2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25287049
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 光裕 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (80185876)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
風間 洋一 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (60144317)
菊川 芳夫 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (20252421)
大川 祐司 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (10466823)
奥田 拓也 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (90595646)
米谷 民明 放送大学, 教養学部, 教授 (10091521)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 素粒子論 / 弦理論 / 超対称性 / 可解性 / 符号問題 / ブラックホール / 弦の場の理論 / 数理物理 |
Research Abstract |
(加藤)弦の場の理論を拡張し、零質量の高階スピンをそのスペクトルに持ち弦理論のようなハゲドーン温度を持つ新しい場の理論を構成した。またその高階スピンゲージ対称性を共変的にゲージ固定する方法も与えた。 (風間)AdS/CFT対応の解明にとって質的に新しい情報を与える量として3点関数があるが、強結合領域における4次元の超対称ヤン・ミルズ理論の3点関数を、その双対であるAdS3 x S3中の弦理論の可解性の構造を駆使して具体的に計算することに成功し、弱結合領域で計算されていたものとの構造の類似を示した。 (菊川)Lefschetz thimble上で定義される格子模型に適用可能なHMC法を開発した。有限密度下の複素スカラー場理論においては,4^4格子で複素ランジェバン法と矛盾のない結果が得られ,積分測度に現れる複素位相の効果は十分小さく抑えられることを確認した。 (大川)飯森氏、野海氏、鳥居氏との共同研究に基づき、Berkovits 型の超弦の開弦の場の理論のゲージ対称性を部分的にゲージ固定することにより、通常 small Hilbert space と呼ばれる状態空間に基づく特異性のない超弦の開弦の場の理論が構成できることを明らかにした。 (奥田)2次元超対称ゲージ理論の半球面上での分配関数を局所化により計算し、境界条件への依存性を決定した。その結果を応用し、ゲージ理論の可積分性から期待される対称性の一つであるSL(2)アフィン・ヘッケ代数を実現するドメインウォールを構成した。 (米谷)当初、行列模型の立場から時空の起源を追求したが、弦理論そのものの非局所性の意味を追求することの重要性に思い当たり、時空の地平線と交差する弦理論の研究を進めた。KEKで開催された国際研究集会の招待講演でこの問題を中心に弦理論の課題を論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各自の分担研究の達成度に多少のばらつきがあるが、全体としては、おおむね順調に進展している。以下、各分担部分の評価ポイントを記す。 (加藤)自由場ではあるが、ゲージ固定作用の構成まで到達することができた。(風間)上記の計算は当該分野の多くの研究者が目ざしたが達成できなかった重要な結果であり、当初の予定よりも時間はかかったが非常に満足のいく結果が得られたと考えている。(菊川)Lefschetz thimble上で定義される格子模型に適用可能なHMC法を開発し,格子サイズは小さいながらも,積分測度に現れる複素位相の効果が十分小さくなることが確認できたことは成果であった。格子 O'Raifeartaigh 模型のシミュレーション研究の実現性が高まった。(大川)大川等の small Hilbert space に基づく特異性のない超弦の場の理論の構成を契機に、弦の場の理論の分野でより優先度の高い研究が急速に進展しており、研究の目的の達成に向けての研究の道筋を多少修正しているため。(奥田)当初の予定通り、2次元球面上でのドメインウォールの行列要素を計算し、無限次元代数が実現されていることを示した。また3次元理論でのループ演算子の計算も完了している。(米谷)概要に述べたように、当初の研究計画で述べた課題の追求過程で、世界的にも従来十分に考察されていない新たな方向の研究に進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
(加藤)本年度に構成した高階スピン場の理論を相互作用を含めた場合に拡張する。一方、この理論は弦の場の理論と同様非局所的な理論であり、UV完全性と非局所性との関係についても調べていきたい。 (風間)次なる段階として、ヤン・ミルズ理論の弱結合における3点関数の計算を、弦理論との共通構造を捉えるのに適した新しい見方から再導出する研究を行っており、これにより未だ明らかになっていないヤン・ミルズ理論全体に関する可解性の構造を捉えることを目指す。 (菊川)H25年度までの研究によって定式化した「Lefschetz Thimble上でのHybrid Monte Carlo 法」の有効性の検証と改良を進める。特に,フェルミオンとの湯川結合を導入したカイラル湯川模型への適用を試みる。その上で,格子 O'Raifeartaigh 模型への応用の可能性を検討する。 (大川)H25年度の研究成果をヘテロ型の閉弦の超弦の場の理論に拡張する。また、超弦の場の理論のゲージ対称性の本質的な理解に向けて、超リーマン面の超モジュライ空間の構造との対応が分かるように研究成果を解釈することを試みる。 (奥田)ドメインウォールが実現する対称性をより広く詳しく調べていきたい。また3次元ループ演算子が物性系での不純物ドーピングと関係することが分かっているので、ループ演算子の厳密計算を応用して定量的な理解を得たい。 (米谷)ブラックホール時空を弦理論の立場から考察する。弦の非局所性が本質的に重要で、様々な近似に基づき時空地平線近傍の弦の振る舞いを詳細に調べ、行列模型などの非摂動的なアプローチやDブレーンの場の理論との関連を考察し、当初の方針をさらに深めた研究を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分担研究における取り組み順序の変更があったこと、および学内事情により複数の出張計画の延期をせざるを得なかった事情があったこと、さらには専門的知識の提供者として招請予定の外部研究者の都合が合わなかったために招請回数が予定より少なくなったことなどのため、予定を変更して次年度に使用することとした。 前年度取りやめた出張、外部研究者の招請などが次年度に回ったため、その費用にあてる予定であり、全体としての使用計画には当初予定からの大きな変更はない。
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Research Products
(15 results)