2014 Fiscal Year Annual Research Report
バイオフィードバックによる歩行障害者のリハビリテーション効率の向上
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25289053
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
辻内 伸好 同志社大学, 理工学部, 教授 (60257798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 喜雄 高知工科大学, 工学部, 教授 (50299369)
伊藤 彰人 同志社大学, 理工学部, 准教授 (60516946)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 運動制御 / トレッドミル / バイオフィードバック |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 大腿義足装着者のウェアラブルな運動解析技術の開発:本年度は,一般的な日常生活動作を反映した制約のない長時間連続した歩行計測が可能であるウェアラブルな計測装置とトレッドミルを組み合わせ,複数のベルト速度において健常者および大腿義足装着者を被験者とする歩行計測実験を行った.得られた床反力データの挙動からヒトの一歩行周期を4フェーズに分け,歩行時の下肢関節回転運動に関して関節角度に加えて新たに関節モーメントを用いて特異値分解を行い,関節間協調動作の中でも相関が高い動作パターンを抽出した. 健常者と大腿義足装着者の歩行において各関節角度に関しては同様の傾向が見られた.一方,関節モーメントに関しては特に足関節・膝関節において大きな違いが見られ,大腿義足装着者では不安定な義足側のバランスや推進力を補った影響が健足側に出ており健常者とは異なる傾向を示した. (2) 3次元トレッドミル歩行分析システム(バイオフィードバック提示装置)の開発:開発した高速トレッドミルを用い,非陸上選手・陸上選手の両足にベルト速度による負荷を課す走行計測実験を実施した. 最適ステップ数に比べて,ステップ数を増加・減少させると,床反力のピーク値は増加した.ステップ数を変化させると,下肢へ負担が加わると考えられる.非陸上選手と陸上選手の股関節の屈曲モーメント,膝関節の屈曲モーメントおよび足関節の底屈モーメントのピーク値を比較したところ,7km/hにおける足関節の底屈モーメントに有意差が認められた.次に,股関節移動量に着目すると,非陸上選手は,ばらつきが大きいことが分かる.そこで,各関節の周期毎の振幅と10秒間の振幅の分散に検定を行ったところ,各関節の時間的変動が異なることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大腿義足装着者に対して,前年度開発した左右分離型3次元トレッドミルを利用して,下肢に生じる関節角度,関節モーメント,床反力,足底圧中心点の軌跡における一歩行周期でのピーク値と発生時間,荷重の積分値,各関節の仕事率である関節パワーを積分した消費エネルギを求め,定量的な歩行評価指標についてさらにデータを蓄積した.歩行の制御メカニズムを具体的に解明する上で重要となる各関節間の協調動作における時空間パターンを調べるため,これまでに計測した生体医工学的・運動学的物理量の時系列データを立脚期,遊脚期,両脚支持期などに分類して一つの行列にまとめ特異値分解を実施した.得られた特異値あるいは固有値を関節間の寄与度とみなし,各被験者・各歩行条件に関して整理することによって,無拘束状態におけるヒトの各身体部位で最も相関が高い動作パターンを抽出し評価した. また,開発したトレッドミルの仮想現実感を適用した陸上選手の走行負荷実験を実施し,映像による負荷指示の可能性を検証した. 以上,本年度の計画通り実施された.
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Strategy for Future Research Activity |
提案手法に基づく歩行評価指標の有用性を確認するため,昨年開発した3次元トレッドミル歩行解析システムを計測装置として使用し,健常者および大腿義足装着者を被験者とする片足もしくは両足にベルト速度,歩行負荷を課す歩行計測実験をおこない,これまでの歩行解析システムも併用した場合の各出力を相互比較するとともに,定義した評価指標値を算出する. また,歩行分析データの内,大腿義足装着者の歩行の特徴である左右非対称性を表現可能な,健側と患側の立脚期時間長さの相違,および健側・患側の3次元トレッドミルの各床反力計からの出力ベクトルなどをリアルタイムで患者に提示するシステムを構築し,視覚的なバイオフィードバックに有効な特徴量を求める.それらの特徴量が提示された際の視覚的なバイオフィードバックが歩行に与える影響を評価するために歩行実験を実施し,歩行の対称化に対する特徴量の有用性を検証する. これらを歩行障害者に用いる客観的指標を持つ歩行訓練技術の開発として最終的にまとめ,実際的な歩行訓練に適用する.
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Causes of Carryover |
次年度のシステム開発費用が増える可能性があり,それらの費用に充当するため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の成果に基づき,被験者により臨場感を与えるとともに,介護者に提示する情報と被験者に提示する情報を分離するため,ヘッドマウントディスプレイの導入を検討している.これは最初の計画外出費である. 従って,本費用はヘッドマウントディスプレイ(HMD)の購入と,既に構築しているバーチャルリアリティソフトウェアとHMDのインターフェイスをとるための改造費に充当する.
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