2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25288029
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 治 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (80270693)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 金属錯体 / スピン / 伝導性 |
Research Abstract |
光、温度等の外部刺激により電気伝導性を可逆的に制御できる分子性導電体の開発が注目されている。これまでに、スピン転移に伴う化学圧力効果により転移温度で伝導性の異常が観測されるスピンクロスオーバ伝導体の開発が報告されている。本研究では、カチオン性分子導電体と鉄3価のアニオン性スピン転移錯体を複合化させることで金属的伝導性と外場応答性を併せ持つ新規スピンクロスオーバ伝導体を開発することを目指した。NBu4[Fe(thpuMe)2]とBEDO-TTF(Bis(ethylenedioxy)tetrathiafulvalene)を溶解し電解することにより(BEDO-TTF)2.5[Fe(thpuMe)2]PhCl・MeOHの単結晶を得た。得られた結晶について結晶構造解析、磁化率測定、電気抵抗率測定、メスバウアー測定を行った。単結晶構造解析によりBEDO-TTFとアニオン性鉄(III)錯体[Fe(thpuMe)2]が分離積層型カラム構造をとっていることが分かった。BEDO-TTFはβ"型に積層し電気伝導層を形成していた。単位胞にBEDO-TTFが5分子存在し、BEDO-TTFの平均電荷は+0.4である。この化合物の抵抗率の温度依存性を測定したところ低温まで金属的な挙動を示した。また、磁化率は常磁性的挙動を示し、10 Kから室温までのχT値は約4.4cm3Kmol-1であった。このχT値は高スピン鉄(III)に期待される値にほぼ一致した。高スピン状態はメスバウアーの測定でも確かめられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光などの外部刺激により導電性などの物性制御が可能な機能性材料の開発が注目されている。外場により導電性の制御が可能な分子性材料の設計手法としてスピンクロスオーバー錯体と導電性分子を組み合わせる方法がある。しかし、これまで報告されてきたスピンクロスオーバー伝導体はいずれも半導体的挙動を示し、金属的伝導性を示すものは報告されていなかった。今回、我々はアニオン性のスピン転移錯体を作製することにより、カチオン性分子導電体であるBEDO-TTF(Bis(ethylenedioxy)tetrathiafulvalene)とスピン転移錯体を複合化した新物質の作成に成功し、得られた物質が金属的伝導性を示すことを明らかにすることができた。この物質を基盤にすることで、今後金属的伝導性とスイッチング特性を併せ持つスピンクロスオーバー伝導体の開発が期待できる。従って、一年目としてはおおむね順調と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
BEDO-TTFとFe(III)錯体を複合化した新物質の作成に成功したが、Fe(III)錯体はスピン転移を示さなかった。従って、Fe(III)錯体を修飾した物質を開発しBEDO-TTFと複合化することによりスピン転移と金属伝導性がシナジー効果を示す新規外場応答性スピンクロスオーバー伝導体を開発することを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
液体ヘリウムの供給不足で一部予定通りに測定が進まず次年度使用額が生じた。 測定装置を低温センターに移すことにより問題は解決したので今年度中に研究・研究費の使用が当初の計画通りに戻る予定である。
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Research Products
(2 results)