2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25287029
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
國府 寛司 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50202057)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 力学系 / トポロジー / 計算機援用解析 / 気象学 / 生命科学 / ネットワーク / 時系列 / 位相計算 |
Research Abstract |
研究計画に従い,今年度は主として,生命科学における制御ネットワークの時系列解析によるダイナミクスの研究と,気象学における大気大循環の時系列に対する遷移的振舞いの研究を行った. 生命科学における制御ネットワークの時系列解析によるダイナミクスの研究では,連携研究者の望月敦史氏(理研)が Bernold Fiedler 氏(ベルリン自由大学)と共同で行っているネットワーク・ダイナミクスの理論と,代表者の位相計算的時系列解析の方法を融合させる数学的結果を得た.また,その有用性を実際に検証するために,サーカディアンリズムの遺伝子制御ネットワークの数理モデルに対して,従来の数値計算で得られているダイナミクスの構造が,フィードバック・バーテックス・セットと呼ばれる一部のノードから得られた時系列データだけで復元できることを確認した. 気象学における大気大循環の時系列に対する遷移的振舞いの研究では,連携研究者の稲津將氏(北海道大学)らと共同で,対流圏・成層圏における冬季の等圧面の観測データから得られた時系列データに対して位相計算的解析を行い,気象学者が予想している特徴的な気圧パターンの遷移を捉えることに成功した.さらに同様の解析を,GCM と呼ばれる気象学で標準的な大気大循環の数理モデルのシミュレーションから得られた時系列データに対しても適用し,類似の遷移過程が見られることを確認した.これは,大気大循環のような大規模で乱雑な振舞いを示す観測データから,一定の決定論的ダイナミクスの情報が得られたことを意味し,今後も更なる研究を継続する価値のある重要な結果であると考えられる. このほかに,位相計算理論の基盤的研究に関連して,Hopf-zero 型特異点の開折における複雑なダイナミクスの計算機援用解析を行った論文が刊行された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
制御ネットワークの時系列解析によるダイナミクスの研究では,望月-Fiedlerらの理論と位相計算的時系列解析の方法を融合させる数学的結果を得,それをサーカディアンリズムの遺伝子制御ネットワークの数理モデルに適用して,その有用性を検証できた. 気象学における大気大循環の時系列に対する遷移的振舞いの研究では,対流圏・成層圏における冬季の等圧面の観測データから得られた時系列データに対して位相計算的解析を行い,気象学者が予想している特徴的な気圧パターンの遷移を捉えることに成功した.
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Strategy for Future Research Activity |
制御ネットワークのダイナミクスの研究では,前年度の成果を論文にまとめる作業を開始するとともに,更に精密な時系列解析の研究を継続する.また,特に区分的線形な不連続関数を用いた switching system と呼ばれる特別なネットワーク力学系のクラスに対して,位相計算理論を適用する新しい枠組みを検討し,その特徴を活かした解析の手法を研究する. 気象学における大気大循環に見られる遷移的振舞いの研究でも,前年度の成果を論文にまとめる作業を開始するとともに,特に GCM などの数理モデルを用いた研究を継続する. これらに加えて,位相計算理論それ自身の理論的研究も行い,方法論の精密化と有用性の向上を図る.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
数理研のプロジェクト研究の一環として開催する複数の国際会議の費用を見込んでいたが,数理研や JSTからの経費支援が得られたために,その分を次年度以降の研究に充てられることになった. 26年7月にシカゴで開催される国際会議では,1セッションの企画を依頼されたので,本研究課題に関係する講演者を集めたミニシンポジウムを開催することとした.また,8月にオランダで開催される研究集会では,本研究の進展のための研究討論に相当の時間をかける予定である.25年度からの研究費は.以上の海外出張などのために有効に使用する計画である.
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Research Products
(7 results)