2014 Fiscal Year Annual Research Report
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25287066
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
初田 哲男 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 主任研究員 (20192700)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 中性子星 / 高密度物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)熱い中性子星の状態方程式:超新星爆発直後の中性子星は、数十MeVの温度を持ち、その後、数十秒を経て、熱い中性子星は早い冷却と収縮を経て冷たい中性子星に移行する。今年度は、この一連の過程の始点となる誕生直後の熱い中性子星を、ハドロンークォーククロスオーバーの観点から記述した。ハドロン側では、有効核力を用いた有限温度のHartree-Fock計算を、クォーク側では有限温度でのNJL模型に基づく状態方程式を採用し、ヘルムホルツの自由エネルギーによる接続を行った。通常原子核密度以下の低密度領域では、有限温度のクラスト状態方程式を用いた。これにより、粒子あたりのエントロピー一定の条件のもとでの新しい有限温度状態方程式が完成した。この状態方程式は、温度ゼロでは、太陽質量の2倍の中性子星を再現できるだけでなく、中性子星の熱的進化の基礎を与えることになる。本年度1年間をかけて、連携研究者の高塚龍之氏、大学院生の益田晃太氏、および初田で行ってきたこの研究の内容について投稿論文を準備中である。
(2)強磁場中でのハドロン:重イオン衝突実験などで現れると考えられている強磁場が、QCDの真空構造やハドロン構造に与える影響についての理論的研究を進めた。特に、ハドロン構造への影響を理論的に扱うために、強磁場中でのQCD和則を定式化し、擬スカラー量子数を持つηcとベクトル量子数を持つJ/Ψの縦偏極成分が、磁場の効果で混合することを見出した。この結果、それぞれのスペクトルに質量変化が誘導され、eB~0.1 [GeV**2]の典型的な磁場領域で、ηc (J/Ψ)が数十MeV軽く(重く)なることを明らかにした。この研究は、本科研費で研究支援員として雇用している服部恒一氏が中心となり今年度に行った共同研究で、その成果は、Phys. Rev. Lett.誌およびPhys. Rev. D誌に出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中性子星構造論や、強磁場下でのQCDについて、理論的研究を大きく進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
中性子星の観測データに基づく研究について、今後実験家との連携を密にして進めたい。また、今年度大きく進展した熱い中性子星の状態方程式を、超新星爆発直後の中性子星のシミュレーションに実装すべく、その分野の専門家と共同研究を開始したい。
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Causes of Carryover |
H26年度に予定していた海外の研究協力者の招聘が、先方の都合によりH27年度にずれ込んだ。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外の研究協力者招聘および、研究支援員の海外派遣に使用する。
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