2014 Fiscal Year Annual Research Report
高温超伝導を目指したダイヤモンドおよび関連物質の表面伝導電界制御
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25287093
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
山口 尚秀 独立行政法人物質・材料研究機構, 超伝導線材ユニット, 主任研究員 (70399385)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ダイヤモンド / 電界効果 / 量子振動 / イオン液体 / 超伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイヤモンドおよびその関連物質の表面にイオン液体を用いた電界効果によって高密度伝導キャリアを蓄積し高温超伝導および強電界下新規物性の発現を目指す研究を進めた。 前年度に、原子レベルで平坦な水素終端ダイヤモンド表面に電界効果によって高密度ホールキャリアを蓄積させることで、ダイヤモンドのシュブニコフ・ドハース振動の観測にはじめて成功した。この研究を進展させ、Physical Review B誌への掲載および国際学会での口頭発表を行った。電界効果によって不純物(ボロン)ドープの場合に比べて高移動度の金属状態を形成できたことが、このシュブニコフ・ドハース振動の観測に結び付いた。本年度はさらに移動度の高い試料を作製するために、基盤技術の開発を行った。デバイス作製プロセスを工夫し、化学気相合成直後のみならずデバイス作製後もレジスト残渣のほとんどない清浄な表面を維持することに成功した。また、表面が平坦でかつ残留ボロン濃度の低いダイヤモンドを成膜するために、新たに化学気相合成装置の立ち上げを行った。残留ボロン濃度がこれまでに比べて十分低く原子レベルで平坦な表面を準備することに成功した。 シリコンカーバイド表面へのイオン液体を用いた電界効果によるキャリア蓄積の研究も進めた。4H-SiC表面にオーミック電極を形成し、電気二重層電界効果トランジスタを作製した。ただこれまでの実験ではゲート電圧印加によってほとんど電気伝導が変化しなかった。表面準位がキャリアをトラップしていると考えられ、その低減のために表面終端処理の改良を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度にセレンディピティ的な成果として、電界誘起キャリアによるダイヤモンドのシュブニコフ・ドハース振動の観測にはじめて成功した。これにより、量子ホール効果の発現などこれまで目を向けられてこなかったダイヤモンドの高移動度キャリアによる新規量子輸送現象発現の可能性が開かれた。本年度はより高移動度の試料作製を目指して、基盤的な技術開発を進めた。化学気相合成装置の立ち上げなど条件出しに時間のかかる作業が多かったが、おおむね順調に進展したと考える。 ダイヤモンドに電界効果によって10^13 cm^-2以上のキャリアを蓄積させた場合、ダイヤモンドの低い誘電率を反映して、表面から1 nm程度までの浅い領域にキャリアが閉じ込められる。このため電気的な特性は、レジスト残渣や吸着物など表面の汚れの影響を受けやすい。この状況は単一原子層のグラフェンの場合と似ている。グラフェンの場合には、高電流アニールなどの方法で表面を清浄化し電気的な特性を向上させる研究が行われている。われわれは、デバイス作製方法を工夫し、原子レベルで平坦で清浄な表面を化学気相合成直後とほとんど変わらずデバイス作製後も保持させることに成功した。新たに立ち上げた化学気相合成装置を使って、残留ボロン濃度がこれまでに比べて十分低く原子レベルで平坦な表面を準備することにも成功した。 また研究計画に従い、シリコンカーバイド表面へのイオン液体を用いた電界効果によるキャリア蓄積の研究も進めた。電界効果によるダイヤモンドへのn型キャリア蓄積を目指した実験も行ったが、未だ成功していない。これについては継続して研究を行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はより高移動度のダイヤモンド試料を作製するための基盤技術の開発に努めた。今後はこれを基に作製したダイヤモンド電気二重層電界効果トランジスタの特性を極低温まで注意深く測定し、超伝導や量子伝導現象の探索を行う。また、これまでに成功していない電界効果によるダイヤモンドへのn型キャリア蓄積を達成したい。このため現在、表面終端や電極を改良した試料の作製を行っている。 シリコンカーバイド電気二重層電界効果トランジスタについては、これまでに電圧印加によって伝導度の変化がほとんど見られなかった。本年度行った表面処理では高密度の表面準位が存在しキャリアがトラップされていると考えられる。表面準位密度を低減した試料を作製し、電界効果による伝導度制御を達成する。またダイヤモンド試料と同様に極低温まで詳しく伝導特性を測定する。
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