他者の顔と同様に処理しているという点で、自己顔認知がゆがんだものとなっていることを示唆している。この結果は、国際誌PlosONEに掲載された。また、一般メディアにプレスリリースを行い新聞各紙に掲載された。これに加え、Jornal of Vision2本、i-Perception、PlosOne、などの専門誌、ならびにCurrent BiologyやPNASなどのインパクトファクターが高い一般科学誌での成果発表も行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究計画は完成年度を迎えたため、いったんここで終了する。今後は本研究計画で得られた基礎的な研究成果をベースに、臨床現場との連携を考えていきたい。
|
Causes of Carryover |
本研究計画は病院が主なフィールドであり、病院での状況に左右される点が主な理由である。具体的には、摂食障害群は、病院であることもあり比較的容易に被験者を確保できるが、逆に健常コントロール群の実験が遅れてしまったことがある。実験設備や装置などは、病院での実験群と同じ条件でコントロール実験を行わねばならない点も問題を難しくした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
使用計画としては、主にコントロール群の被験者リクルートや、コントロール群のNIRS機器のセットアップに主に研究費を使用した。被験者募集のためのチラシや謝礼などにも費用が必要であった。また、データ分析のための機器にも費用がかかった。
|
Research Products
(4 results)
-
-
[Journal Article] Differences in the pattern of hemodynamic response to self-face and stranger-face images in adolescents with Anorexia Nervosa: A near-infrared spectroscopic study2015
Author(s)
Inoue, T., Sakuta, Y., Shimamura, K., Ichikawa, H., Kobayashi, M., Otani, R., Yamaguchi, M. K., Kanazawa, S., Kakigi, R., Sakuta, R.
-
Journal Title
PLoS ONE
Volume: 10(7)
Pages: e0132050.
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
-
-