2013 Fiscal Year Annual Research Report
多元的触情報の時間相関性に着目した超触覚センシングデバイス
Project/Area Number |
25289104
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
高尾 英邦 香川大学, 工学部, 准教授 (40314091)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | センシングデバイス / 触覚センサ / 集積化センサ / 知能化センサ / 人工皮膚 |
Research Abstract |
1.「原触」のクロストークを抑えるセンシング要素の開発 本年度は最初に,触覚センサを構成する基本的な情報の要素となる「原触」となりうる物理情報のセンシング機構を実現し,人間の指先が感じ取れる感度限界を超える高性能の触覚センサ要素の開発を行った。各情報の時間相関性を高い精度で取得するために,それぞれを広帯域で検出可能なセンシング要素の実現を目指して設計を行った。信号間の精度を保証する上でも,センシング要素で信号のクロストークが生じない構造での実現が必要であり,誤差の程度を有限要素解析によって見積もりながら素子の寸法と形状を決定した。製作実験の結果,柔軟に変形するシリコンダイヤフラム上に,クロストークの小さい多次元力覚センシング回路を集積することに成功した。また,センシング回路上部に入力用プローブとなる微細構造体を一体化し,垂直抗力に加えて横剪断力と動的な滑りが生じた際の滑り振動を時間軸波形で取得した。超触覚センシングの実現に向けて,本段階では感度と周波数特性を改善した各種センシング要素を新規に開発することができた。 2.新構造画素によるセンサ画素の小型化と高感度化の両立 高い密度で各要素を集積化して空間解像度を向上するため,本研究では,全ての原触センシング要素を指先における触覚受容細胞の半分程度の間隔,すなわち500ミクロン程度の集積化画素構造に一体化することを目指して研究を進めてきた。センサ画素の小型化と高感度化を両立する新しい触覚要素の開発を進めた結果,入力プローブの周囲に形成された検出用画素回路を取り囲むように「土手」のような微細構造を設けることで,わずかな入力を高感度に検知できる高感度センサの開発を行うことができた。この新しい画素構造で,画素回路の小型化と高感度化の両立が可能となった。今後はこの構造をアレイ回路内に組み込む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね初年度の計画通りに研究が進展しており,良好な特性を示す触覚センサの開発を行うことができた。この計画どおりに研究を推進することで,多元的触情報の時間相関性に着目した超触覚センシングデバイス実現が計画通りに達成されると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降,以下の項目について研究を進めてゆく。 1.二次元超触覚センシングデバイスの実現と改良:多元的触覚検知要素を1画素内にアレイとして集積化実現する。その画素を集積回路内に二次元面状に並べ,全体を薄膜化するマイクロマシニングを実施することにより,高い空間解像度と高感度の原触センシング機能を備えた超触覚センシングデバイスを実現する。現時点で画素サイズが1mmを超えているが,前年度の計画2における検出要素の高感度化により,このサイズを500ミクロン以下にできると考えられる。その評価を進める一方で,各種の「原触」検知要素の超触覚化も進めてゆき,それらが完成した時点で適宜チップ構成を変更した高性能デバイスの製作を行なう。 2.多元触覚の時間相関性に基づく触感評価のモデル化と触感評価モデル装置の製作:実現する超触覚センサを用いて,多元的な「原触」情報間の時間相関性を中心に評価を進め,人間の触感覚生成アルゴリズムの推定とモデル化を進めてゆく。触感に関する数値化と分類のマッピングについては,様々な手法が存在する。ここでは従来の一般的な触感評価手法(KES)との比較対比を行いながら,その評価ノウハウを有する企業の研究員と協力して触感の定量化手法を模索してゆく。熟練者の生理試験に基づく感性評価の結果とも比較しながら,人間が心地よさを感じる触感を見分けられる評価システムの構築を第一に実現する。その後,様々な物質のさわり心地を判別できるように評価アルゴリズムを拡張する。 3.触覚の感性基準を必要とする新応用分野での検証と評価:指先に代わる鋭い触覚デバイスが必要な応用として,衣類,日用品の開発から,肌年齢の評価,先端医療・治療器具に至るまで様々な応用分野を想定しながら,開発する超触覚デバイスとその評価モデル装置についての実証実験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
デバイスの評価上,実験に必要な機器がモデル変更されており,性能上・コスト上も最も優れた機器を導入するには評価を行うタイミングに合わせて機器を購入することが必要である。次年度にデバイスを評価する時期が明確であることから今年度の機器導入を見送った。 次年度の導入機器として,様々な触情報を同時に評価できる多チャンネルのAD変換入力をもつデジタルレコーダーを導入する計画である。
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