2015 Fiscal Year Annual Research Report
3次元計測技術を応用した土砂災害発生の予兆検知と警戒情報の取得
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25289123
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
橋本 岳 静岡大学, 工学部, 准教授 (60228418)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土屋 智 静岡大学, 農学部, 教授 (60197720)
竹林 洋一 静岡大学, 情報学部, 教授 (10345803)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 3次元計測 / 防災 / 画像計測 / 土砂災害 / 情報ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,カメラを用いて遠距離にあるターゲットの動きを高精度に計測できるという独自技術に基づいている。特にこの計測技術が他の計測技術に比べて有効な計測環境である屋外・遠距離の擁壁ブロック・岩・樹木等の微小な動きの計測システムを試作し,その計測結果から土砂災害発生の予兆を検知,警戒情報を取得するシステムの開発を研究目的とする。この目的達成のため,計測システムの理論的研究から計測システムの試作に関して研究を行った。 第3年度は,高速道路の切土法面の動きを実用的に計測するための改良型計測装置を製作し,計測精度を確認した後,現場に設置して計測を開始した。改良型計測装置は,カメラ基線長約1mと小型でありながら計測距離約100mで最大誤差10mm以下という他に類の無い画期的な計測装置である(この精度はGPSと同程度であり,トレンド解析によりミリ単位で計測できる)。その他,地震時建物内の人間頭部の揺れの解析を行い,震度7相当の揺れでは視覚に基づく判断が困難であることを明らかにした。また,災害前後の復興のための文化財の簡易計測法の提案と実際の計測を行った。さらに,土砂災害発生の危険区域への予備調査を行った。期間中に以下の各課題について研究を進めた。 課題1 計測システムの開発:切土法面を実用的に計測可能である小型で実用的な改良型計測装置を製作した。 課題2 計測対象の抜き出し(対応点探索):計測対象に適した対応点探索方法の研究を行い,人工マーカーを使用する場合の高精度化処理の研究を進めた結果,カメラ基線長約1mにて計測距離約100mで最大誤差10mm以下を実現できた。 課題3 計測の開始・計測結果の公開:改良型計測装置を高速道路の切土法面に設置して,計測を開始した。計測結果の学会発表を行い,NHKにて紹介された。 本計測技術は,当初の予想以上に様々な応用があるため今後も鋭意取り組んでいく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
・計画にある課題1~課題3をほぼ達成できた。 ・実用的かつ目標とする高精度計測を実現するために,アルゴリズムの改良を行い,改良型計測装置を製作してその精度を確認できた。 ・高速道路の切土法面の動きを計測するために,改良型計測装置を現場に設置して計測を開始した。 ・本計測方法が当初の予想以上に様々な分野に有効であることが明確になり研究を進めることができた。具体的には,起震車を使って地震時の建物内にいる人の頭部の揺れの解析を行い,震度7相当の揺れでは人間の認知能力を超える可能性があり,視覚に基づく判断が困難であることを明確にした。また,災害前後の復興のための文化財の簡易計測法の提案と実際の計測を行った。さらに,土砂災害発生の危険区域への予備調査を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
第3年度に,改良型試作機を製作・計測を開始したところ,切土法面の動きについて新たな知見を得られる可能性が高いことがわかり,研究を継続することに大きな意味がある。そこで本年度は,観測の実施,および,計測システムの改良を継続して,危険予兆検知システムを完成させる。さらに,本計測システムの応用展開についても鋭意取り組みを続ける。また,最終年度として研究期間内に得られた計測システム・計測結果を基にして,土砂災害発生の予兆を検知・警戒情報を取得するシステム開発に関する研究成果を取りまとめ,成果の発表を行う。期間中には以下の各課題について研究を進める。 課題1 計測システムの開発:現地計測で明確になった課題等を解決するため,基礎技術から研究を進展させて,計測装置の改良を行う計画である。応用例として,高速道路の切土法面の計測を想定し,法面の動きを確実に連続計測可能な計測システムを開発する。 課題2 計測対象の抜き出し(対応点探索):対応点探索方法の研究をさらに進展させる。人工マーカーおよび自然マーカー(その場にあるものをターゲットとする)を活用して,計測範囲の拡大を図る。 課題3 計測の継続,計測結果の公開:改良試作機を計測現場に設置して計測を継続する。計測対象として,高速道路の切土法面の計測についてNEXCO中日本の同意を得ている。計測結果の公開に関して,学会発表等を積極的に行う計画である。 また,静岡県等のヒアリング結果を受けて,計測可能な防災関連対象から順に対応していく予定である。さらに,研究過程において本計測方法が当初の予想以上に様々な応用があることが分かってきたため,それらのテーマについても鋭意取り組んでいく。
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Causes of Carryover |
当初予想以上に,実用的な計測装置を製作できており,かつ重点的に計測すべき計測対象が見つかったため,研究を継続することが重要であると考えられることから,補助事業の目的をより精緻に達成するための研究の実施(追加実験の実施や学会参加,論文投稿など)するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
防災研究遂行のために自然環境の計測を次年度も続行し研究発表する計画である。具体的には,土砂災害の予兆検知を目的とした高速道路の切土法面の微小変動計測を継続する。このために,計測に必要な計測機器を次年度に購入,計測と研究発表の旅費,および論文投稿費が必要である。なお,計測機器購入においては,本年度から調査・交渉しており,要求使用を満たす可能性のある新製品が次年度に発売されるという情報が得られている。
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Remarks |
研究内容が2015年10月27日にNHKにて,『リポート:未来を作る研究室「土砂災害の前兆を捉えろ」』というタイトルで放送された。
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Research Products
(5 results)