2014 Fiscal Year Annual Research Report
抗体の分子認識能を活用した新規協奏機能超分子触媒の創製
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25288082
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山口 浩靖 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00314352)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 明 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80127282)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | モノクローナル抗体 / 光学異性体 / キラル / ビナフトール / 遷移金属錯体 / シクロデキストリン / 触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に作製したビナフトール誘導体に対するモノクローナル抗体のキャラクタりぜーションを行った。特に得られた抗体の光学異性体識別能を定量化した。ビナフトール誘導体の2種類の光学異性体を免疫して得られたモノクローナル抗体の各光学異性体に対する結合能を、それぞれ酵素標識抗体測定法における競争反応により評価した。ビナフトール誘導体のR体免疫により得たモノクローナル抗体はS体よりも810倍R体に強く結合することがわかった。ラセミ体免疫により得たモノクローナル抗体の一種は14000倍S体に強く結合した。 また、遷移金属錯体を特異的に取り込む抗体作製では、昨年度パラジウム錯体を抗原決定基として抗体作製を行ったが、パラジウム錯体に対する免疫応答は得られなかった。そこで、新たな配位子を結合させたパラジウム錯体を合成し、これに対するモノクローナル抗体の作製を試みた。また、新たに配位子を変更してロジウム錯体に結合する新規モノクローナル抗体の作製に成功した。抗体と有機金属錯体との複合体存在下、2種類の基質を添加し、水中で炭素-炭素結合形成反応を行った。反応生成物を各種分光法により解析した結果、抗体無しではラセミ体が定量的に得られるが、抗体存在下では全くこのような反応が見られなくなるという、予想外の結果を得た。現在、複数種の抗体と遷移金属錯体との組み合わせで、様々な触媒反応の検討を継続している。 当初平成27年度実施予定だったホスト分子修飾抗体の合成を本年度から開始した。シクロデキストリンを化学修飾したモノクローナル抗体のビナフトール誘導体に対する結合力を測定した。シクロデキストリン修飾による抗原結合阻害は見られなかったことから、修飾抗体においても元の抗体の結合特性が保存されていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ビナフトール誘導体に対するモノクローナル抗体のキャラクタりぜーションにおいては、2種類の光学異性体を識別し、異なる異性体に異なる解離定数をもって結合するモノクローナル抗体が得られたことから、期待通りの進展があった。 一方、抗体と有機金属錯体の複合体存在下での炭素-炭素結合形成反応では予想外の結果が得られており、さらにその反応メカニズムを解析する必要が生じた。 並行してホスト分子修飾抗体の合成も進めることができており、おおよそ遅延無く実験が進んでいる。ただし、次年度には本抗体と遷移金属錯体からなる複合体の機能を最大限引き出せるように、様々な触媒反応についてのデータを蓄積することが重要である。
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Strategy for Future Research Activity |
環空孔サイズの異なるα-,β-,γ-シクロデキストリンをそれぞれ導入した抗体を用意し、空孔サイズの違いにより抗体近傍に濃縮される基質に選択性が見られるか否かを観察する。またこれらのホスト分子修飾抗体を相間移動触媒として利用する。 さらに、抗体と遷移金属錯体をそれぞれ高分子ヒドロゲルに固定し、ゲルを集積させるとともに新たな触媒システムを構築する。ここでは抗体と有機金属錯体がソフトマテリアルの接着因子として働くシステムを合成する。2種ゲルが接着することによってはじめて触媒機能が発現するようなマクロスケールの不均一触媒システム構築を目指す。
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Causes of Carryover |
平成26年度までに作製した複数種のモノクローナル抗体と遷移金属錯体を組み合わせて、最終年度となる平成27年度に様々な触媒反応を検討するために、複数の反応基質を用意し、さらに反応生成物の解析にはキラルカラムを購入する必要がある。実際に様々な触媒反応条件を検討しながら、最善の分離手段を講じることで、本システムにおける抗体と遷移金属錯体との複合体の触媒機能を評価するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
モノクローナル抗体と遷移金属錯体の複合体を十分量調製するために、モノクローナル抗体の量産、遷移金属錯体の再合成を行う。これらの実験に必要な試薬(細胞培養試薬、実験動物、有機合成試薬など)を購入する。触媒反応では様々な基質を使用して抗体ならではの基質特異性が発現されるか否かを検討するため、反応試薬をはじめ、合成に必要な実験器具等の消耗品を購入する。また反応生成物のエナンチオ過剰率を決定するために必要なキラルカラムを購入し、その分析に関わる溶媒、試薬を購入する。得られた成果を広く公開するために英文校正・原稿投稿を行い、オープンアクセスが可能な論文とするための支出を予定している。
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