2014 Fiscal Year Annual Research Report
液晶性を活用した薄膜作製技術による高分子有機トランジスタの高性能化
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25286045
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
坂本 謙二 独立行政法人物質・材料研究機構, 高分子材料ユニット, 主幹研究員 (00222000)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 有機トランジスタ / 有機半導体 / 液晶性 / 光配向膜 / フロー・コーティング / 配向制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度のフロー・コーティング装置の基板ステージ部の改良に加え、フロー・コーティング装置をグローブボックス内に設置することにより、基板温度140℃以下、窒素雰囲気中で有機半導体薄膜を塗布することが可能となり、本研究計画で提案したフロー・コーティング装置の改良を完了した。Azo-PI光配向膜を挿入したFETの素子構造についての検討結果に基づき、本年度はトップゲート(TG)/ボトムコンタクト(BC)型のFET素子構造(石英基板/Azo-PI光配向膜/ソース・ドレイン電極/pBTTT活性層/ゲート絶縁膜/ゲート電極)に注目し、研究を行った。移動度の向上、on/off比の向上、素子間の移動度のバラツキ低減を目指し、pBTTT活性層の厚さの最適化、ゲート絶縁膜の作製条件と素子パターンの検討を行った。pBTTT活性層上に形成するゲート絶縁膜には反応性の高い絶縁膜材料が使えないことから、アモルファス・フッ素樹脂(サイトップ)をゲート絶縁膜として選定した。ソース・ドレイン電極の厚さよりわずかに厚くpBTTT層を形成することにより、移動度が最大となることが分かった。また、移動度がゲート絶縁膜の乾燥条件に強く依存することがわかった。現在の最適条件は、60℃、24時間の乾燥である。最適乾燥条件は、ゲート絶縁膜中の溶媒除去率と乾燥工程によるpBTTT/ゲート絶縁膜界面の熱ダメージのバランスで決定されていると理解している。off電流の低減(on/off比の向上)のため、素子の小型化、窒素雰囲気中でのpBTTT活性層形成、素子分離を行い、10の4乗のon/off比を達成し、かつデバイス特性の再現性も向上した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Azo-PI光配向膜を挿入したFETの素子構造として、TG/BC型にターゲットを絞り、その作製プロセスの最適化、構成層の膜厚の検討を行うことによって、アモルファス・シリコンに匹敵する電界効果移動度を達成した。更なる移動度の向上と理想的なFET特性の実現を目指すとともに、素子間の特性ばらつき要因の解明に着手している。また、より高い配向度のAzo-PI光配向膜を用いることによって、pBTTT層の高配向化が達成できる可能性があるため、Azo-PI光配向膜の高配向化プロセスの開発も並行して行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も TG/BC型FETにターゲットを絞り、デバイス特性の向上を目指す。現在の問題点は、飽和領域の電界効果移動度が強いゲート電圧依存性を示すことである。ゲート電圧を負側に印加していくと見掛け上の移動度が単調に増加していくため、現状において真の移動度の評価ができていない。今後は、このゲート電圧依存性の起源を明らかにして理想的なFET特性を示すデバイスを実現し、pBTTTの分子配向制御による真の移動度の向上を実証する。そのために、FETの作製条件の最適化をさらに進める。また、デバイス特性のバラツキの低減も重要な課題である。その原因を解明し、素子特性のばらつきの低減を目指す。 また、より高い配向度のAzo-PI光配向膜を用いることによって、pBTTT層の高配向化が達成できる可能性があるため、Azo-PI光配向膜の高配向化プロセスの開発も並行して行う。
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Causes of Carryover |
TG/BC型FETに着目し、そのデバイス作製条件と構成層の厚さの最適化を行いアモルファス・シリコンに匹敵する電界効果移動度を実現した。しかし、高移動度を示すFET素子において、その飽和領域の電界効果移動度が強いゲート電圧依存性を示すことが明らかとなった。また、高移動度を示すFETのデバイス特性のバラツキ抑制とoff電流の更なる改善が必要である。予算を有効に使用するためH26年度の後半はこれらの課題解決に向けた方策を得るための実験に専念したことにより、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記課題のうち、off電流の低減に関しては、ゲート・リーク電流の抑制、回り込み電流の抑制が重要であり、新たな素子パターンの設計、素子分離されたFETアレイの作製プロセスの確立が必要である。そこで、次年度使用額は、主にフォトマスク・蒸着メタルマスクの作製費、FETアレイの作製プロセスに必要な治具の作製費としてH27年度に使用する予定である。
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Research Products
(10 results)