2014 Fiscal Year Annual Research Report
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25288029
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 治 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (80270693)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 金属錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
新規ダイナミック金属錯体クラスターを開発することを目指し、コバルト10核錯体[CoII10(bzp)8(Metz)2(N3)18]4MeOH3H2O(錯体1)を開発した。錯体1 の単結晶構造を110 Kで測定したところ、Co(II)イオンがアジド基によってend-on (EO)で架橋されていることがわかった。また、磁気特性の測定の結果、300 KでのχmT 値は約33.7 cm3 mol-1 Kであり、スピンオンリー値 (18.75 cm3 mol-1 K)より大きな値を取ることが分かった。これは、軌道角運動量の寄与のためである。室温から温度を下げていくと、χmT 値は徐々に増加し、7 Kで最大値119 cm3 mol-1 Kを示した。このことはCo(II)イオン間に強磁性的な相互作用が働いていることを示している。低温相での単分子磁石挙動を調べるために交流磁化率の測定を行った。測定の結果、交流磁化率が周波数依存性を示すことを見出した。このことは、この分子が単分子磁石的な特性を有していることを示している。エネルギー障壁を見積もるために1.80 K-2.10 Kの温度範囲で周波数依存の交流磁化率を測定した。交流磁化率の虚部から見積もった緩和時間 (τ) はアレニウスの法則{τ = τ0 exp(Ueff/kBT)} に従い、エネルギー障壁 (Ueff/kB) は10.3 Kであった。これらの値は典型的なCo(II)単分子磁石の値に一致していた。さらに、昨年に引き続き伝導性スピンクロスオーバー錯体の開発を試みた。特にスピンクロスオーバー錯体とTTF分子との複合化を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
強磁性相互作用を有し、遅い磁気緩和を示す新規コバルト10核錯体を開発することに成功した。この研究を基に、電子移動やスピン転移を示す多核錯体の開発が可能になるものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ダイナミック特性を有する多核金属錯体クラスターの開発を行う。また、金属的伝導性を有する伝導性スピンクロスオーバー錯体の開発を試みる。
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Causes of Carryover |
新物質合成の初期過程において、研究目的の達成のための十分な特性が表れないことが判明した。このため、合成条件を再検討する必要が生じた。新規な配位子の設計、合成、及び錯体合成に時間を要した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新規な配位子の設計、合成、及び錯体合成の再検討で遅れが生じたが、次年度の6カ月で後れを回復できる目途が立っている。従って、9月までに繰り越し分を執行する。
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