2013 Fiscal Year Annual Research Report
金ナノ粒子をプローブとして用いるImaging-mass分析システムの構築
Project/Area Number |
25288066
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
新留 康郎 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (50264081)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ナノ材料 / ナノバイオ |
Research Abstract |
組織切片からの金クラスターの脱出限界を明らかにするためにの、基板に金ナノロッドを固定し、基板上に置いた組織切片の厚みと、レーザー強度を変えて脱離イオンの検出効率を評価した。その上に樹脂包埋した組織切片(厚さ10 micron)を置いた場合でも金クラスターを検出できることが確認した。このデータはその後の組織切片を作製する際に、その厚さや後処理方法を決定する際の重要な情報になった。 金ナノロッドを血中投与し、各臓器の組織切片から金クラスターが検出できるかどうかを調べた。さらに金の分布のmass-imagingを行い、組織レベルで金ナノ粒子の分布を明らかにした。ICP-MSを併用して、金ナノ粒子のin vivo用プローブ粒子としての適性を検討した。一連の研究結果は金ナノロッドが血中から肝臓に移行し蓄積するという従来の知見に一致する結果を示した。また、腎臓や肺などICP-MSで金が観察されない臓器からは金のシグナルは観察されなかった。 さらに、腫瘍への金ナノロッドのターゲティングについてmass-imagingを用いた評価を行った。金ナノ粒子表面をPEG鎖で修飾し、担癌マウスに静脈投与し、腫瘍組織内でどのように分布するかをmass-imagingによって明らかにした。一連の結果は金ナノロッドが腫瘍部位にゆっくりと蓄積する様子を示し、従来のICP-MSの知見と一致した。 一連の結果は、mass-imaging法による金ナノ粒子のマッピングが可能であることを明確に示した。現在学術論文として投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来のICP-MSなどによる金ナノ粒子の体内動態と整合する結果が得られた。担癌マウスの実験も予定通り実施し、その結果も大変合理的なものであった。申請時の計画のほとんどを実施し、実現することができた。ただし、組織の免疫染色の結果と金の分布との相関は必ずしも明確ではなかった。また、研究代表者の所属研究機関の移動もあり、金ナノロッドへの抗体の固定については十分な予備実験を行うマンパワーの余裕が無かった。以上のことより、本研究は概ね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、抗体修飾金ナノ粒子を用いて組織切片を染色し、その分布をImaging-massによって明らかにする研究を最優先に実施する。免疫染色のノウハウは良く学習し、熟練者にそのノウハウを学びたい。さらに、組織切片中からの高効率な金クラスターの脱離イオン化を実現するために、金ナノ粒子のサイズ・形状・凝集状態を最適化する。 また、マウスを用いた実験の再現性を確認することも必要な課題の一つである。昨年度と全く同じ実験に加えて、各種表面修飾と体内分布を正確に明らかにする。動物実験のエキスパートである熊本大学新留琢郎教授を研究分担者に迎えて、効率的な実験計画を立案し、迅速に研究を推進する。 合金化あるいはサイズを変えることにより同時に複数のタンパク質を識別する「多色化」が当初計画に挙げられているが、これまでの成果を踏まえて、凝集状態を制御することにより、金クラスターイオンを選択的に脱離イオン化させることの可能性を検討する。金だけを用いた多色化に成功すれば学術的にも応用的にも大きなイパクトを、この研究フィールドに与えることができるであろう。 本年度は学生2名を本研究に充当し、積極的に研究を推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者の所属研究機関移動に伴い、研究に必要な計測機器・物品に大幅な見直しが必要であった。移籍先の実験室環境と共有機器の実情が良くわからなかったため、26年度以降の研究推進に必要な機器や薬品・物品の購入に充てるために25年度の支出を抑制したことが次年度使用額が生じた理由である。 当座の高額機器の手配は必要ないことがわかったので、研究費は実験環境の整備と研究に必要な抗体などの購入に充当する。一般試薬やガラス器具など汎用の機器を一通り調達する必要がある。さらに、抗体は高価ではあるが、実験条件の最適化に必要な十分な量の抗体を購入する。
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